カール・タウジヒ

カール・タウジヒ：早逝の天才ピアニスト

カール・タウジヒ（Carl Tausig, 1841年11月4日 - 1871年7月17日）は、19世紀に活躍したポーランド出身のピアニスト、作曲家、編曲家です。卓越した演奏技術と音楽性で、同時代の音楽家たちに大きな影響を与えました。ポーランド語ではカロル・タウシク（Karol Tausig）と表記されます。

生涯

タウジヒはワルシャワでユダヤ系の家庭に生まれました。幼い頃から音楽の才能を発揮し、父アロイス（Aloys Tausig, 1820-1885）からピアノの手ほどきを受けました。14歳の時、フランツ・リストをヴァイマルに訪ね、その才能を認められて師事することになります。その後、リストの演奏旅行に同行し、ピアニストとしての研鑽を積みました。

リストに師事した後、タウジヒはドイツに定住し、1865年にベルリンでピアノ教室を開設します。しかし、教室はすぐに閉鎖し、ヨーロッパ各地で演奏活動を行うようになりました。その模範的な演奏技巧は広く知られ、多くの聴衆を魅了しました。

しかし、タウジヒの活躍は長くは続きませんでした。29歳の若さでライプツィヒにて腸チフスにより亡くなりました。その早すぎる死は、音楽界に大きな衝撃を与えました。

音楽的功績

タウジヒは作曲家としては、作品を多く残していません。しかし、ピアニスト、編曲家として、数多くの功績を残しています。

ピアノ編曲

タウジヒは、様々な作曲家の作品をピアノ曲に編曲しました。中でも有名なのは、バッハの《トッカータとフーガ ニ短調》BWV565の編曲です。この編曲は、原曲の壮大さをピアノ一台で見事に表現しており、現在でも多くのピアニストによって演奏されています。

また、リヒャルト・ワーグナーの楽劇からの編曲も手がけています。《ワルキューレ》より「ワルキューレの騎行」、《トリスタンとイゾルデ》より「イゾルデの愛の死」などの編曲は、ワーグナーの音楽をピアノで演奏するための重要なレパートリーとなっています。

ショパンのピアノ協奏曲第1番の改訂

タウジヒは、ショパンの『ピアノ協奏曲第1番』の改訂も行いました。しかし、ピアノ・パートのみならず、曲自体にも大幅な変更を加えたため、この版が普及することはありませんでした。

ブラームスとの親交

ブラームスは、リストに対して必ずしも好意的な感情を抱いていませんでしたが、タウジヒの才能は高く評価していました。タウジヒの卓越した演奏技巧を念頭に置いて、2巻からなる《パガニーニの主題による変奏曲》（パガニーニ練習曲）を作曲したことからも、ブラームスがタウジヒに寄せていた信頼の厚さがうかがえます。

作品一覧

バラード『幽霊船 (Das Geisterschiff)』
2つの演奏会用練習曲
10の前奏曲
ハンガリーのジプシーの歌

まとめ

カール・タウジヒは、短い生涯の中で、ピアニスト、作曲家、編曲家として目覚ましい活躍を見せました。その卓越した演奏技術と音楽性は、同時代の音楽家たちに大きな影響を与え、現在でも多くの人々に感銘を与え続けています。

カール・タウジヒの楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト

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