ガス機器

ガス機器とは

ガス機器とは、都市ガスやLPガスを燃料として、燃焼させることで熱エネルギーを得て利用する器具の総称です。一般家庭だけでなく、飲食店や工場など、様々な場所で利用されています。ガスコンロやガス給湯器のように生活に密着したものから、工業用ボイラーやガス乾燥機のような業務用のものまで、その種類は多岐にわたります。本稿では、これらのガス機器について、種類、機能、安全性、環境への影響まで詳細に解説します。

家庭用ガス機器

調理機器

家庭用として最も一般的なガス機器は、調理に使われるものです。

ガスコンロ

ガスコンロは、鍋やフライパンを加熱調理するための機器です。テーブルコンロ、キャビネットコンロ、ビルトインコンロの3種類が主流です。テーブルコンロは設置が容易で、キャビネットコンロは収納棚と一体化、ビルトインコンロはシステムキッチンに組み込まれています。近年では、安全性を高めるため、全口に過熱防止センサーや立ち消え安全装置が搭載されています。また、電磁調理器に対抗するため、天板に耐熱ガラスを用いたガラストップコンロも人気です。

ガス炊飯器

ガス炊飯器は、ガス火力を利用して米を炊く機器です。電気炊飯器と異なり、短時間で高温で炊き上げることができ、米のうまみを引き出すことができます。炊飯専用のシンプルなものから、保温機能やタイマー機能付きのもの、マイコン制御で炊き上がりを細かく設定できるものまで、様々な種類があります。

ガスオーブン

ガスオーブンは、ガス火力を利用して食材を焼く調理器具です。ローストビーフやピザ、ケーキやクッキーなど、幅広い料理に使えます。ガス高速オーブン（コンベック）は、ファンで熱風を循環させることで、庫内の温度ムラをなくし、均一な仕上がりが期待できます。また、ガス高速オーブンと電子レンジが一体化したコンビネーションレンジもあり、調理の幅を広げることができます。

温水機器

家庭で使用されるガス温水機器は、主に給湯器と風呂釜です。

瞬間式温水機器

必要な時に必要な量の湯を加熱するタイプの給湯器です。無駄な加熱をしないため、経済的です。小型湯沸器は、設置が容易ですが、換気が必要になります。また、不完全燃焼防止装置が作動した際は、インターロック機能により再点火には操作が必要になる機種もあります。給湯専用の給湯器に加え、追い焚き機能付きの風呂給湯器も一般的です。

貯湯式温水機器

あらかじめタンクにお湯を貯めておくタイプの給湯器です。瞬間式に比べて構造が単純ですが、民生用としてはあまり普及していません。

風呂給湯器

給湯機能に加え、浴槽の湯を沸かす機能を持つ給湯器です。自動湯張り機能が標準で、フルオートとオートの2種類があります。フルオートは水位が下がった際にも自動で足し湯をしますが、オートは最初の湯張りのみ自動です。設置フリータイプは、給湯器本体を浴槽から離れた場所に設置でき、隣接設置タイプは浴槽と給湯器が壁を挟んで設置されます。また、高温差湯式追焚付給湯器は、高温の湯を注入することで浴槽内の温度を上昇させます。

高効率給湯器（エコジョーズ）

従来の給湯器よりも熱効率を高めた給湯器で、排熱を再利用することで省エネを実現します。ただし、設置にはドレン排水が必要になるため、集合住宅などでは設置が難しい場合があります。しかし、ドレン水を追い焚き配管に流すことで排出できる機種も登場しています。

暖房機器

ガス暖房機器には、ガスストーブ、ガスファンヒーター、温水循環暖房機器などがあります。

ガスストーブ

ガスを燃焼させた熱を直接室内に放出する暖房器具です。構造が簡単で安価ですが、燃費はガスファンヒーターに劣ります。また、ガスコードによる接続が必要で、設置場所が限られます。近年では、カセットガスボンベを使用する小型のガスストーブも販売されています。

ガスファンヒーター

ガスを燃焼させた熱を温風として室内に放出する暖房器具です。ファンを稼働させるための電力が必要ですが、燃焼を自動調整する機能があり、燃費が良いです。排気方法には、ファンヒーターとFFファンヒーターがあります。

温水循環暖房機器 (TES)

ガスで不凍液を加熱し、それを循環させて暖房するシステムです。床暖房、パネルヒーター、温風機などがあります。室内の空気を汚さず、必要な場所だけを暖めることができます。

