カームヤネツィ＝ポジーリシクィイ

ウクライナ南西部に位置する都市、カームヤネツィ＝ポジーリシクィイは、フメリニツキー州に属し、蛇行するスモトリチ川の深い峡谷に囲まれた地形的要害に築かれています。ウクライナ語での名称のほか、歴史的にはポーランド語でカミェニェツ＝ポドルスキ、ロシア語でカーメネツ＝ポドーリスキイと呼ばれてきました。都市の名称には「石」を意味する言葉が含まれており、その地形的な特徴や堅固な要塞都市としての性質をよく表しています。かつてはカームヤネツィ＝ポジーリシクィイ州の州都でしたが、現在はフメリニツキー州内の地区中心地となっています。

歴史

この地に人類が定住した痕跡は古くから見られますが、集落として文献に初めて登場するのは、キエフ・ルーシの時代に遡る1062年のことです。しかし、1241年のモンゴルによるルーシ侵攻により、一帯は壊滅的な被害を受けました。

ポーランド時代の繁栄と要塞都市

1352年、ポーランド王カジミェシュ3世大王によってポーランド王国に編入されると、都市は新たな時代を迎えます。約440年間にわたりポーランド支配下に置かれ、ポーランド王国とリトアニア大公国の間で所有権が移り変わることもありましたが、1430年には最終的にポーランド王国の領地として確定しました。この頃から、古い城塞は再建・拡張され、1432年には新設されたポドレ県の県都「カミェニェツ＝ポドルスキ」として要塞都市化が進められました。マクデブルク法の適用を受けて、この地は民事・軍事の重要な行政中心地となり、商業活動が保護・奨励されたことで急速な発展を遂げました。人口は増加し、多様な職人ギルドが組織され、定期的な大規模市が開かれるなど活況を呈しました。

オスマン帝国やクリミア・タタールによる侵攻が予想される南東辺境の防衛拠点として、歴代のポーランド王たちは城郭の強化に注力しました。スモトリチ川沿いに広がる要塞線は、幾度となく繰り返された敵の攻撃を退け、ポーランドの東部辺境を守る極めて堅牢な防衛拠点としての名声を博しました。しかし、1617年に建設された新しい城は、その後のオスマン帝国の攻撃に耐えることはできませんでした。

戦乱と支配者の変遷

17世紀半ばにウクライナ・コサックの首領ボフダン・フメリニツキーが起こした反乱（フメリニツキーの乱）の間、都市のユダヤ人コミュニティはコサックやクリミア・タタールから深刻な被害を受けました。しかし、反乱軍は都市の要塞を陥落させるには至らず、攻撃を諦めて撤退しました。1655年にはフメリニツキーとロシア軍による猛攻も撃退しましたが、1672年、近代的な火器で武装したオスマン帝国の大軍勢によってついに都市は陥落します。この際、ポーランド軍が撤退時に火薬庫を爆破した音は、遠くまで響いたという伝説が残されています。

1672年のブチャチ条約により、カミェニェツ＝ポドルスキは事実上オスマン帝国の一部となり、ポジーリャ地方の主要都市とされました。これに対し、ポーランド王ヤン3世ソビエスキは近郊に新たな要塞を築いて反撃の拠点としました。1699年、カルロヴィッツ条約の結果、都市は再びポーランドへ返還され、ポーランド・リトアニア共和国で最も強固な要塞の一つと見なされました。18世紀に入り共和国が衰退する中でも、最後の国王スタニスワフ・アウグスト・ポニャトフスキは要塞の整備に力を入れました。

ユダヤ人コミュニティの出来事

18世紀半ばには、ユダヤ人コミュニティ内部でタルムード派と神秘主義的なフランク派が激しく対立しました。デンボフスキ司教の主導で行われた公開討論会では、フランク派が勝利を宣言され、主流派ユダヤ人に対する賠償金の支払いとタルムードの焼却が命じられました。この焚書は1757年に実行されました。

ロシア帝国からソビエト連邦へ

1793年の第二次ポーランド分割により、都市はロシア帝国領となり、名称もロシア語式のカーメネツ＝ポドーリスキイに改められ、ポドーリエ県の県都となりました。ピョートル1世が要塞を視察するなど、その重要性は認識されていました。19世紀には、農民反乱の指導者ウスティム・カルマリュークがこの要塞の牢獄に収監され、脱獄を試みた逸話も残っています。また、多くのユダヤ人がカーメネツからアメリカ合衆国、特にニューヨークへ移住しました。

第一次世界大戦中のオーストリア＝ハンガリーによる占領を経て、ロシア革命後は短期間ながら幾つかのウクライナ国家に帰属した後、ウクライナ社会主義ソビエト共和国の一部となりました。ポーランド・ソビエト戦争を経て、1921年のリガ平和条約で最終的にボリシェヴィキの支配下に入り、以後約70年間ソビエト連邦の一部となります。ソビエト時代には、ポーランド人のシベリア追放など厳しい迫害が行われ、多民族・多宗教であった社会構成は大きく変化しました。かつてはウクライナ・ソビエト社会主義共和国のカームヤネツィ＝ポジーリシクィイ州の州都でしたが、後に州都はフメリニツキーに移されました。1927年には、ソビエト体制に対する農民や労働者の反乱が発生し、鎮圧により多数の犠牲者を出しました。

第二次世界大戦中、1941年8月27日から28日にかけて、市の近郊でホロコーストにおける初期の大規模虐殺の一つが発生しました。このわずか二日間で、ハンガリー系および地元のユダヤ人合わせて23,600人以上が殺害されました。これはナチスの「最終的解決」に向けた最初期の行動の一つと考えられています。

現代そして観光都市へ

1991年にウクライナが独立すると、カームヤネツィ＝ポジーリシクィイはウクライナ領の一部となりました。長い歴史の中で培われた多様な文化と建築は都市の貴重な遺産となっています。古城、聖ペテロ・聖パウロ大聖堂、市庁舎など、歴史的建造物は主要な観光資源です。近年では、スモトリチ川の峡谷を利用した気球イベントや、コサック・ゲームズなどの様々なフェスティバル、文化活動が開催され、西ウクライナの主要な観光地の一つとして賑わいを見せています。国内外から多くの観光客が訪れ、地域経済の活性化に貢献しています。

名前の由来

都市名の最初の部分「カームヤネツィ」は、古東スラヴ語で「石」を意味する言葉に由来します。これは、都市が築かれた岩がちな地形や、その堅固な要塞としての歴史を物語っています。後半の「ポジーリシクィイ」は、「ポジーリャ地方の」という意味で、この都市が歴史的にポジーリャ地方の中心であったことを示しています。

多様な言語で表記される都市名には、ポーランド語のKamieniec Podolski、ロシア語のКаменец-Подольский、トルコ語のKamaniçeなどがあり、この地の歴史的な繋がりを反映しています。

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