トガリネズミ科

トガリネズミ科（Soricidae）

トガリネズミ科は、哺乳綱真無盲腸目に分類されるグループで、英語では一般的に"shrew"と呼ばれます。名前からネズミの仲間と思われがちですが、実際にはモグラに近い動物です。

分布

トガリネズミ科は、アフリカ大陸、北アメリカ大陸、南アメリカ大陸北部、ユーラシア大陸など、非常に広い範囲に分布しています。

形態

トガリネズミの仲間は、一般的に目が小さく、聴覚が発達しています。しかし、耳介は退化している種も存在します。水中で生活する種では、四肢や指、尾に剛毛が生えており、水中で推進力を得るのに役立っています。例えば、ミズカキカワネズミは、その名の通り水かきを持っています。

また、トガリネズミは胎児の段階で乳歯が抜け落ち、生まれたときから永久歯が生えています。プラリナトガリネズミなど一部の種は、唾液に毒を持っており、獲物を麻痺させるのに使われます。ヨロイジネズミ類は、脊椎が多数の突起で絡み合っており、非常に頑丈な体をしています。生殖器官と排泄孔が共通の総排泄孔を持つ種が多いですが、分かれている種や中間的な種もいます。

分類

以下は、Hutterer(2005)の分類と英名、川田ら(2018)の和名に従った分類です。

ジネズミ亜科 Crocidurinae
ジネズミ属 Crocidura - アジアコジネズミ、ニホンジネズミ、ワタセジネズミなど
クラカケジネズミ属 Diplomesodon
Diplomesodon pulchellum クラカケジネズミ
オオアシジャコウネズミ属 Feroculus
Feroculus feroculus オオアシジャコウネズミ
ジネズミモドキ属 Paracrocidura
ルウェンゾリトガリネズミ属 Ruwenzorisorex
Ruwenzorisorex suncoides ルウェンゾリトガリネズミ
ヨロイジネズミ属 Scutisorex
Scutisorex somereni ヨロイジネズミ
ビアソンジャコウネズミ属 Solisorex
Solisorex pearsoni ビアソンジャコウネズミ
ジャコウネズミ属 Suncus - ジャコウネズミなど
モリジネズミ属 Sylvisorex
モリジャコウネズミ亜科 Myosoricinae
コンゴモリジャコウネズミ属 Congosorex
モリジャコウネズミ属 Myosorex
ケニアモリジャコウネズミ属 Surdisorex
トガリネズミ亜科 Soricinae
モグラジネズミ族 Anourosoricini
モグラジネズミ属 Anourosorex
ヒミズトガリネズミ族 Blarinellini
ヒミズトガリネズミ属 Blarinella
ブラリナトガリネズミ族 Blarinini
ブラリナトガリネズミ属 Blarina
コミミトガリネズミ属 Cryptotis
カワネズミ族 Nectogalini
カワネズミ属 Chimarrogale - カワネズミなど
カスチェンコケムリトガリネズミ属 Chodsigoa
ケムリトガリネズミ属 Episoriculus
ミズカキカワネズミ属 Nectogale
Nectogale elegans ミズカキカワネズミ
ミズトガリネズミ属 Neomys - ミナミミズトガリネズミなど
†バレアレストガリネズミ属 Nesiotites
チビオケムリトガリネズミ属 Soriculus
Soriculus nigrescens チビオケムリトガリネズミ
サバクトガリネズミ族 Notiosoricini
オオサバクトガリネズミ属 Megasorex
Megasorex gigas オオサバクトガリネズミ
サバクトガリネズミ属 Notiosorex
トガリネズミ族 Soricini
トガリネズミ属 Sorex* - アズミトガリネズミ、オオアシトガリネズミ、シントウトガリネズミ、ニシヒメトガリネズミ、バイカルトガリネズミなど

生態

トガリネズミは、基本的に単独で生活しますが、種によっては家族群や小規模な群れを形成することがあります。縄張り意識が強く、他の個体が侵入すると追い払います。この際、鳴き声を発することがあり、トガリネズミ属やプラリナトガリネズミ属では、超音波を使って反響定位（エコロケーション）を行うことが知られています。ジネズミ属やジャコウネズミ属では、前の個体の腰を咥えて列になって移動する行動が確認されています。

食性は主に昆虫や動物の死骸ですが、種子や木の実などの植物質も食べます。また、糞食を行う種もおり、消化できなかった栄養素を再吸収していると考えられています。

もう一度検索