ガッラ・プラキディア

ガッラ・プラキディア：動乱の時代を駆け抜けた皇女

ガッラ・プラキディア（390年頃 - 450年11月27日）は、ローマ皇帝テオドシウス1世の娘として生まれ、西ローマ帝国の滅亡へと向かう激動の時代を生き抜きました。彼女の生涯は、政略結婚、権力闘争、そして母としての葛藤に満ちたものでした。

波乱に満ちた前半生

幼少期は、テオドシウス1世の将軍スティリコのもとで育ちます。スティリコは西ローマ帝国の実質的な支配者であり、プラキディアは恵まれた環境に身を置いていました。しかし、408年にスティリコが処刑されると、彼女の運命は大きく狂い始めます。410年には、西ゴート族によるローマ略奪の際に捕虜となり、アタウルフ王の妃となるのです。

西ゴート王妃として

414年、プラキディアはアタウルフと結婚します。この結婚は政略的な意味合いが強く、ローマ帝国と西ゴート族の関係に影響を与えました。息子テオドシウスをもうけますが、夭逝。415年にアタウルフが暗殺されると、彼女は再びローマへ送還されることになります。

皇后、そして母として

417年、プラキディアはホノリウス帝の命により、将軍コンスタンティウス（後のコンスタンティウス3世）と結婚。息子ウァレンティニアヌス3世と娘ユスタ・グラタ・ホノリアをもうけます。421年にコンスタンティウスが共同皇帝となると、彼女は西ローマ帝国の皇后となります。しかし、コンスタンティウスは間もなく死去し、プラキディアは再び政治の表舞台に立つことになります。

帝国の実質的な支配者として

423年にホノリウス帝が崩御すると、西ローマ帝国は混乱に陥ります。プラキディアは幼いウァレンティニアヌス3世を擁立し、事実上の統治者として国を পরিচালনাします。しかし、その道のりは決して平坦ではありませんでした。彼女は、将軍アエティウスとの権力闘争、娘ホノリアの反乱など、数々の困難に直面します。

晩年と死

晩年はラヴェンナで教会への寄進を行うなど、信仰に篤く過ごしました。450年に死去し、彼女の遺体はラヴェンナの廟堂に埋葬されました。この廟堂は、現在では世界遺産に登録されています。

ガッラ・プラキディアの生涯は、西ローマ帝国の衰退期における政治、文化、社会を映し出す鏡と言えるでしょう。彼女の決断と行動は、帝国の命運を左右し、後世に大きな影響を与えました。

参考文献

Edward Gibbon, History of the Decline and Fall of the Roman Empire, chapter 33
Stewart Irwin Oost, Galla Placidia Augusta, A Biographical Essay, 1967.
藤沢道郎　『物語 イタリアの歴史』　中央公論社〈中公新書〉、1991年。ISBN 978-4121010452。

関連項目

ガッラ・プラキディア廟堂
* ラヴェンナの初期キリスト教建築物群

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