カ・ドーロ

カ・ドーロ（Ca' d'Oro）、正式名称をパラッツォ・サンタ・ソフィア（Palazzo Santa Sofia）というこの邸宅は、ヴェネツィアの象徴的な大運河カナル・グランデに面し、その中でも特に美しい建物の一つとして知られています。かつて外壁に金箔と多彩色の装飾が施されていたことから「黄金の館」とも呼ばれ、その名は歴史の中に深く刻まれています。

歴史と変遷

この邸宅は1428年から1430年にかけて、ヴェネツィア貴族のコンタリーニ家のために建設されました。コンタリーニ家は1043年から1676年の間に8人ものヴェネツィア元首（ドージェ）を輩出した名家であり、選挙で元首に選出された者はこの館からドゥカーレ宮殿へ移り住むのが慣例でした。

建築を手がけたのは、ジョヴァンニ・ボーノとその息子バルトロメオ・ボーノです。彫刻家であり建築家でもあったこの二人の手腕は、ヴェネツィアにおけるゴシック様式建築の縮図とも言えます。彼らはドゥカーレ宮殿の建築にも携わり、特に『ソロモンの審判』像が飾られたポルタ・デッラ・カルタ（Porta della Carta）は著名な作品です。

1797年のヴェネツィア共和国終焉後、カ・ドーロの所有者は幾度も変わりました。19世紀にはバレエダンサーのマリー・タリオーニが所有者となり、中庭のゴシック様式の階段やバルコニーを撤去するという、今日では考えられない改修を行いました。しかし、1922年には、1894年から所有者であったジョルジョ・フランケッティ男爵により、カ・ドーロは国家に寄贈されました。その後、往時の輝きを取り戻すべく大規模な修復が行われ（階段の再建も含む）、現在はギャラリーとして一般に公開されています。

内部には、アンドレア・マンテーニャの『聖セバスティアヌス』をはじめとする貴重な絵画が展示されています。

建築様式

カナル・グランデに面するカ・ドーロの主ファサードは、ボーノ父子によるヴェネツィア風の花模様を用いたゴシック様式で構成されています。近隣には同様の様式を持つバールバロ館やジュスティニアン・ペーザロ館が建ち並びます。この優美な線状の様式はヴェネツィアの建築家に好まれ、16世紀末までバロック様式の興隆にも耐え、長くその姿を保ちました。

ヴェネツィアにおけるゴシック様式は、ビザンティン建築の影響を強く受けています。カ・ドーロの地上階には、列柱が並び、建物本体から後退したロッジアが設けられ、運河とエントランス・ホールが直接繋がっています。この柱廊の上部は主階（ピアノ・ノービレ）のメインサロンのバルコニーとなっており、柱頭はアーチで結ばれ、繊細な四弁花状の開口部を支えています。さらにその上には、やや軽やかながら共通のデザインを持つバルコニー（またはロッジア）が重ねられています。この建物の様式を一言で表すならば、「中世の教会とムーア風の神殿が融合したかのよう」と言えるでしょう。華麗な外観は、この邸宅が他と同様に小さな中庭を囲んで建てられていることを感じさせないほどです。

カ・ドーロは、その歴史的背景と美しい建築様式、そして所蔵されている芸術作品を通して、ヴェネツィアの文化と芸術を体感できる貴重な場所です。

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