カンブリア (イングランド)

カンブリア州：イングランド北西部の歴史と自然の宝庫

イングランド北西端に位置するカンブリア州は、豊かな自然と深い歴史を誇る地域です。1974年、カンバーランド、ウェストモーランド、そしてランカシャー、ヨークシャーの一部が合併して誕生しました。古くはケルト系のカンブリア人が居住し、独自の言語を話していたとされます。

歴史：太古から現代までの歩み

カンブリアの歴史は古く、新石器時代には石斧の生産地として栄え、その製品は島全土に広まりました。ストーンサークルなどの遺跡も多く残り、古代の歴史を感じることができます。紀元43年のローマによるブリタニア侵攻では初期は征服を免れましたが、後にローマの支配下に置かれ、ハドリアヌスの長城などの建造物が建設されました。

中世には、レゲド王国の中心地であったと考えられていますが、近年、その説に反する新たな発見も報告されています。その後は、ストラスクライド王国やノーサンブリア王国など、複数の勢力がこの地を巡って争いを繰り広げました。ノルマン・コンクエスト後も、イングランドとスコットランドの戦争やボーダー・リーバーズの活動など、激動の時代を経験しました。カーライルは何度も包囲戦に見舞われ、その歴史は今もなお残されています。

18世紀以降は、産業革命による人口増加や工業の発展が促されました。鉄鋼業、造船業、織物業などが盛んになり、ワーキントン、マイロム、バーロウ＝イン＝ファーネスなどの沿岸都市は発展しました。この地方を愛したウィリアム・ワーズワースやサミュエル・テイラー・コールリッジといった湖水詩人たちや、児童文学作家ベアトリクス・ポターもこの地で創作活動を行い、その名前は今も語り継がれています。ポターは大地主となり、死後、多くの土地をナショナル・トラストに寄贈し、現在では湖水地方国立公園の中核をなしています。

しかし、1957年にはウィンズケール原子炉火災事故という暗い歴史も経験しました。近年では、2023年にカンブリア州議会が廃止され、行政区域が再編されました。

地理：湖水地方と多様な地形

カンブリア州はイングランド北西端、アイルランド海に面した地域です。スカーフェル・パイク（978m）はイングランド最高峰であり、ウィンダミア湖はイングランド最大の天然湖です。ペナイン山脈に沿った東部から、アイルランド海に面した西部、そしてスコットランドとの国境に接する北部まで、多様な地形が広がっています。ランカスター運河やウルバーストン運河などの運河も、歴史的な遺産として残されています。

行政：再編された行政区域

カンブリア州は、2023年の再編により、カンバーランドとウェストモーランド・アンド・ファーネスの二つの単一自治体となりました。それ以前は6つの地区から構成されていましたが、長年の議論を経て、この再編が実現しました。

経済：観光業と主要産業

カンブリア州最大の産業は観光業です。年間4700万人もの観光客が訪れ、湖水地方国立公園だけでも毎年1580万人が訪れます。これは、湖水地方の住民数（5万人未満）をはるかに上回る数字です。観光業以外では、州議会職員、BAEシステムズ（バーロウ）、セラフィールドの従業員などが主要な雇用を支えています。

交通：道路、空港、鉄道網

カンブリア州を走る主要な高速道路はM6号線です。その他、A6、A66、A69などの主要道路が州内を走り、バス路線も整備されています。カーライル湖水地方空港とバーロウ/ウォルニー・アイランド空港があり、さらに近隣の主要空港も利用可能です。鉄道では、西海岸本線が州内を通っており、カーライル駅、バーロウ＝イン＝ファーネス駅、ペンリス駅などが主要駅です。

観光：湖水地方を中心に

湖水地方国立公園はカンブリア州最大の観光地です。美しい湖や山々、そして歴史的な建造物など、多くの観光スポットが存在します。年間の観光客数は膨大で、地域経済に大きく貢献しています。

象徴：州の紋章と州旗

カンブリア州の紋章は、カンバーランド、ランカシャー、ヨークシャーの象徴を組み合わせたもので、歴史と多様な地域性を反映しています。州の標語は詩編121篇からの引用で、地域の精神を表しています。

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