カーテン (推理小説)

カーテン―ポアロ最後の事件

『カーテン―ポアロ最後の事件』（原題: Curtain: Poirot's Last Case）は、1975年に発表されたアガサ・クリスティによる長編ミステリー小説である。これはシリーズの主人公エルキュール・ポアロにとっての最終作であり、彼の最初の事件が舞台となったスタイルズ荘で繰り広げられる。物語は、ポアロとその親友アーサー・ヘイスティングズ大尉の再会から始まる。

執筆の背景

本作は、ポアロシリーズを締めくくるために、1943年に執筆されたものであり、同時期に書かれたミス・マープルシリーズの最終作『スリーピング・マーダー』とともに、著者の死後に出版されることを前提にしていた。しかし、出版社の要請により、クリスティは1975年にこの作品の公開を許可する。残念ながら、クリスティはその翌年に亡くなってしまった。

物語の概要

物語は、ヘイスティングズがポアロからの招待を受け、老朽化したスタイルズ荘を再訪するところから始まる。かつての美しい面影を残さない建物の中で、彼らは過去の記憶を蘇らせつつ、ポアロが提示した奇妙な5つの殺人事件に直面する。これらの事件は一見関連がないように見えたが、すべての事件にはある特定の人物が関与していることが次第に明らかになる。ポアロは、その人物が現在スタイルズ荘に宿泊していると告げるが、彼がその正体を明かすことはなかった。

ポアロの推理力は衰えていなかったものの、身体の自由が利かないため、友人のヘイスティングズに情報収集を依頼する。ポアロは犯人の存在を知りながら、その詳細を語らずに静かに亡くなろうとする。事件に関する最後の手がかりは、シェイクスピアの『オセロ』ということが示唆される。

ヘイスティングズは困惑しつつも、ポアロの最期の告白を受け取る。その中で彼は、ヘイスティングズ自身が気付かぬうちに犯人の行動を助けてしまっていたことを指摘し、ポアロ自身が探偵としての義務を超えてしまったことを告白する。そして彼は、死を選ぶことで自らへの裁きを下す決意を明かす。

登場人物

• - エルキュール・ポアロ: 主人公の私立探偵
• - アーサー・ヘイスティングズ大尉: ポアロの親友
• - ジュディス・ヘイスティングズ: ヘイスティングズの娘
• - ジョージ・ラトレル: スタイルズ荘の現オーナー
• - デイジー・ラトレル: ジョージの妻
• - そのほかの泊まり客たち: スティーヴン・ノートン、ウィリアム・ボイド・キャリントン、ジョン・フランクリン、バーバラ・フランクリン、エリザベス・コールなど

映像作品

この物語は、2013年にイギリスのTVドラマ『名探偵ポワロ』の最終作として映像化された。日本では2014年に放送され、シリーズのラストとして視聴者に感動を与えた。ただし、撮影自体は別の作品『死者のあやまち』が最後だった。

『カーテン』は、ポアロの伝説を締めくくるだけでなく、彼の内面的な葛藤や倫理的な選択を描写しており、読者に深い感動を与える作品となっている。

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