カール自走臼砲

カール自走臼砲

カール自走臼砲（Mörser Karl、通称「カール」）は、ドイツが第二次世界大戦中に開発した特異な自走砲です。1937年に開発が始まり、60cmまたは54cmの直径を持つ巨大な砲弾を装備していました。本砲の名称は、開発に関与したカール・ベッカー将軍に由来します。

開発経緯

カール自走臼砲は、フランスのマジノ要塞線を攻略するために計画されました。1936年にはまず初期計画が立ち上がり、その後1940年から1941年にかけて6輌が製造されました。自走砲でありながら、その重量は120トンを超え、時速10キロメートル程度の速度しか出せないため、長距離移動には専用の貨車や改造されたIV号戦車を用いる必要がありました。このため、実戦においては制約が多い軍備であったと言えます。

特徴と運用

カール自走臼砲は、ダイムラー・ベンツ製の580馬力〜590馬力を発揮するエンジンを用いて自力走行が可能でした。しかし、機動性には限界があり、戦闘に投入する際は圧倒的な優位を要求されました。砲塔は非対称のデザインで、砲身は最大70度の仰角を持ち、射撃は主に55度以上で行われました。このため、弾薬の装填の際には、毎回砲を水平に戻す必要があり、発射間隔は約10分を要しました。また、射撃精度を確保するためには、射撃陣地の整地が必要で、移動後の迅速な移動が必須とされました。

戦歴

実戦では、カール自走臼砲は1942年のセヴァストポリ包囲戦などでその能力を発揮し、1944年にはワルシャワ蜂起時にも使用されました。しかし、使用には大きなリスクが伴い、自軍が圧倒的に優勢な状況でなければ投入できない兵器でした。1945年には、連合軍の接近により多くの車両が放棄・処分され、最終的には部隊が解散する形で戦歴に幕を下ろしました。

現存車両

戦後、アメリカ軍やソビエト軍に捕獲されたカール自走臼砲の一部は試験や展示が行われました。しかし、現在ではその多くが現存せず、特にアメリカにおいてはスクラップ処分されたと考えられています。ソビエトでの研究過程での記録も混乱があり、現在は特定の車両名を冠した展示物が存在しています。

影響と文化

カール自走臼砲は、戦争の影響を受けた多くの作品にも登場します。アニメ「ガールズ＆パンツァー」や「新世紀エヴァンゲリオン」などにおいてもモチーフとして採用され、その存在感は軍事兵器の象徴ともなっています。また、模型としても多くの人々に支持されており、様々なスケールで製品化が進められています。

このように、カール自走臼砲はその特異な設計と強力な火力、運用にまつわる多数のエピソードから、戦争史上において特異な存在として記憶され続けています。

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