ガガウズ自治区

ガガウズ自治区：歴史と文化が交差するモルドバの自治地域

ガガウズ自治区（ガガウズ語: Gagauz Yeri、ルーマニア語: Găgăuzia、ロシア語: Гагаýзия）は、モルドバ共和国の南部に位置するユニークな自治地域です。この地域は、テュルク系のガガウズ人が多数を占め、独自の言語、文化、そして歴史を有しています。首都はコムラト。

名称

自治区の正式名称は、それぞれの公用語で以下の通りです。

ガガウズ語: Avtonom Territorial Bölümlüü Gagauz Yeri
ルーマニア語: Unitatea Teritorială Autonomă Găgăuzia
ロシア語: Автономное территориальное образование Гагаузия

日本語では一般的に「ガガウズ自治区」と訳されますが、「ガガウズ・イェリ自治共和国」と呼ばれることもあります。ガガウズ・イェリはガガウズ語で「ガガウズ人の場所」を意味します。

歴史

ガガウズ自治区の歴史は、モルドバの歴史と深く結びついています。中世以降、モルダヴィア公国、オスマン帝国、ロシア帝国と支配者が変遷しました。

20世紀初頭、ロシア帝国で革命が起こると、コムラトでアンドレイ・ガラツァンによる蜂起が発生し、1906年に短命なコムラト共和国が建国されました。その後、ルーマニア王国を経て、第二次世界大戦中にソビエト連邦に占領され、モルダビア・ソビエト社会主義共和国（モルダビアSSR）が成立しました。

ソ連時代、ガガウズ人の民族自治区画は設置されず、1980年代後半のペレストロイカの時代に民族意識が高揚しました。1988年には「ガガウズ・ハルクィ」という組織が結成され、自治を求める運動が活発化しました。1990年にはガガウズ共和国としてソ連からの独立を宣言しましたが、モルドバ政府との交渉の結果、1994年にモルドバ共和国内の自治地域として大幅な自治権が付与されることとなりました。

政治と外交

ガガウズ自治区は、独自の基本法を持ち、ガガウズ語の使用が認められています。しかし、警察権や租税権はモルドバ政府が保持しています。自治区の長はバシュカンと呼ばれ、元首としての役割を果たします。

外交面では、テュルク文化国際機関（TÜRKSOY）にオブザーバーとして加盟するなど、独自の動きを見せています。また、アブハジアや南オセチアといった、国際的に承認されていない国家を承認する姿勢を示し、モルドバ政府との間に見解の相違が生じています。

地方行政

ガガウズ自治区は、コムラト、チャドゥル＝ルンガ、ブルカネシュティの3つの地区に分かれています。これらの地区は、それぞれ都市やコムーナを含み、地域住民の生活を支えています。

近年の動向

近年、ガガウズ自治区では、モルドバの欧州連合（EU）加盟に対する住民の抵抗感が強く、ロシアとの関係を重視する傾向があります。2014年の住民投票では、大多数がEUよりもロシア・CISへの緊密な関係を望み、モルドバがEUに加盟する場合はガガウズが独立すべきだと回答しました。また、親ロシア派の元首が選出されるなど、モルドバ政府との間に緊張が生じています。

関連項目

コムラト国立大学
サッカーガガウズ代表
ガガウズ世界会議
* 沿ドニエストル共和国

ガガウズ自治区は、その地理的な位置、歴史的背景、そして民族的な多様性から、モルドバ国内でも特異な存在です。今後の動向が注目されます。

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