コントラバス協奏曲
コントラバス協奏曲とは、低音弦楽器であるコントラバスをソリストとしてフィーチャーし、オーケストラと共に演奏される楽曲形式です。他の楽器の協奏曲と比較すると、そのレパートリーは非常に限られており、音楽史全体を通じても数は極めて少ないのが現状です。
コントラバスが独奏楽器として用いられる機会はありますが、特に協奏曲という形式においては、バロック時代から現代に至るまで、その作品数は突出して少数派です。例えば、当時著名なコントラバス奏者であったドラゴネッティはベートーヴェンと親交がありましたが、ベートーヴェンによるコントラバス協奏曲は残されていません。ロマン派の時代に入っても状況は変わらず、このジャンルが音楽シーンに定着することはありませんでした。近代において、スカルコッタスのような一部の作曲家が作品を手掛ける程度に留まりました。コントラバス協奏曲に改めて光が当たるようになったのは、フェルディナンド・グリッロをはじめとする現代の名手たちが登場してからのことですが、それでもなお、作品の数は他の主要楽器の協奏曲に比べると大きく下回っています。
コントラバスは、他の弦楽器と同様に、音響学的に理想とされるサイズよりも小型に作られています。協奏曲の独奏楽器として求められる十分な音量を出すことは可能ですが、その音域が非常に低いため、聴衆にとっては音が聞き取りにくいという課題があります。しかしながら、コントラバスは独奏楽器として単に旋律を奏でるだけでなく、その最低音域におけるパッセージが音響的に最も外側の声部となるため、非常に目立ちやすいという利点を持っています。これは、中音域に位置することで他の楽器に埋もれてしまいがちなチェロやヴィオラと比較した場合の優位性と言えます。
一方、コントラバスが得意とする低音域は、流麗な旋律表現にはあまり適していません。そのため、独奏曲では楽器の最高の音域を用いて演奏されることがしばしばあります。しかし、高い音域であってもコントラバスの音はオーケストラの響きに埋もれやすいため、作曲家は様々な工夫を凝らしています。例えば、オーケストラの編成を薄くしたり、各パートが対等に絡み合うポリフォニックな書法を採用したり、あるいはオペラにおけるバスアリアのように、独奏パートとオーケストラが掛け合いを展開するような手法が取られます。これらの工夫は、バスアリアにおける作曲技術と類似しています。このような高音域での演奏は、楽器の構造上、比較的難しい技術を要するため、コントラバスの初心者が取り組むのには適していません。
コントラバスの独特の音色は、特に前期古典派の時代において、ヴァイオリンやチェロほどではないにしても、ヴィオラよりは音響的な特性から好まれた時期があり、この時期には無視できない重要な作品がいくつか書かれています。楽器の弦の張力が高いため、指を速く動かすことは困難ですが、人工ハーモニクス（倍音）を効果的に用いることで、高速な音程の跳躍が可能となります。また、弦が長く、指を押さえるポジション間の距離が離れているため、楽曲の調を的確に選択することが演奏上重要となります。
コントラバス協奏曲の有名な作品としては、19世紀のイタリアの作曲家・コントラバス奏者であるジョヴァンニ・ボッテジーニの作品が挙げられます。彼の作品をはじめとする一部の楽曲では、音量を増大させ、よりクリアな音色を得るために、楽器全体の調弦を通常より半音あるいは全音高くすることがあります。この特殊な調弦法は「ソロチューニング」と呼ばれています。
近年では、標準的な4弦に加えて低音弦を追加した5弦のコントラバスを指定する作曲家も現れています。現代の楽器製作技術の進歩により、5弦コントラバスで最低音をB♭（B-E-A-D-G）やE♭（E-A-D-G-C）とすることが可能となり、これにより従来のソロチューニングを用いる必要性が薄れてきています。
コントラバス協奏曲の分野に貢献した主な作曲家には、ディッタースドルフ（2曲）、シュペルガー（18曲）、ヴァンハル、フランツ・アントン・ホフマイスター（2曲）といった古典派の作曲家たちがいます。19世紀にはドメニコ・ドラゴネッティ（8曲）や前述のジョヴァンニ・ボッテジーニ（2曲、他にGrand Concert 1曲）が重要な作品を残しました。20世紀以降では、セルゲイ・クーセヴィツキー、ニコラオス・スカルコッタス、エドゥアルド・トゥビン、ラーシュ・イーリャネ・ラーション（コンチェルティーノ）、エッラ＝スィルッキ・ラウタヴァーラ（「黄昏の天使」）、ジャン・フランセ、ニーノ・ロータ（ディヴェルティメント・コンチェルタンテ）、エンニオ・モリコーネ、日本の大澤壽人や久石譲などが作品を書いています。
また、コントラバス単独ではなく、他の楽器と共にフィーチャーされる協奏曲も存在します。例えば、ジャン・ド・サント＝コロンブは2台のバス・ヴィオール（コントラバスの先祖にあたる楽器）のための協奏曲を多数作曲しました。ディッタースドルフにはヴィオラとコントラバスのための協奏曲、ボッテジーニには2台のコントラバスのための協奏曲、ゲオルク・フィリップ・テレマンにはフルート、シャリモー、オーボエ、そして2台のコントラバスのための協奏曲といった作品があり、コントラバスを含むアンサンブルによる協奏的作品も歴史の中に位置づけられています。
