カンプチア救国民族統一戦線

カンプチア救国民族統一戦線（FUNSK）とは

カンプチア救国民族統一戦線（FUNSK）は、後のカンプチア人民共和国（ヘン・サムリン政権）の母体となった反ポル・ポト派の政治的・軍事組織です。フランス語ではFront d'Union nationale pour le salut du Kampuchea、英語ではKampuchean (or Khmer) United Front for National Salvationと表記されます。

1978年12月2日に、ポル・ポト派の粛清を逃れベトナムへ逃亡した元クメール・ルージュの地方幹部らによって結成されました。同年12月25日にはベトナム軍の支援を受けてカンボジアに侵攻し、1979年1月7日に首都プノンペンを制圧、民主カンプチア（ポル・ポト派＝クメール・ルージュ政権）を崩壊させました。その後、ヘン・サムリンを国家評議会議長とするカンプチア人民共和国の成立が宣言され、FUNSKは、ポル・ポト政権下で荒廃しきった国家を立て直す礎として活動しました。組織は拡大とカンボジアの歴史的な変化に合わせて、数度にわたり名称を変更しています。

沿革

カンプチア救国民族統一戦線（1978年 - 1981年）

FUNSKは、政治的にはマルクス主義政党であるカンプチア人民革命党（KPRP）の包括的組織でした。

1977年、カンボジア東部で血の粛清を行ったクメール・ルージュ（ポル・ポト派）の反ベトナム政策と相容れないカンボジア人共産主義者らは、クメール・ルージュからカンボジア東部のクラチエ州一帯を解放し、クラチエ近郊でFUNSKを結成しました。クメール人社会主義勢力の過激派の中にはFUNSK結成日の1978年12月2日を「再建大会」と呼ぶものもいました。

ポル・ポト政権に対する反政府運動を拡大し、ポル・ポト派の恐怖政治を打破することを目的として結成されたFUNSKは、国の再建策として11の案を掲げました。これらの案は国民にカンプチア人民共和国（PRK）建国後の国家再建への支援を促すだけでなく、クメール・ルージュよりも穏健・実践的かつ人道的なアプローチをとることによって、新国家の親ソ連的体制への支持を働きかけるものでした。

FUNSK幹部はカンプチア人民革命党（KPRP）の共産主義者が占め、カンボジア仏教徒といった非共産主義者幹部、あるいは女性幹部はごく少数でした。

ポル・ポト派や世界各国からは、カンプチア人民共和国がベトナムの傀儡政権であるとの声も上がっていました。

カンプチア国家建設・防衛統一戦線（1981年 - 2006年）

プノンペン解放から2年後の1981年、FUNSKは組織名をカンプチア国家建設・防衛統一戦線（KUFNCD）へと改称しました。同組織はカンプチア人民共和国の建国から長年にわたり、カンボジア国家における親ベトナムの主要な政治組織であり、カンプチア人民共和国の憲法第3条では「カンプチア国家建設・防衛統一戦線および革命的な各大衆組織は、国家の確固たる支持基盤であり、国民が各々の革命的任務を果たすことを奨励・鼓舞するものである」とその役割を規定されました。

カンボジア祖国発展連帯戦線（2006年以降）

2006年4月29日、プノンペンで開かれたカンプチア国家建設・防衛統一戦線第5回大会で、組織名をカンボジア祖国発展連帯戦線（SFDCM）に改称しました。

かつて重要な役割を担ってきた「戦線」も、今日のカンボジア政治においてはその重要性を失っています。

中央委員会構成

1978年12月2日の結成式に参加した統一戦線中央委員は、以下の14名です。

ヘン・サムリン（議長、元クメール・ルージュ）
チア・シム（副議長、元クメール・ルージュ）
ロス・サマイ（クメール・イサラク）
マット・リ（元クメール・ルージュ）
ブン・ミ（元クメール・ルージュ）
フン・セン（元クメール・ルージュ）
メアン・サマン夫人（元クメール・ルージュ）
メアス・サムナン（元クメール・ルージュ）
ネウ・サモン（クメール・イサラク）
ロン・シム師（僧侶）
ヘム・サミン（クメール・イサラク）
チェイ・カン夫人
チャン・ヴェン
プラク・スン

役割

FUNSKの役割は、党の政策を大衆に伝え、監視者として働き、「農労軍事同盟」を強固にするため党大会などに大衆を動員することでした。そのため、組織の幹部には大衆との密接な関係を保ち、その要求や問題を当局に報告したり、大規模なキャンペーンを実施して政権の支持固めを行ったり、人々の間に「競争」が生まれるよう働きかけることが求められました。また、幹部は各村やコミューンにおける救国戦線活動者間のネットワークを構築し、その役割を調整する責任もありました。

組織は「ベトナムの人民、軍及び専門家」との関係改善を目的とした「友好親善」活動にも携わりました。また、仏僧を「グループや派閥に属すといった狭いものの見方を棄て」、救国戦線の革命活動に積極的に参加するように再教育することも重要な役割でした。

後継組織であるカンボジア祖国発展連帯戦線（SFDCM）は、カンボジア政府に代行してスポーツ大会や見本市といった国際イベントを開催しています。

関連組織

カンプチア国家建設・防衛統一戦線の関連組織で、規模が大きく重要な組織として以下があります。

カンプチア労働組合連合（KFTU）：労働者階級の訓練学校としての役割を担いました。
カンプチア人民革命青年連合（KPRYU）：人民革命党（KPRP）の幹部候補を養成する組織。
カンプチア革命青年協会（KRYA）：9歳から16歳までの児童が所属。
カンプチア青年開拓団（KYPO）：就学前の児童が所属。
カンプチア革命婦人協会（KRWA）：多くの女性が所属。

記念日

カンプチア国家建設・防衛統一戦線傘下のすべての組織は、以下の日に集会を開いて国民に各記念日を認知させました。

カンプチア-ベトナム連帯の日：2月18日
憎しみの日：5月20日（ポル・ポト、イエン・サリ、キュー・サムファン派の行った虐殺に対する憎しみの日）
人民と軍の連帯の日：6月19日

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