カーラ・ブレイ

カーラ・ブレイ：ジャズ界の異端児、その革新的な音楽と生涯

カーラ・ブレイ（Carla Bley、1936年5月11日 - 2023年10月17日）は、アメリカのジャズ・ピアニスト、作曲家として、その独創性と革新性でジャズ界に大きな影響を与えました。彼女はバップ以降のコンポーザーの中でも、特に優れた音楽的才能を持つミュージシャンとして高く評価されています。

音楽への目覚めとニューヨークでの苦難

教会音楽家の父親の影響で幼い頃から音楽に触れて育ったブレイは、アカデミックな音楽教育とは一線を画し、ほぼ独学で音楽の道を歩みました。17歳の時にジャズに魅了され、当時ジャズシーンが活況を呈していたニューヨークへと移住します。しかし、当初は音楽で生計を立てることができず、ウェイトレスなどの仕事で生活を支える日々を送りました。

ポール・ブレイとの結婚、そして才能の開花

生活に困窮していたブレイに転機が訪れたのは、1957年のピアニスト、ポール・ブレイとの結婚でした。当初は苦戦したものの、個性的な楽曲を次々と生み出すようになり、アート・ファーマー、ゲイリー・バートン、チャーリー・ヘイデンといった著名なミュージシャンに楽曲を提供する機会を得て、一躍トップ・コンポーザーとしての地位を確立しました。

ジャズ・コンポーザーズ・オーケストラと実験的なオペラ

1966年には、2人目の夫となるトランペット奏者、マイケル・マントラーと共に非営利組織「ジャズ・コンポーザーズ・オーケストラ・アソシエーション」（JCOA）を設立し、商業主義からのミュージシャンの保護と自由化に貢献しました。1971年には、詩人ポール・ヘインズとの共作で、LP3枚組の大作ジャズ・オペラ『エスカレーター・オーヴァー・ザ・ヒル』を発表。この作品は実験的な要素が強く、当時のジャズ界で賛否両論を呼びました。

晩年まで衰えぬ創作意欲

その後もブレイの創作意欲は衰えることなく、チャーリー・ヘイデンとの『リベレーション・ミュージック・オーケストラ』の続編である『戦死者たちのバラッド』、3人目の夫となるスティーヴ・スワロウとのデュオ・アルバム、オーケストラ・アルバム『ザ・ヴェリー・ビッグ・カーラ・ブレイ・バンド』など、数々の作品をコンスタントに発表し続けました。

ロックミュージシャンとの交流

彼女はジャンルを超えて、ロック・ミュージシャンとも交流しました。1975年にはザ・ジャック・ブルース・バンドのメンバーとしてヨーロッパとイギリスのツアーに参加。1981年には、ピンク・フロイドのニック・メイスンの初ソロ・アルバム『空想感覚』に全曲を提供し、メイスンと共同でプロデュースを手がけ、キーボードも担当しました。

2023年10月17日、ニューヨーク州北部の自宅にて、脳腫瘍の合併症により87歳で逝去。その革新的な音楽と精神は、これからも多くの人々に影響を与え続けるでしょう。

主要ディスコグラフィ

『エスカレーター・オーヴァー・ザ・ヒル』 - Escalator Over The Hill (1971年)
『トロピック・アペタイト』 - Tropic Appetites (1974年)
『ディナー・ミュージック』 - Dinner Music (1977年)
『戦死者たちのバラッド』 - The Ballad Of The Fallen (1983年)
『デュエッツ』 - Duets (1988年) ※with スティーヴ・スワロウ
『ザ・ヴェリー・ビッグ・カーラ・ブレイ・バンド』 - The Very Big Carla Bley Band (1991年)
* 『ルッキング・フォー・アメリカ』 - Looking for America (2003年)

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