カレイ目

カレイ目（Pleuronectiformes）

硬骨魚類に属するカレイ目は、世界中の海に広く分布する約678種を含む大きな分類群です。カレイやヒラメ、ウシノシタ（舌びらめ）といった、海底付近で生活する底生性の魚類が中心で、食用として非常に重要な種類が多数含まれています。このグループの最大の特徴は、その極めて平たい体と、体の片側に二つとも集まっている両方の目です。

分布と生態

カレイ目の魚類は、ごく一部の淡水域に生息する種を除いて、ほとんどが海水魚です。沿岸の浅い海から水深数千メートルの深海まで、幅広い環境に適応しています。これらの魚は海底に張り付くように暮らし、活発に泳ぎ回ることはあまりありません。普段は、目がついている側（有眼側）を上にして海底に横たわっており、移動する際も有眼側を上にして泳ぎます。多くの場合、目は大きく突き出ており、体を砂の中に隠しても周囲の様子をうかがうことができます。

卵は水面に浮かぶタイプで、沖合の表層で孵化します。生まれたばかりの仔魚は、他の一般的な魚のように体が左右対称で、頭の両側に目が一つずつあります。しかし、成長するにつれて体は平たくなり、片方の目が頭のてっぺんを通って反対側へと移動するという、驚くべき変態を遂げます。この変態が終わると、海底での生活に適した姿となり、多くは仔魚期を過ごした沖合から沿岸へと移動して着底します。

形態の特徴

カレイ目の成魚の最も顕著な特徴は、その左右非対称性です。通常は頭部の左右にある目が、片方の側に二つとも並んでいます。このため、体を横から見ると、目が二つある側（有眼側）と目がない側（無眼側）に分かれています。有眼側は生息環境に合わせた保護色として様々な色をしていますが、無眼側は白っぽいのが一般的です。体の形は円形から楕円形をしており、著しく左右に平たい（側扁した）体型です。左右非対称なのは眼の位置や体色だけでなく、内臓の配置も無眼側に偏っています。背びれと臀びれは非常に長く、体のほぼ全身を縁取るように発達しています。多くの成魚は浮き袋（鰾）を持ちません。

ヒラメとカレイの見分け方

「左ヒラメに右カレイ」という言葉があるように、ヒラメとカレイを見分ける際によく使われるのが、目の位置です。一般的に、カレイは体の右側に目が集まる「右側眼」、ヒラメは左側に目が集まる「左側眼」とされています。つまり、魚を腹を手前にして置いたとき、目が頭の右側にあればカレイ、左側にあればヒラメということになります。ただし、この法則には例外も多く存在します。例えば、カレイの仲間のヌマガレイでは左側眼の個体が多数派を占める地域があり、カレイ目に近いボウズガレイでは右側眼と左側眼がほぼ同数現れます。また、食性とそれに伴う口の形状も重要な識別のポイントです。カレイ類は砂の中の小さな無脊椎動物などを食べるため、口が小さい種が多いのに対し、ヒラメは小魚やエビなどを捕食するため、口が大きく鋭い歯を持つ種がほとんどです。

カレイ目の分類

カレイ目は大きくボウズガレイ亜目とカレイ亜目の2亜目に分けられ、さらに14科134属約678種が含まれます。日本でよく知られるカレイ類やヒラメ類の多くは、カレイ亜目のカレイ科やヒラメ科に属します。

ボウズガレイ亜目は、1科1属3種のみからなる小さなグループです。他のカレイ目の魚類に比べて原始的な特徴を持ち、背びれや臀びれに棘条（硬いトゲ）があり、目の位置も種類によって左右どちらか一定していません。

カレイ亜目は、13科133属約675種を含む大部分のグループです。背びれと臀びれは棘条を持たず軟条のみで構成され、背びれの付け根は目の位置にまで達しています。この亜目には、かつて独立した亜目とされていたウシノシタ類も含まれています。

カレイ亜目はさらに、いくつかのグループに分けられます。コケビラメ上科は腹びれに棘条が残る比較的原始的な一群です。ウシノシタ上科にはアキルス科やササウシノシタ科、ウシノシタ科などが含まれ、体の形や腹びれの特徴などで細分されます。カレイ上科は、スコプタルムス科、ヒラメ科、ダルマガレイ科、カレイ科といった、食用魚として特に重要なグループが多く含まれる最大の上科です。ヒラメ科は左側眼、カレイ科は原則的に右側眼ですが、それぞれの科の中でも例外が存在し、多様な進化を遂げています。

カレイ目の魚類は、そのユニークな形態と生態から、生物学的に非常に興味深いグループであり、同時に世界中で重要な水産資源として人々の食生活を支えています。

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