カーディガン伯爵

カーディガン伯爵：歴史と変遷

カーディガン伯爵は、イングランド貴族の伯爵位であり、1661年4月20日に初代ブルーデネル男爵トマス・ブルーデネルが叙位されたことに始まります。以降、彼の男系子孫によって現在まで爵位が継承されています。1868年以降はアイルズベリー侯爵位と保持者が同一人物となっており、2019年現在のカーディガン伯爵位保持者は第8代アイルズベリー侯爵マイケル・ブルーデネル＝ブルースです。アイルズベリー侯爵家の法定推定相続人は、儀礼称号としてカーディガン伯爵を名乗ります。

爵位の歴史

サー・トマス・ブルーデネルは、1611年6月29日に準男爵（ノーサンプトン州ディーンの準男爵）に叙せられ、1628年2月26日にはレスター州スタントン・ワイヴィルのブルーデネル男爵に叙せられました。彼はイングランド内戦中、熱心な王党派としてロンドン塔に投獄されましたが、王政復古後の1661年4月20日にカーディガン伯爵に叙せられました。

初代伯の死後、息子のロバートが2代伯となりました。2代伯の一人息子であるフランシスは父に先立って亡くなったため、伯位は2代伯の孫にあたるジョージが相続しました。

4代伯となったジョージは、第2代モンタギュー公爵ジョン・モンタギューの娘メアリーと結婚しました。第2代モンタギュー公爵の男子が全て夭逝したため、ジョージはモンタギューへ改姓し、義父の遺産を相続しました（モンタギュー公爵家は一時断絶）。1766年にはグレートブリテン貴族のモンタギュー公爵とモンザーマー侯爵に、1786年にはノーサンプトン州バウトンのモンタギュー男爵に叙せられました。

1790年に4代カーディガン伯、すなわち初代モンタギュー公爵が死去すると、彼には女子しかいなかったため、カーディガン伯爵とその従属称号は弟のジェイムズが相続しました。ジェイムズは1780年10月17日にノーサンプトン州ディーンのブルーデネル男爵に叙されていました。モンタギュー公爵とその従属称号は断絶し、バウトンのモンタギュー男爵は女系の孫であるヘンリー・モンタギュー＝スコットが相続しました。

5代伯は襲爵前に庶民院議員を務め（シャフツベリ、ヘイスティングス、グレート・ベドウィン、マールバラ選出）、ジョージ3世の下で王室手許金管理長官を務めるなど公職にありました。彼には男子がいなかったため、カーディガン伯爵位は甥のロバートが相続しました。一方、ディーンのブルーデネル男爵は断絶しました。

6代伯ロバートはクリケット選手として知られ、1790年から1793年にかけてMajor cricketに少なくとも8回出場しました。また、世界最古のクリケットチームであるマリルボーン・クリケット・クラブの初期の選手の一人でもありました。1797年から1802年までマールバラ選出の庶民院議員も務めました。

6代伯の死後、息子のジェイムズが7代伯となりました。彼は軍人であり、クリミア戦争のバラクラヴァの戦いにおける軽騎兵旅団の突撃を指揮したことで有名です。また、衣服のカーディガンの名称は彼が考案したことに由来するとされています。

7代伯は1868年に子を残さずに亡くなり、伯位は彼の又従兄弟にあたる第2代アイルズベリー侯爵ジョージ・ブルーデネル＝ブルースによって相続されました。彼は3代伯の末息子であるトマスの孫でした。

トマスは1747年に母方の伯父である第4代エルギン伯爵チャールズ・ブルースからウィルトシャー州トッテナムのブルース男爵を相続し、1776年にアイルズベリー伯爵に叙せられました。1766年には姓を母のものと組み合わせて「ブルーデネル＝ブルース」に改めていました。トマスの息子でジョージの父であるチャールズは、1821年にアイルズベリー侯爵にも叙せられています。ジョージは1856年に父からこれらの爵位を相続しました。

侯爵は伯爵よりも上位の称号であるため、以後カーディガン伯爵の称号は当主が名乗ることはなくなりました。初代アイルズベリー侯爵は初代カーディガン伯爵の唯一の子孫であったため、今後この二つの爵位が別人に相続される可能性はありません。しかし、アイルズベリー侯爵位の法定推定相続人の儀礼称号として、カーディガン伯爵の称号は現在でも用いられています。