業務用ガス機器

厨房機器

飲食店などの厨房で使用されるガス機器は、調理の効率化と安全性を重視したものが多く、様々な種類があります。

ガスレンジ

鍋やフライパンを直火で加熱調理するための機器で、家庭用コンロと同様に、様々なバリエーションがあります。

スープレンジ

スープや出汁を長時間加熱するための専用レンジです。

中華レンジ

炒め物、スープ、茹で麺など、中華料理に必要な機能を一台にまとめたレンジです。

オーブン

大量の食材を加熱調理するためのオーブンで、家庭用よりも容量が大きくなっています。

スチームコンベクションレンジ

過熱水蒸気を利用して、煮る、蒸す、焼くなど、様々な調理が可能なレンジです。

焼物器（グリラー）

肉や魚を直火で焼くための器具で、上火式、下火式、両面式があります。

グリドル

鉄板を加熱して肉や魚を調理する器具で、平らなものと溝付きのものがあります。

チャーブロイラー

石を加熱して遠赤外線でステーキなどを焼くための器具です。

サラマンダー

高温の炎で食材の表面に焦げ目をつけるための器具です。

フライヤー

油を高温に熱して揚げ物を調理する器具で、様々なタイプがあります。

炊飯器

大量の米を炊くための炊飯器で、家庭用よりも容量が大きくなっています。自動炊飯器もあります。

回転釜

大量の食材を煮たり炒めたりするための釜です。

茹麺器

麺を茹でるための専用機器で、ラーメン釜、日本そば釜、スパゲッティ釜、うどん釜、冷凍麺釜などがあります。

餃子焼き機

餃子を焼くための専用機器で、給水と排水の機能が付いています。

蒸し器

蒸気で食材を加熱調理する機器で、木製やステンレス製があります。

パン焼き釜（デッキオーブン）

パンやクッキーなどを焼くための専用オーブンです。

ロースター

焼き肉店などで使用される調理器です。換気機能付きのものもあります。

酒燗器

大量の日本酒や中国酒を燗するための機器です。

ウォーマーテーブル

調理済みの食品を温かいまま保存するための機器です。

その他

食器洗浄機

ガスを熱源とする食器洗浄機もあります。

工業用燃焼機器

金属の圧延や溶解、陶磁器を焼く窯など、大量の熱を必要とする機器にもガスが利用されています。

新世代ガス機器

家庭用ガス発電・給湯暖房システム（エコウィル）

小型ガスエンジンで発電し、その廃熱を給湯や暖房に利用するシステムです。エネルギー効率が高いですが、発電量と熱の使用量のバランスが重要です。

家庭用燃料電池（エネファーム）

都市ガスから水素を取り出し、発電するシステムです。発電時の熱を給湯や暖房に利用します。

ハイブリッド給湯器

ガス給湯器とヒートポンプを組み合わせた給湯システムです。効率の良いヒートポンプで給湯し、大量の湯が必要な際にはガス給湯器が補助します。

商業用・工業用コージェネレーション機器

ガスエンジンやガスタービンエンジンを利用して発電し、廃熱を給湯や暖房に利用するシステムです。

その他のガス機器

ガス衣類乾燥機

ガスを熱源とする衣類乾燥機です。電気式よりも乾燥時間が短く、ランニングコストも安価です。

ガス生ゴミ処理機

生ゴミを乾燥させて処理する機器です。微生物分解式よりも処理できるゴミの範囲が広く、水分が多いゴミにも対応できます。

ガス遠赤外線ヒーター

遠赤外線を発生させるヒーターです。

侵管ヒーター

液体を加熱するためのヒーターです。

はんだ付け炉

金属加工ラインで使用するはんだ付け機器です。

オフセット乾燥機

印刷インクを乾燥させるための機器です。

脱臭装置

燃焼ガスから臭気を取り除くための機器です。

ガス灯

かつて街路灯として利用されていたガス灯は、現在では観光地などで見ることができます。

CNG自動車（天然ガス自動車）

圧縮天然ガスを燃料とする自動車です。

健康への影響

ガス機器は、燃焼時に排出される物質が空気汚染の原因となるため、健康への悪影響が懸念されています。特に、微粒子状物質は、心臓病や脳卒中、糖尿病などのリスクを高めることが指摘されています。高齢者や子供、妊娠中の人、呼吸器疾患のある人は特に注意が必要です。ガス機器から電気機器への切り替えは、健康増進に繋がります。

まとめ

ガス機器は、私たちの生活に欠かせない存在です。様々な種類があり、それぞれ特徴を持っています。安全性に配慮した機器を選ぶと共に、環境負荷を低減するため、高効率な機器への切り替えや、ガス以外のエネルギーへの転換も検討する必要があります。

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