カワネズミ

カワネズミ（Chimarrogale platycephalus）

カワネズミは、トガリネズミ科カワネズミ属に分類される哺乳類で、日本の固有種です。清流を好むその生態から、環境の変化に弱い側面を持ちます。

分布

カワネズミは、本州と九州に分布しています。しかし、四国や隠岐では生息が確認されておらず、これらの地域には分布していないと考えられています。

形態

成獣の体長は11.1 - 14.1cm、尾長は8.2 - 11.7cm、体重は25 - 63g程度です。九州に生息する個体群は、本州のものよりも小型である傾向があります。尾は長く、下面には長毛が生えています。体色は季節によって変化し、夏毛は黒褐色、冬毛は灰色が強くなります。腹部は淡褐色です。

カワネズミの頭骨は、横から見ると中央部が凹んでいます。耳は小さく、体毛に隠れるように存在します。後足には水かきの役割を果たす扁平な剛毛が生えており、水中生活に適応した特徴と言えます。水中では、体毛の間に気泡を蓄え、銀色に輝いて見えることから、「ギンネズミ」と呼ばれることもあります。

分類

種小名のplatycephalusは、「平たい頭」を意味するギリシャ語に由来します。属名のChimarrogaleは女性名詞であるため、platycephalaとすべきという説もありますが、原記載に従いplatycephalusが正しいとされています。

生態

カワネズミは、山間部の渓流周辺に生息し、倒木や岩場を好みます。捕獲調査の結果から、個体ごとに縄張りを持つことが示唆されています。活動時間帯は昼夜に及びますが、夜間の方がより活発であるという報告もあります。巣は、岸辺の石の下や地中に作られ、枯れ葉などが利用されます。

食性は肉食で、魚類、水生昆虫、ヒル、サワガニ、カワニナなどを捕食します。胃の内容物調査では、水生昆虫が主な食物であることがわかっていますが、魚類も重要な栄養源と考えられています。山梨県での調査では、ブユやユスリカの幼虫からカエル、魚類まで様々な獲物を食べており、糞からは陸生無脊椎動物であるクモも検出されています。

繁殖期は主に2 - 6月で、一度に1 - 6頭の幼獣を産みます。まれに10 - 12月に出産することもあります。寿命は比較的長く、3年以上生存した例も確認されています。

人間との関係

カワネズミは、ダム建設や河川改修、農薬や除草剤による水質汚染など、人間活動の影響を受けて生息数を減少させています。生息に適した環境であっても確認されない場合があり、そのような場所では過去または現在進行形で土木工事が行われている傾向があります。工事による濁流が、カワネズミの餌となる水生昆虫を減少させていると考えられています。

九州地方のカワネズミ（九州個体群）

九州個体群は、本州に比べて生息状況が厳しく、分布の分断化や減少傾向がより顕著です。環境省のレッドリストでは、絶滅のおそれのある地域個体群として指定されています。

カワネズミの保護のためには、生息環境の保全と水質改善が不可欠です。また、土木工事の際には、カワネズミへの影響を最小限に抑えるための配慮が求められます。

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