ブルーデネル準男爵（ディーンの） (1611年)

初代準男爵: トマス・ブルーデネル (Thomas Brudenell, 1583頃–1663)
1628年、スタントン・ワイヴィルのブルーデネル男爵に叙位

スタントン・ワイヴィルのブルーデネル男爵 (1628年)

初代男爵: トマス・ブルーデネル (Thomas Brudenell, 1583頃–1663)
1661年、カーディガン伯爵に叙位

カーディガン伯爵 (1661年)

初代伯: トマス・ブルーデネル (Thomas Brudenell, 1583頃–1663)
2代伯: ロバート・ブルーデネル (Robert Brudenell, 1607–1703) - 初代伯の息子
3代伯: ジョージ・ブルーデネル (George Brudenell, 1692–1732) - 2代伯の孫
4代伯: ジョージ・モンタギュー (George Montagu, 1712–1790) - 3代伯の息子
1749年にモンタギューに改姓、1766年にモンタギュー公爵に叙位

モンタギュー公爵（第2期） (1766年)

初代公爵: ジョージ・モンタギュー (George Montagu, 1712–1790) - 4代カーディガン伯
死後、モンタギュー公爵は廃絶

カーディガン伯爵 (1661年)（再開）

5代伯: ジェイムズ・ブルーデネル (James Brudenell, 1715-1811) - 初代モンタギュー公（4代カーディガン伯）の弟
6代伯: ロバート・ブルーデネル (Robert Brudenell, 1760-1837) - 5代伯の甥
7代伯: ジェイムズ・トマス・ブルーデネル (James Thomas Brudenell, 1797-1868) - 6代伯の息子
8代伯: ジョージ・ウィリアム・フレデリック・ブルーデネル＝ブルース (George William Frederick Brudenell-Bruce, 1804-1878) - 7代伯の二従兄弟、第2代アイルズベリー侯
9代伯: アーネスト・オーガスタス・チャールズ・ブルーデネル＝ブルース (Ernest Augustus Charles Brudenell-Bruce, 1811–1886) - 8代伯の弟、第3代アイルズベリー侯
10代伯: ジョージ・ウィリアム・トマス・ブルーデネル＝ブルース (George William Thomas Brudenell-Bruce, 1863–1894) - 9代伯の孫、第4代アイルズベリー侯
11代伯: ヘンリー・オーガスタス・ブルーデネル＝ブルース (Henry Augustus Brudenell-Bruce, 1842–1911) - 10代伯の叔父、第5代アイルズベリー侯
12代伯: ジョージ・ウィリアム・ジェイムズ・シャンドス・ブルーデネル＝ブルース (George William James Chandos Brudenell-Bruce, 1873–1961) - 11代伯の息子、第6代アイルズベリー侯
13代伯: シャンドス・シドニー・セドリック・ブルーデネル＝ブルース (Chandos Sydney Cedric Brudenell-Bruce, 1904–1974) - 12代伯の息子、第7代アイルズベリー侯
14代伯: マイケル・シドニー・セドリック・ブルーデネル＝ブルース (Michael Sydney Cedric Brudenell-Bruce, 1926-) - 13代伯の息子、第8代アイルズベリー侯
法定推定相続人: デイヴィッド・マイケル・ジェイムズ・ブルーデネル＝ブルース (David Michael James Brudenell-Bruce, 1952-) - カーディガン伯（儀礼称号）、現当主の息子
法定推定相続人の法定推定相続人: トマス・ブルーデネル＝ブルース (Thomas Brudenell-Bruce, 1982-) - セイバーネイク子爵（儀礼称号）、デイヴィッド・マイケルの息子

ディーンのブルーデネル男爵 (1780年)

初代男爵: ジェイムズ・ブルーデネル (James Brudenell, 1715-1811)
1790年に5代カーディガン伯を継承

参考文献

松村赳、富田虎男『英米史辞典』研究社、2000年。ISBN 978-4767430478。

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