カレロ＝フィン・ソビエト社会主義共和国

（Karjalais-suomalainen sosialistinen neuvostotasavalta、Карело-Финская Советская Социалистическая Республика）

カレロ＝フィン・ソビエト社会主義共和国（略称：カレロ＝フィン共和国）は、第二次世界大戦中の1940年 3月31日から1956年 7月16日までの短い期間、ソビエト社会主義共和国連邦を構成する共和国の一つとして存在しました。その歴史は、ソビエト連邦によるフィンランドへの影響力拡大政策と、二度にわたるソビエト・フィンランド間の戦争と深く結びついています。

成立の背景と経緯

この共和国は、1940年にソ連が設置していたカレリア自治ソビエト社会主義共和国と、冬戦争（1939年 11月30日～1940年3月13日）の終結に伴うモスクワ講和条約（1940年 3月12日締結）の結果として誕生したフィンランド民主共和国が統合される形で成立しました。フィンランド民主共和国は、冬戦争中にソ連がフィンランドから獲得した国境地帯、具体的にはカレリア地峡やラドガ・カレリア、そしてヴィープリやソルタヴァラといった主要都市を含む地域に、ソ連主導で樹立された傀儡政権でした。

ソ連によるこの地域への編入は、大規模な住民の移動を引き起こしました。故郷がソ連領となることを望まなかった多くのフィンランド系住民、その数は約42万2千人に上るとされますが、彼らはフィンランド本土へと避難しました（カレリア・フィンランド人避難）。彼らが去った後、この地域にはソ連各地から新たな住民が移り住むこととなりました。カレロ＝フィン・ソビエト社会主義共和国は、ソビエト連邦における12番目の構成共和国として位置づけられました。

戦争と領土の変動

共和国成立後まもなく、フィンランドとソ連は再び戦火を交えることとなります。「継続戦争」（第二次ソ・フィン戦争、1941年～1944年）として知られるこの紛争では、フィンランド軍が一時的にソ連に奪われた領土を奪還しました。しかし、1944年にソ連軍が反攻に転じると、再びカレリア地方はソ連の支配下に置かれました。戦争終結後、モスクワ休戦協定（1944年）やパリ平和条約（1947年）によって、フィンランドは再びこの地域をソ連に割譲することが確定しました。これにより、再び多くのフィンランド系住民が故郷を離れざるを得なくなりました。

領土の管理という観点では、特に軍事上の重要性が高かったカレリア地峡（旧ヴィープリ、現在のヴィボルグを含む）は、カレロ＝フィン共和国の管轄から外され、レニングラード州（現在のレニングラード州）へと編入されました。一方、ラドガ・カレリアなどその他の地域は、引き続きカレロ＝フィン共和国の一部として残されました。

その後の変遷と共和国の終焉

カレロ＝フィン・ソビエト社会主義共和国は、わずか16年という短い歴史に幕を閉じました。1956年 7月16日、この共和国はソビエト連邦を構成するロシア・ソビエト連邦社会主義共和国に統合され、その下位区分であるカレリア自治ソビエト社会主義共和国へと再編されました。これは、実質的には構成共和国から自治共和国への「降格」を意味しました。

ソビエト連邦の崩壊が近づく中の1991年 11月13日、カレリア自治ソビエト社会主義共和国はロシア連邦内の共和国となり、「カレリア共和国」と改称され、現在に至っています。

政治体制と指導者

ソビエト連邦の構成共和国として、カレロ＝フィン共和国の国家元首は最高会議幹部会議長が務めました。共和国の存在期間中、この要職を一貫して担ったのは、フィンランド出身の著名な共産主義者であり理論家としても知られるオットー・クーシネンでした。また、1940年代の共和国共産党組織は、ゲンナジー・クプリヤノフが第一書記として指導にあたりました。共和国は、フィンランド語とロシア語を公用語とし、独自の国歌を持っていました。

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