カール・ローザ

カール・ローザ：イギリス・オペラ界の先駆者

カール・アウグスト・ニコラス・ローザ（1842年3月22日 - 1889年4月30日）は、ドイツ出身のオペラ興行主であり、イギリスにおけるオペラ普及の立役者として知られています。彼が創設したカール・ローザ・オペラ・カンパニーは、英語によるオペラ上演とイギリス人作曲家の作品を積極的に取り上げ、イギリスのオペラ界に大きな影響を与えました。

生い立ちと音楽への目覚め

ハンブルクで実業家の父と母の間に生まれたローザは、幼い頃から音楽の才能を発揮しました。12歳でヴァイオリン奏者としてスコットランドを巡業するなど、神童ぶりを発揮。その後、ライプツィヒ音楽院で音楽を学び、生涯の友人となるアーサー・サリヴァンと出会います。パリでの研鑽を経て、1863年にはハンブルクのコンサートマスターに就任し、指揮者としても活動しました。

アメリカでの出会いとオペラへの情熱

1866年、ローザはアメリカへ渡り、オペラ歌手ユーフロジーヌ・パレパと出会います。1867年に二人は結婚し、パレパは「マダム・パレパ＝ローザ」として知られるようになりました。1869年、シカゴの興行主とともに「パレパ・ローザ・イングリッシュ・オペラ・カンパニー」を設立。パレパを主役スター、ローザが指揮者を務め、アメリカ各地でオペラを上演しました。この歌劇団は、イタリア・オペラを英語で上演することで、オペラをアメリカの聴衆に身近なものとし、オペラ普及に貢献しました。

カール・ローザ・オペラ・カンパニーの設立と成功

1872年、ローザ夫妻はイギリスへ帰国。ローザは、名前の綴りをローゼ (Rose) からローザ (Rosa) に変更しました。1873年、ローザは妻の名前を冠した「カール・ローザ・オペラ・カンパニー」を設立し、マンチェスターで旗揚げ公演を行いました。ローザは一貫して英語によるオペラ上演を重視し、イギリス各地を巡業することで、オペラをより多くの人々に届けました。

ローザの歌劇団は、W・S・ギルバートに喜歌劇の制作を依頼するなど、新たな才能の発掘にも尽力しました。妻の死後、ローザは王立音楽アカデミーに奨学基金を寄付し、後進の育成にも貢献しています。

1875年、ローザの歌劇団はロンドンで最初のシーズンを迎え、大成功を収めました。その後も、地方巡業とロンドンでの公演を両立させ、人気を博しました。最盛期には3組の巡業団を編成し、各地でオペラを上演しました。1880年、ジョージ・グローヴはローザの歌劇団を「恒久的なイングランドの体制の一部になり得る十分な可能性を持っている」と評価しました。1892年には、ヴィクトリア女王の御前で『連隊の娘』を上演するという栄誉に浴しました。

イギリス・オペラ界への貢献と遺産

ローザは、数多くの重要なオペラ作品をイギリスへ紹介し、150作品以上のオペラを上演しました。彼の歌劇団には、ミニー・ホーク、ジョセフ・マース、ジュリア・ウォーウィックなど、著名な歌手が多数参加しました。また、フレデリック・ハイメン・コーウェン、アーサー・ゴーリング・トーマス、アレグザンダー・マッケンジー、チャールズ・ヴィリアーズ・スタンフォードといったイギリス人作曲家の新作を積極的に支援し、イギリス・オペラの発展に大きく貢献しました。

ローザは1889年4月30日にパリで急逝しましたが、彼の遺志はカール・ローザ・オペラ・カンパニーによって受け継がれ、1960年まで存続しました。ローザの死後も、彼の歌劇団はイングランドにおけるオペラの普及に大きく貢献し、国内の作曲家の創作を応援し、数多くの歌手を育てて国際的な舞台へと送り出しました。

ローザの葬儀には、サリヴァン、スタンフォード、マッケンジーといった著名な音楽家たちが参列し、彼の音楽界における地位を象徴しました。批評家ハーマン・クラインは、ローザについて「芸術的観点からみて彼の業績は大成功に次ぐ大成功であった」と述べています。

カール・ローザは、英語オペラの興行を成功させ、イギリスのオペラ界に多大な貢献をした人物として、その名を歴史に刻んでいます。彼の遺産は、現代においても新しい歌劇団によって受け継がれ、オペラの魅力を伝え続けています。

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