ガス会社前停留場

ガス会社前停留場

概要

ガス会社前停留場（ガスがいしゃまえていりゅうじょう）は、かつて北海道函館市万代町に位置していた函館市交通局（現在の函館市企業局交通部が運営する函館市電）の電停でした。大正末期に万年橋という名称で開業して以来、数度の改称と移転を経てその場所にあった停留所ですが、1993年（平成5年）4月1日に実施された函館市交通事業健全化計画に基づく路線再編により、惜しまれつつ廃止となりました。

歴史

停留所の起源は古く、1925年（大正14年）10月1日に函館市電の本線が延伸された際、終点として開業した万年橋停留場（まんねんばしていりゅうじゅう）に遡ります。その後、正確な時期は判明していませんが、停留所の名称は万代町停留場（ばんだいちょうていりゅうじょう）、さらに亀田停留場（かめだていりゅうじょう）へと変更されました。名称変更と同時期かその間に、一度移転も行われたと記録されています。

昭和に入ると、函館市電の路線網はさらに拡充されます。1950年（昭和25年）9月14日には、この停留場から分岐する形で宮前線が開業し、亀田と宮前町を結ぶ新たなルートが誕生しました。この頃、1951年（昭和26年）から1954年（昭和29年）にかけての時期に、停留場名は最終的にガス会社前停留場へと改称されたとされています。

1954年（昭和29年）11月20日には、本線が当停留場からさらに鉄道工場前まで延伸され、終点としての機能は失われました。しかし、函館市電の重要な結節点の一つとしての役割は継続します。

時代の変化とともに、市電の運営環境は厳しさを増し、路線の整理・統合が進められます。1978年（昭和53年）11月1日には、本線の一部区間である当停留場から五稜郭駅前までの区間が廃止されました。そして、1991年（平成3年）に函館市交通事業健全化計画が策定されると、さらなる路線網の見直しが図られます。この計画に基づき、1993年（平成5年）4月1日をもって、本線の函館駅前からの区間（函館駅前 - 当停留場間）と、当停留場を起点としていた宮前線の全線が廃止されることとなり、ガス会社前停留場もその歴史を終えました。

構造

廃止されるまで、ガス会社前停留場は2面2線の相対式ホームを持つ構造でした。乗客はそれぞれのホームで進行方向別の電車に乗降する形式でした。

周辺環境

停留所が存在していた場所は、複数の主要道路が交差する交通の要衝でした。具体的には、国道5号、国道228号、そして北海道道571号五稜郭公園線といった幹線道路に近接していました。周辺には、函館万代郵便局や、かつて存在した北洋銀行万代町支店（2021年に五稜郭公園支店へ移転後、建物は解体）といった施設がありました。また、停留所名の由来となった北海道ガス函館支社もこの付近に位置しています。地理的には、函館市の主要な河川の一つである亀田川の河口付近にあたる場所でした。

かつての隣接停留場

ガス会社前停留場が稼働していた期間において、接続していた路線や時期によって隣接する停留場は異なりました。

本線（1978年11月1日廃止区間）

亀田町停留場 ← ガス会社前停留場

本線（1993年4月1日廃止区間）

万代町停留場 ← ガス会社前停留場

宮前線（1993年4月1日廃止）

* ガス会社前停留場 → 宮前町停留場

ガス会社前停留場は、函館市電の歴史の中で、開業時の終点から始まり、度重なる名称変更や路線の延伸・廃止を経て、最終的に市電網の縮小とともに姿を消した、記憶に残る停留所の一つです。

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