ガスパール・カサド

ガスパール・カサドー・イ・モレウ（1897年9月30日 - 1966年12月24日）は、20世紀前半を代表するスペインのチェリストであり、作曲家としてもその名を残しました。日本では「カサド」という愛称で親しまれています。

経歴

バルセロナの音楽家の家庭に生まれたカサドーは、7歳でチェロを始め、9歳でリサイタルを開催。その才能は、聴衆の中にいたパブロ・カザルスに認められ、カザルスの薫陶を受けることになりました。バルセロナ市からの奨学金を得て、カザルスの下で音楽修行を続けることができた彼は、第一次世界大戦中にプロの演奏家としての活動を開始。ヨーロッパやアメリカで演奏活動や録音活動を展開しました。1959年には、日本人ピアニストの原智恵子と結婚しました。

音楽について

カサドーの楽器に対する姿勢は伝統的なものではありませんでしたが、彼の残した《組曲》や《ソナタ》は、古典的な形式美とカタルーニャ地方の独特な情緒が融合した作品として、チェリストの間で広く知られています。他にもチェロ協奏曲、弦楽四重奏曲、ピアノ三重奏曲などの大作を作曲しましたが、なかでもチェロとピアノのための小品集《愛の言葉 Requiebros》は、彼の代表作として有名です。

また、カサドーは、シューベルトのアルペジオーネ・ソナタを編曲した「アルペジオーネ協奏曲」や、ドビュッシーの「月の光」をオーケストレーションするなど、貴重な楽譜を遺しました。これらの楽譜は、1990年に妻である智恵子の縁で玉川大学に寄贈され、2016年には同大学の教育博物館でコレクション目録として公開・データベース化されました。さらに、智恵子の没後、未整理だった遺品の中から、バッハの「結婚カンタータBWV216」の手稿譜（バッハの弟子マイスナーによる筆写）が発見され、国立音楽大学の礒山雅教授らによって確認されました。この楽譜は、国立音楽大学からファクシミリ版が出版される予定です。

カサドーは、チェリスト、作曲家としてだけでなく、後進の指導や若い才能の発掘にも力を注ぎ、音楽界に多大な貢献をしました。

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