カンサスシティスタンダード

カンサスシティスタンダード（KCS）

カンサスシティスタンダード（KCS）またはバイトスタンダードは、コンパクトカセットテープを使用してデジタルデータを記録するためのフォーマットであり、初めて定義されたのは1976年のことです。これは、1975年にミズーリ州カンザスシティで開催されたシンポジウムに端を発しており、主に安価な民生用カセットを利用し、マイクロコンピュータによるデジタルデータを保存するために開発されました。

このフォーマットでは、データが300から2400ビット/秒（ボー）で記録されるため、柔軟性のあるデータ転送が可能です。また、KCSには基本規格のバリエーションとしてCUTSがあり、これは300ボーおよびオプションで1200ボーのモードも含まれています。特にCUTSは、エイコーンやMSXといったプラットフォームでデフォルトのエンコーディング方式として広く用いられていました。さらにMSXでは、2400ボーのモードも追加されることで、より高速なデータ転送が実現されました。

歴史的背景

初期のマイクロコンピュータはプログラムの保存に紙テープを使用していましたが、そのコストから多くのユーザーが不満を抱いていました。コンピュータコンサルタントのジェリー・オグディンは、紙テープの代わりにコンパクトカセットを用いて音声データを記録する提案をし、『ポピュラーエレクトロニクス』誌の編集者レス・ソロモンと共著で、HITS（Hobbyists' Interchange Tape System）というシステムを発表しました。HITSは、1と0を表すための2つのトーンを使うもので、様々なメーカーが似たアプローチを取るようになりましたが、互換性はありませんでした。

1975年11月、KCSを確立するための重要なシンポジウムがカンザスシティで開催され、ウェイン・グリーンの提案によって、全メーカが一堂に会する機会が設けられました。この会議では、ドン・ランカスターが提案したエンコーディング方式が合意され、KCSが誕生しました。KCSのカセットインターフェースは、シリアルポートに接続され、データがオーディオトーンに変換される仕組みを採用しており、これによりデータが300ボーで送信されます。具体的には、各フレームにはスタートビットとデータビットが含まれ、これにより全体で11ビットの構造ができあがります。

当初のKCSは300ボーという安定した速度を誇っていましたが、大きなデータ転送には時間を要しました。例えば、8キロバイトのBASICプログラムのロードには約5分もかかりました。このため、より高速なデータ転送を求める声が高まり、エイコーンやMSXのようなシステムには1200ボーおよび2400ボーのバリエーションが実装されるようになりました。

実装と互換性

KCSはマイクロコンピュータ革命の初期において、重要な役割を果たしましたが、当時多くのホームコンピュータは独自のフォーマットを採用していたため、完全な互換性を確保することは困難でした。また、プロセッサ・テクノロジー社が開発したCUTSは、300ボーまたは1200ボーでの動作を可能にし、特にS-100バスのインターフェースボードに利用されました。

1976年8月には、KCSによって記録された音声プログラムを含むレコードも発表され、一般のユーザーに向けた新たな利用方法も模索されました。このように、KCSはただのデータ記録方式にとどまらず、コンピュータの実用化を支えた重要な規格でしたが、単独での成功には至らなかったとも言えます。その後、多くのメーカーが独自規格に戻る結果となり、統一したデータフォーマットは実現しませんでした。

結論

カンサスシティスタンダード（KCS）は、歴史的に重要な位置を占めるデジタルデータ記録の規格です。その影響は現在でも様々な技術に引き継がれており、マイクロコンピュータの発展に寄与しましたが、互換性の課題は未解決のままとなっています。

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