ガブリエル・ボリッチ

ガブリエル・ボリッチ・フォント：チリの若き大統領

ガブリエル・ボリッチ・フォント（Gabriel Boric Font）は、1986年2月11日生まれのクロアチア系チリ人で、2022年3月11日にチリ共和国の大統領に就任しました。36歳という若さでの大統領就任は、チリ史上最年少であり、当時、世界で最も若い国家元首の一人となりました。

生い立ちと学生時代

ボリッチはプンタ・アレーナスで生まれ育ちました。地元の私立ブリティッシュ・スクールでは、アウグスト・ピノチェト独裁政権下では珍しく、ピノチェトの統治について自由な議論が行われていました。家族に政治的な対立はありませんでしたが、ボリッチ自身はピノチェトを批判的に見ていました。高校時代には革命の指導者や政治プロセスに関心を抱き、左翼グループである革命的左翼運動(MIR)への参加を試みましたが、MIRはすでに衰退していました。その後、高校生連盟の再建に加わり、2004年にサンチアゴのチリ大学で法律を学び始めました。2009年に修了しましたが、最終試験の一部で不合格となり、学士号は取得できませんでした。学生運動や政治活動に没頭したことが、学業に専念できなかった理由の一つです。

学生運動から政界へ

2011年、公教育の改善を求めるデモが活発化する中、ボリッチはチリ大学学生連盟の総裁に選出され、学生運動の重要なリーダーとなりました。2014年には、学生デモのリーダーの一人として代議院議員に当選し、政界に進出しました。

大統領選挙と公約

2021年の大統領選挙に立候補したボリッチは、私的年金制度から公的年金制度への移行、学生の借金免除、教育と公的医療への投資拡大、介護制度の整備などを公約に掲げました。また、先住民への領土回復や中絶規制の撤廃、TPPへの慎重姿勢も示しました。同年11月21日の第1回投票では2位でしたが、12月19日の決選投票で勝利し、第38代大統領に就任しました。公の場ではネクタイを着用しないスタイルが特徴です。

憲法改正の試みと困難

ボリッチ政権は、ピノチェト時代に制定された現行憲法の改正を目指しましたが、国民投票で新憲法案が否決されるという結果に終わりました。その後、制憲議会が仕切り直され、新たな憲法案が作成されましたが、再び国民投票で否決されました。ボリッチは、自身の政権下での3回目の改憲国民投票は行わないと表明しており、当面の間は現行憲法が維持されることになります。

国際舞台での活動

2025年1月3日には、中南米の大統領として初めて南極点を訪問しました。また、2022年のロシアによるウクライナ侵攻を非難し、アルゼンチンのフォークランド諸島の領有権主張を承認するなど、外交面でも積極的に活動しています。

日本との関係

日本とは伝統的に良好な関係を築いており、2022年には日チリ外交関係樹立125周年を迎えました。ボリッチ大統領は日本文学や日本文化に関心を示しており、日本との二国間関係強化に意欲を見せています。小田原潔外務副大臣がチリ大統領就任式典に派遣された際には、ポケモンのぬいぐるみが贈られました。

家族

ボリッチは、1800年代後半に入植したクロアチア系移民の子孫です。父と祖父はマガジャネス・イ・デ・ラ・アンタルティカ・チレーナ州の石油産業に従事していました。2人の弟がいます。

ガブリエル・ボリッチは、チリの未来を担う若きリーダーとして、国内外で注目を集めています。彼の政策と行動は、チリの政治、経済、社会に大きな影響を与えることが予想されます。

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