ガイヤルド

ガイヤルド（仏語：gaillarde、伊語：gagliarda、英語：galliard）は、ルネサンス時代にヨーロッパ各地で広く親しまれた舞曲の一つです。その特徴は、急速なテンポの3拍子で、跳ねるように踊る点にあります。しばしば、緩やかなテンポで踏むように踊るパヴァーヌという舞曲と組み合わせて演奏、舞踊されました。これは、速度の異なる二つの舞曲を組み合わせることで、音楽と舞踊に変化とコントラストをもたらすためと考えられます。

ガイヤルドは元々、大衆的な舞曲として広まりましたが、15世紀末までにはヨーロッパの多くの宮廷に取り入れられ、貴族や王侯の間でもてはやされるようになりました。16世紀に著された舞踏指南書には、ガイヤルドの多様なバリエーションが記録されており、当時の舞踊家たちがこの舞曲に様々な工夫を凝らしていたことが窺えます。

ガイヤルドは、単独で踊ることも、パートナーと二人で踊ることも可能な舞曲です。しかし、宮廷においては常にパートナーと踊るものとされ、社交の場における重要な要素となっていました。男女がペアとなり、優雅な身のこなしで音楽に合わせて踊る姿は、当時の宮廷文化を象徴するものであったと言えるでしょう。

イングランドのエリザベス1世は、ガイヤルドをこよなく愛した踊り手として知られています。彼女自身が積極的にガイヤルドを踊ることで、宮廷におけるガイヤルドの人気をさらに高めたと考えられます。また、同女王の寵臣であったエセックス伯爵のテクストによるジョン・ダウランドのリュート歌曲《彼女は許してくれようか Can shee excuse》には、ガイヤルドのリズムが用いられています。この楽曲は、ガイヤルドのリズムに乗せて、恋の駆け引きや心の機微を表現したもので、当時の人々の間で広く愛されました。

このように、ガイヤルドはルネサンス期のヨーロッパにおいて、音楽、舞踊、そして社交文化において重要な役割を果たした舞曲でした。その軽快なリズムと優雅な身のこなしは、当時の人々の心を捉え、様々な芸術作品にも影響を与えたと言えるでしょう。

もう一度検索