マリー・タリオーニ

マリー・タリオーニ（1804年4月23日 - 1884年4月22日）は、ロマンティック・バレエを象徴するスウェーデン・イタリアのバレエダンサーです。彼女は、バレエダンサーであり振付家である父フィリッポ・タリオーニと、スウェーデンのオペラ歌手の娘である母ソフィー・カルステンの間に生まれました。

生い立ちと初期のキャリア

ストックホルムで生まれたタリオーニは、ダンスの名門に育ち、親戚にも多くのバレエダンサーがいました。幼少期からバレエを学び始め、17歳からは父フィリッポの厳しい指導のもとで高度なテクニックを習得しました。1822年、ウィーンで初舞台を踏み、その後、ドイツやイタリアなどヨーロッパ各地で踊り、その才能を開花させていきました。

パリ・オペラ座での成功

1827年、タリオーニはパリ・オペラ座でデビューを飾ります。1831年には、ジャコモ・マイアベーア作曲、父フィリッポ振付の『悪魔のロベール』で「死んだ尼僧たちの踊り」の主役を演じ、好評を博しました。そして1832年、同じく父の振付による『ラ・シルフィード（空気の精）』で主役を演じ、大成功を収めました。この作品は、彼女の名声を不動のものとし、ロマンティック・バレエの象徴となりました。

『ラ・シルフィード』において、初めてチュチュが用いられ、ポワント（つま先）で立つ技法が記録されたことは、バレエ史における大きな転換点となりました。この作品以降、タリオーニは「ラ・シルフィード」という別名で呼ばれるようになり、まるで空中を舞うような軽やかな踊り、精霊や妖精のような異世界の役柄を得意とするダンサーとして知られるようになりました。

1836年には、父の振付による『ドナウの娘』の主役を初演した後、パリを離れました。1837年から5年間は、ロシアのサンクトペテルブルクで活躍し、ヨーロッパ各地で絶賛されました。1847年に引退し、ヴェネツィア近郊で静かな生活を送りました。

晩年

晩年、経済的な困難に直面したタリオーニは、ロンドンに移り住み、1871年から1880年までバレエ教師として生計を立てました。その後、マルセイユに住む息子のもとに身を寄せ、その地で息を引き取りました。

人物像

マリー・タリオーニは、背が高く痩せ型で猫背であり、容姿には恵まれなかったと伝えられています。性的魅力に欠けていたため、男性ファンが多かったファニー・エルスラーと比較され、「婦人好み」と評されることもありました。しかし、彼女のバレエにおける卓越した技術と表現力は、多くの人々を魅了し、ロマンティック・バレエの発展に大きく貢献しました。

遺産

マリー・タリオーニは、ロマンティック・バレエの時代を代表するダンサーとして、その名を歴史に刻みました。『ラ・シルフィード』で初めて用いられたチュチュやポワントの技法は、今日のバレエにも受け継がれています。また、彼女の優雅で軽やかな踊りは、多くのダンサーに影響を与え、バレエ芸術の発展に大きく貢献しました。

参考文献

小倉重夫編「バレエ音楽百科」（音楽之友社、1997年）
鈴木晶「バレエ誕生」（新書館、2002年）

関連項目

エマ・リヴリー - マリー・タリオーニが引退後、指導に当たったバレエダンサー。彼女はリヴリーのために、「パピヨン」を振付けている。

外部リンク

The Taglioni Family（英語）

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