カンボジア最高国民評議会

カンボジア最高国民評議会（SNC）とは

カンボジア最高国民評議会（Supreme National Council of Cambodia, SNC）は、1990年から1993年まで存在した、カンボジアの主権を代表する機関です。内戦終結後の移行期において、カンボジアの和平と復興を担う重要な役割を果たしました。

SNC設立の背景

1980年代後半から始まったカンボジア和平交渉は、総選挙前の政権のあり方を巡って難航しました。当時のヘン・サムリン政権は、現政権下での選挙実施を主張。一方、反ベトナム三派は、政権解体と四派による暫定連合政府の樹立を求めました。

1990年1月、国連安保理常任五ヶ国による会議で、SNC設置案が浮上します。これは、四派が全政府権限をSNCに委託し、SNCがそれを国連事務総長に移譲するというものでした。これにより、「現政権維持か、暫定政府樹立か」という対立を回避することが目指されました。

同年6月、「カンボジアに関する東京会議」において、新国家発足までの主権代表機関としてSNCを設立することで合意。ヘン・サムリン政権と三派政権が同数のメンバーで構成されることになりました。ポル・ポト派は一時ボイコットしましたが、中国の説得により最終的に合意し、1990年9月10日にSNCが発足しました。

SNCの活動

SNCは発足後、議長選出で紛糾しましたが、1991年7月、ノロドム・シハヌークが議長に就任。これにより、SNCは本格的に機能し始めました。

同年10月23日には、「カンボジア紛争の包括的な政治解決に関する協定」（パリ和平協定）が調印され、カンボジア内戦が終結。SNCは、「唯一の合法的な機関」かつ「唯一の権威の源泉」として、新憲法制定と新政府樹立までの「暫定期間」において、カンボジアを代表することになりました。

SNCは、民主カンプチア連合3派（ポル・ポト派、ソン・サン派、シハヌーク派）とカンボジア国（ヘン・サムリン政権）の4派が参画する最高主権機関として、国際連合カンボジア暫定統治機構（UNTAC）にカンボジアの行政統治を委託しました。

SNCの終焉とその後

1993年5月、UNTAC監視の下で憲法制定のための国民議会選挙が行われ、フンシンペックが第一党となりました。同年9月23日に新憲法が公布され、翌9月24日にはSNC議長であったノロドム・シハヌークが国王として復位。カンボジア王国が再建され、SNCはその役割を終えました。

SNCの構成メンバー

SNCは、ヘン・サムリン政権側が6名、連合政府三派が各2名、計12名で構成されました。

ヘン・サムリン政権代表
ハオ・ナムホン
フン・セン
ティア・バン
ディット・ムンティ
イム・チュウンリム
シン・セン
シハヌーク派代表
チャウセン・コーサル（1991年6月交代）→ノロドム・シハヌーク（1991年7月17日議長就任）
ノロドム・ラナリット
サム・ランシー（1993年1月時点）
ソン・サン派代表
ソン・サン
イエン・ムーリ
ポル・ポト派代表
キュー・サムファン
ソン・セン

SNCは、カンボジア内戦後の和平プロセスにおいて、各派の代表者が集まり、国の将来について協議する重要な場となりました。その活動は、今日のカンボジアの平和と安定の礎となっています。

参考文献
天川直子 「和平協定調印－新たな時代へ　1991年のカンボジア」『アジア動向年報1992』 アジア経済研究所、1992年。
冨山泰 『カンボジア戦記－民族和解への道』 中央公論社＜中公新書1064＞、1992年。

関連項目
国際連合カンボジア暫定統治機構

外部リンク
* カンボジア和平パリ協定 - 在カンボジア日本大使館

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