コントラバスが独奏楽器として用いられる機会はありますが、特に協奏曲という形式においては、バロック時代から現代に至るまで、その作品数は突出して少数派です。例えば、当時著名なコントラバス奏者であったドラゴネッティはベートーヴェンと親交がありましたが、ベートーヴェンによるコントラバス協奏曲は残されていません。ロマン派の時代に入っても状況は変わらず、このジャンルが音楽シーンに定着することはありませんでした。近代において、スカルコッタスのような一部の作曲家が作品を手掛ける程度に留まりました。コントラバス協奏曲に改めて光が当たるようになったのは、フェルディナンド・グリッロをはじめとする現代の名手たちが登場してからのことですが、それでもなお、作品の数は他の主要楽器の協奏曲に比べると大きく下回っています。
コントラバスは、他の弦楽器と同様に、音響学的に理想とされるサイズよりも小型に作られています。協奏曲の独奏楽器として求められる十分な音量を出すことは可能ですが、その音域が非常に低いため、聴衆にとっては音が聞き取りにくいという課題があります。しかしながら、コントラバスは独奏楽器として単に旋律を奏でるだけでなく、その最低音域におけるパッセージが音響的に最も外側の声部となるため、非常に目立ちやすいという利点を持っています。これは、中音域に位置することで他の楽器に埋もれてしまいがちなチェロやヴィオラと比較した場合の優位性と言えます。
一方、コントラバスが得意とする低音域は、流麗な旋律表現にはあまり適していません。そのため、独奏曲では楽器の最高の音域を用いて演奏されることがしばしばあります。しかし、高い音域であってもコントラバスの音はオーケストラの響きに埋もれやすいため、作曲家は様々な工夫を凝らしています。例えば、オーケストラの編成を薄くしたり、各パートが対等に絡み合うポリフォニックな書法を採用したり、あるいはオペラにおけるバスアリアのように、独奏パートとオーケストラが掛け合いを展開するような手法が取られます。これらの工夫は、バスアリアにおける作曲技術と類似しています。このような高音域での演奏は、楽器の構造上、比較的難しい技術を要するため、コントラバスの初心者が取り組むのには適していません。
コントラバスの独特の音色は、特に前期古典派の時代において、ヴァイオリンやチェロほどではないにしても、ヴィオラよりは音響的な特性から好まれた時期があり、この時期には無視できない重要な作品がいくつか書かれています。楽器の弦の張力が高いため、指を速く動かすことは困難ですが、人工ハーモニクス（倍音）を効果的に用いることで、高速な音程の跳躍が可能となります。また、弦が長く、指を押さえるポジション間の距離が離れているため、楽曲の調を的確に選択することが演奏上重要となります。
コントラバス協奏曲の有名な作品としては、19世紀のイタリアの作曲家・コントラバス奏者であるジョヴァンニ・ボッテジーニの作品が挙げられます。彼の作品をはじめとする一部の楽曲では、音量を増大させ、よりクリアな音色を得るために、楽器全体の調弦を通常より半音あるいは全音高くすることがあります。この特殊な調弦法は「ソロチューニング」と呼ばれています。
近年では、標準的な4弦に加えて低音弦を追加した5弦のコントラバスを指定する作曲家も現れています。現代の楽器製作技術の進歩により、5弦コントラバスで最低音をB♭（B-E-A-D-G）やE♭（E-A-D-G-C）とすることが可能となり、これにより従来のソロチューニングを用いる必要性が薄れてきています。
コントラバス協奏曲の分野に貢献した主な作曲家には、ディッタースドルフ（2曲）、シュペルガー（18曲）、ヴァンハル、フランツ・アントン・ホフマイスター（2曲）といった古典派の作曲家たちがいます。19世紀にはドメニコ・ドラゴネッティ（8曲）や前述のジョヴァンニ・ボッテジーニ（2曲、他にGrand Concert 1曲）が重要な作品を残しました。20世紀以降では、セルゲイ・クーセヴィツキー、ニコラオス・スカルコッタス、エドゥアルド・トゥビン、ラーシュ・イーリャネ・ラーション（コンチェルティーノ）、エッラ＝スィルッキ・ラウタヴァーラ（「黄昏の天使」）、ジャン・フランセ、ニーノ・ロータ（ディヴェルティメント・コンチェルタンテ）、エンニオ・モリコーネ、日本の大澤壽人や久石譲などが作品を書いています。
また、コントラバス単独ではなく、他の楽器と共にフィーチャーされる協奏曲も存在します。例えば、ジャン・ド・サント＝コロンブは2台のバス・ヴィオール（コントラバスの先祖にあたる楽器）のための協奏曲を多数作曲しました。ディッタースドルフにはヴィオラとコントラバスのための協奏曲、ボッテジーニには2台のコントラバスのための協奏曲、ゲオルク・フィリップ・テレマンにはフルート、シャリモー、オーボエ、そして2台のコントラバスのための協奏曲といった作品があり、コントラバスを含むアンサンブルによる協奏的作品も歴史の中に位置づけられています。
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