亀田川

亀田川

亀田川は、北海道函館市を水源とし、津軽海峡へと注ぐ二級河川です。その流れは、函館の歴史と深く結びついており、治水、利水、そして環境保護の観点から、重要な役割を果たしてきました。

地理

亀田川の源流は、函館市北部の袴腰山にあります。そこから黒井川、赤井川という二つの流れが南へと進み、合流して本流となります。途中、新中野ダム（なかの湖）へと流入し、公立はこだて未来大学の東側を通過。その後、笹流川と合流し、神山付近で緩やかな流れとなり扇状地を形成します。かつては、この地で乱流を繰り返し、神山、中道、鍛治に肥沃な土地をもたらしました。五稜郭付近からは、北海道道347号赤川函館線に沿って南下し、函館段丘の西側を通って、大森浜から津軽海峡へと注ぎ込みます。

名称の由来

亀田川は、かつては大川と呼ばれていました。上流の赤川は、古くは「ワッカペツ」（飲み水に適した川）と呼ばれていました。亀田という地名の由来については、亀田市の項を参照してください。

河道・治水・水質改善

亀田川は、かつては「暴れ川」として知られ、約1000年前までは、主に山沿いを流れ、途中、小島川、陣川、七五郎沢川などを合わせて鮫川に合流していました。しかし、約1000年前から川筋を変え、亀田村へ流れ込み、亀田八幡宮の森を通って函館港（亀田湊）に注ぐようになりました。その後も、出水時には現在の川筋に加え、神山稲荷神社の下方にも分かれて流れていた時期がありました。

1702年から1703年にかけての大洪水では、河口付近が土砂で埋まり、交易船の利用が困難になりました。この出来事が、亀田湊の衰退と箱館湊の発展を促す一因となりました。1859年には、僧侶の堀川乗経を中心に、白鳥橋辺りから横堀（現在の銀座通り）へ分流させる工事が行われました。これにより、元の亀田川は古亀田川、新しい川は新亀田川（堀川、願乗寺川とも呼ばれる）と呼ばれるようになりました。この分流は水運にも利用され、両岸の発展を促しましたが、土砂による港の埋没や伝染病の発生といった問題も引き起こしました。

1888年には、オランダの土木技師ローウェンホルスト・ムルデルの提案と設計により、大森浜への転注が行われ、亀田川掘割（後の新川）が誕生しました。しかし、昭和9年の函館大火では、この掘割が避難の妨げとなり、悲劇を引き起こしました。1984年には、洪水対策と下流の水質汚濁問題解決のため、北海道の「亀田川総合開発事業」により、新中野ダムが完成しました。

利水

箱館亀田五稜郭御上水と製氷

亀田川からは、五稜郭の濠や箱館奉行所への給水のため、上水が引かれていました。特に、五稜郭の濠には常に新しい水が流れ込んでいたため、冬には中川嘉兵衛がこの水から氷を切り出し、「函館氷」として販売しました。この函館氷は、アメリカ産の輸入氷「ボストン氷」よりも品質、価格の両面で優れていたため、京浜市場で人気を博しました。

亀田村上水

亀田村では、願乗寺川から古亀田川尻まで、檜の樋を地下に埋設して、飲料水を供給していました。この上水は、井上喜三郎によって作られ、亀田村の住民に利用されました。後に、鉄筋コンクリート管に交換され、「亀田雑用水道」と呼ばれるようになりました。

代島剛平による上水計画

代島剛平は、箱館亀田五稜郭御上水に倣い、函館方面への上水建設計画を立てましたが、費用の問題から実現には至りませんでした。

近代的水道の水源として

函館は、1889年に全国で2番目に近代的な水道を導入しました。亀田川水系の笹流川には、1923年に日本初のバットレスダムである笹流ダムが建設され、函館市の上水道を支えました。また、本流の上流には、1960年に中野ダムが建設され、後に新中野ダムとして改築され、水源として活用されています。

防火用水の水源

亀田川には、大正時代初期に堰が設けられ、防火用水が引かれました。この場所は「スッポンカッポン」と呼ばれていました。この名前の由来は諸説ありますが、ぬかるんだ場所を歩く際に足が泥に取られる様子や、堰を開閉する音などが語られています。

灌漑用水

亀田川からは、農業用の灌漑用水路も設けられていました。赤川第一幹線から赤川第五幹線までの5つのルートが存在しました。

利水権

亀田川の水利については、亀田村が灌漑用水として利用していましたが、1889年に函館区が上水道のために取水を開始しました。その後、亀田村は灌漑用水の権利を確保し、1960年には函館市との間で水利権に関する協定が結ばれました。

環境保護

亀田川水源の森

亀田川上流部は、「亀田川水源の森」として、林野庁が選定した「水源の森百選」の一つに選ばれています。この森は、水源涵養機能が高く、函館市による積極的な森林整備によって、環境保全が進められています。笹流ダム、新中野ダムの前広場は公園として整備されており、市民の憩いの場となっています。夏には「水と緑の祭典」が開催され、森林やダムの重要性がPRされています。

環境保護活動

「亀田川をきれいにする市民の会」による清掃活動によって、川のゴミが取り除かれ、サケの遡上が確認されるようになりました。現在は、啓蒙活動にも力を入れており、これらの活動が評価され、北海道社会貢献賞を受賞しました。

源流・支流

黒井川：清流で川魚が生息しています。
赤井川：白沼・赤沼からの湧水を集めていますが、微量の鉄分を含むため、川魚は生息していません。
雁皮川：イワナなどが生息し、下流は笹流ダムに繋がっています。
精進川：雁皮川の支流で、鉱泉の水が流れているため、魚が生息していません。
笹流川：精進川の支流です。

観測点

水位観測点：富岡
雨量観測点：新中野ダム、袴腰

見所

旧河口、古亀田川の面影は残っていません。
願乗寺川跡は現在の高砂通りとなっています。
笹流ダム：ダム湖百選に選定されているダム。秋には紅葉スポットとしても人気です。
新中野ダム：ダムの模型や親水公園が整備されています。

主な橋梁

新川区間

大森橋：国道278号の橋。函館大火で崩落しました。
高盛橋：函館大火で崩落しました。
新川橋：函館大火で崩落しました。
昭和橋：函館市電の橋。函館大火では崩落を免れました。
中の橋：旧亀田川橋。

旧亀田川区間

万年橋：1804年に架けられた橋。

亀田川区間

歓喜橋：北海道道100号の橋。

願乗寺川区間

函館山山麓の掘割と分流である願乗寺川。
恵比須橋
御蔵橋
願乗寺橋
下湯川橋
中の橋
柳橋
湯川橋
亀田橋

掘割区間

旭橋
観月橋
夕日橋
六ノ橋
元橋
四ノ橋
五ノ橋
三ノ橋
二ノ橋
永国橋：土方歳三が戦死した場所とも言われています。

参考文献

函館市史
函館市水道百年史
新編＝函館町物語
はこだて歴史散歩
函館散歩　続　まちは唄う
風雪の一世紀　函館水道創設事業史料
箱館はじめて物語
函館･道南大事典
史伝土方歳三
函館の大火　昭和九年の都市災害
神山三００年誌
赤川町誌
ある巡査の書簡から-土方歳三最期の足跡と碧血碑-
市史余話9「函館氷をめぐる人々」
開港場物語(38)「アイスクリーム 初販売米人がサロンで」
氷の歴史(3)―『天然氷の販売』
函館市史デジタル版

関連項目

笹流ダム
バットレスダム
函館港
ローウェンホルスト・ムルデル
かき氷
五稜郭

外部リンク

* 林野庁 亀田川水源の森

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