カールスルーエ音楽大学

ドイツ南西部、バーデン＝ヴュルテンベルク州の都市カールスルーエに位置する公立の音楽高等教育機関です。シュロス校舎、マルシュタール、レマーバウなど市内に複数のキャンパスを展開しています。1812年にその前身が設立され、1971年に現在の州立音楽大学へと改組されました。ドイツ国内に23校ある州立音楽大学の一つとして、教育・研究活動を行っています。

現在、この大学には世界約50カ国から集まったおよそ550名の学生が学び、約60名の教授陣と約140名の講師陣が指導にあたっています。

沿革

カールスルーエ音楽大学の歴史は古く、19世紀初頭にまで遡ります。

1812年: 市の支援のもと、「吹奏楽のための音楽教育機関」（musikalisches Bildungsinstitut für Bläser）として設立されました。
1814年: 「歌唱研究所」（Singanstalt）が開設されます。
1837年: 市と州の協力により、「音楽教育機関」（Musikbildungsanstalt）が設立されました。
1910年: 1883年にハインリヒ・オルデンシュタインによって創設された「大公立音楽院」（Großherzoglichen Konservatorium）と合併しました。
1929年: 「バーデン音楽大学」（Badische Hochschule für Musik）と改称されます。
1971年: バーデン＝ヴュルテンベルク州立カールスルーエ音楽大学（Staatliche Hochschule für Musik Karlsruhe）として再編され、現在に至っています。

歴代学長

本学ではこれまでに以下の人物が学長を務めてきました。

初代：オイゲン・ヴェルナー・ヴェルテ
第二代：ヴォルフガング・ヴィドマイヤー
第三代：ファニー・ゾルター（1984年 - 2001年）
第四代：ヴォルフガング・マイヤー（2001年 - 2007年）
第五代：ハルトムート・ヘル（2007年9月 - ）

教育・研究体制

大学は、6つの主要な学科グループ（Fachgruppe）を中心に、それらとは別に独立した教育・研究機関を擁しています。3つの研修所（Institut）、1つのスタジオ（Studio）、そして歌曲クラス（Liedklasse）が開設されており、地域団体との連携や、ラジオ放送、オペラ公演、コンサートなどを通じて、特色ある教育と活発な演奏・研究活動を展開しています。

学科グループ

指揮科
声楽科
鍵盤楽器・ギター科
弦楽器科
作曲・理論・音楽学科
ハープ・管楽器・打楽器科

独立機関

LernRadio: 学生が主体となるラジオ放送局です。
現代音楽・メディア研修所 (Institut für neue Musik und Medien - InMM): 1990年にバーデン＝ヴュルテンベルク州が掲げた「カールスルーエ音楽大学における現代音楽、コンピューター音楽への重点化」という方針に基づいて設立されました。現在も作曲家として精力的に活動するヴォルフガング・リーム教授が所長を務めています。音楽情報学スタジオ（Studio für Musikinformatik）と現代音楽アンサンブル（Ensemble für neue Musik）を擁し、先端的音楽の研究と演奏に取り組んでいます。
音楽演劇研修所 (Institut für MusikTheater - Opernschule, IMT): レナーテ・アッカーマン教授のオペラマスタークラスを発展させたもので、マルシュタール校舎に専用施設を持ち、オペラ歌手の育成に力を入れています。シュヴェツィンゲン音楽祭やルートヴィヒスブルク音楽祭との提携公演、バーデン州立歌劇場との共同によるオペラスタジオ運営など、実践的な教育を行っています。
音楽学・音楽情報学研修所 (Institut für Musikwissenschaft/Musikinformatik)
古楽スタジオ (Studio für Alte Musik)
歌曲クラス (Liedklasse): 1992年に設立され、世界的に著名な白井光子教授とハルトムート・ヘル教授（後に学長）によるドイツ歌曲の指導が中心でした。2006年からは、フランス・パリ国立高等音楽・舞踊学校より招かれたアンヌ・ル・ボゼック教授らによるフランス歌曲の教育も導入されており、ドイツの音楽大学としては珍しい取り組みとなっています。

学習課程

ヨーロッパにおける高等教育標準化のためのボロニア宣言に基づき、2006年10月の入学者以降、作曲科と教育音楽を除く学科で学士・修士課程の新制度が適用されています。ゾリステンクラッセ（州立演奏家資格）課程は旧制度のまま存続しています。現在は新旧両制度の学生が在籍しています。

2007年4月からは、半年ごと（1ゼメスター）に600ユーロ（補足課程Ergänzungsstudiumは900ユーロ）の学費納入が必要となりました。

日本で4年制大学を卒業した場合、原則として正規学生としては修士課程またはゾリステンクラッセからの入学が認められます（作曲・教育音楽科は例外）。

提供される主な課程と専攻分野

ディプロム課程（5年）: 作曲
学士課程（4年）: ピアノ、オルガン、ギター、リコーダー、フルート、オーボエ、クラリネット/サクソフォン、ファゴット、トランペット、トロンボーン/テナーホルン、ホルン、チューバ、打楽器、ハープ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、声楽、オペラ、オーケストラ指揮、合唱指揮、音楽理論、音楽学/音楽情報学、放送・マルチメディア音楽ジャーナリズム
修士課程（2年）: 学士課程の多くの専攻に加え、歌曲クラス（声楽、ピアノ伴奏）、古楽器伴奏、音楽学/音楽情報学、放送・マルチメディア音楽ジャーナリズムなどが提供されています。
ゾリステンクラッセ: 器楽、声楽、作曲、歌曲伴奏、室内楽など、高度な演奏・創作能力を追求する最上位課程です。
補足課程（Ergänzungsstudiengänge）: 室内楽、歌曲伴奏、バロック楽器など。
* ギムナジウム教員課程（Künstlerisches Lehramt an Gymnasien）: 学校音楽（Schulmusik）。

また、正規課程とは別に、さらなる研鑽を積みたい学生のためにコンタクトシュトゥディウム（Kontaktstudium）が開設されており、夏季（1600ユーロ）と冬季（2000ユーロ）に受講可能です。器楽専攻、声楽、オペラ、歌曲伴奏、指揮、作曲、ピアノ・弦楽器・管楽器室内楽などが含まれます。

多くの日本人音楽家が本学で学び、卒業・修了しています。

外部の活動として、独自のラジオ局「LernRadio」を運営していることも特筆されます。

（注：記載内容は変更される可能性があります）

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