カレン民族同盟/カレン民族解放軍平和評議会

カレン民族同盟/カレン民族解放軍平和評議会（英語: KNU/KNLA Peace Council、略称: KPC）は、ミャンマー連邦共和国に存在するカレン族系の武装組織です。これは、より広く知られているカレン民族同盟（KNU）およびその軍事部門であるカレン民族解放軍（KNLA）から分離して設立された、独自の組織としての立場を取っています。

設立の背景と歴史

KPCの設立は、2007年1月に遡ります。当時、カレン民族解放軍（KNLA）の第7旅団長を務めていたティマウン准将が、組織本体とは異なる独自の和平交渉を行ったことが契機となりました。この行動の結果、ティマウン准将はカレン民族同盟（KNU）から追放されるに至ります。追放された翌日の2007年1月31日、ティマウン准将は彼に従う約80名の部下と共に、トココー村において新たにカレン民族同盟/カレン民族解放軍平和評議会（KPC）を結成しました。これにより、KPCはKNUやKNLAとは一線を画す独立した武装勢力として歩み始めることになります。

設立後、KPCはミャンマーの軍事政権との関係において、複数の重要な局面を経験しました。特に2009年以降、軍事政権はKPCに対し、国境警備隊（BGF）へと組織を改編することを要求しましたが、KPCはこの要求を受け入れず、独立性を維持しました。

ミャンマーにおける和平プロセスにおいては、KPCもその一部を担ってきました。2012年には州レベルでの停戦合意に署名し、さらに2015年には、政府と多くの主要な武装勢力との間で結ばれた全国停戦合意（NCA）にも署名しました。

組織内部および他勢力との関係では、複雑な動きも見られました。2014年10月には、KPCを含む複数のカレン系武装組織（KNLA、KNDO、DKBA）による「コートレイ武装隊」結成の構想が浮上しましたが、KPCはこの計画に署名したとされる関係者を組織から追放するなど、独自の路線を崩しませんでした。

KPCの指導体制は、設立以来変遷を遂げています。創設者であるティマウン准将は2020年に死去しました。その後、かつてのKNU議長ボー・ミャの次男であるネソミャが指導者の地位に就きましたが、彼は2021年8月にCOVID-19により死去しました。現在の組織運営は、ティマウン准将の娘であるノーカパトゥーが書記として担っているとされています。

最近の動向としては、2023年1月にミャンマー軍事政権が撤退したタイ国境近くの町、パヤトンズーの統治に、KPCが他の武装勢力（KNU、BGF、DKBA、NMSPなど）と共に協力してあたっていることが報告されています。

組織構成

KPCの軍事組織は、設立当初と現在で規模が異なります。結成当初は、第701大隊から第709大隊まで（ただし第702大隊は欠番）の計8個大隊で構成されていました。しかし、現在のKPCは主に第707大隊と第708大隊の2個大隊によって組織されているとされています。

対外関係

和平プロセスへの関与として、KPCは全国停戦合意に署名した武装勢力の一員として、2016年3月に設立された和平プロセス主導チーム（Peace Process Steering Team: PPST）に参加しました。しかし、2021年のクーデター発生後、カレン民族同盟やチン民族戦線など、クーデターに反対する一部の勢力がPPSTから離脱したことで、PPSTは効果的な活動が困難な状況に陥りました。

2024年3月には、PPSTを継承する動きとして、シャン州軍 (南) のヨートスック議長が主導する新たな7EAO同盟が結成されました。KPCはこの7EAO同盟に加盟しており、引き続きミャンマーの和平プロセスにおける特定の枠組みに関与しています。

経済活動

KPCは、その活動領域において多様な経済活動を展開しています。社会インフラの整備に積極的に関わっており、学校や診療所の建設・運営、橋梁や道路といった交通網の建設・改修などを行っています。また、主要都市間を結ぶ物資輸送やバス運行事業も手がけており、具体的にはミャワディ、パアン、タウングーを結ぶルートで活動しています。

これらの他、KPCは自組織の運営資金や活動資金を確保するため、農業分野ではゴムプランテーションの経営を行い、また国境地域での貿易にも関与しています。さらに、チーク材の伐採、鉱山開発、観光に関する調査や貿易といった分野についても、活動ライセンスの取得や関与を求めていると報告されています。

人権に関する報告

KPCの活動に関連して、人権侵害の報告も存在します。特に2018年10月から2019年11月にかけての期間に、パアン地区やドゥプラヤ地区において、KPCの関与が疑われる殺人、物理的な暴力行為、恣意的な拘束、そして土地の没収といった事例が報告されています。

KPCは、カレン族の武装勢力の中でも、KNU/KNLAから分離独立し、ミャンマー軍事政権との関係性や和平プロセスにおいて独自の立場を維持してきた組織です。軍事・政治的な活動に加え、経済活動やインフラ整備にも関与する一方で、人権問題に関する懸念も指摘されています。その存在は、ミャンマーの複雑な民族問題と和平プロセスの一断面を示しています。

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