ガリリャーノ川

ガリリャーノ川：イタリアを潤す歴史の川

イタリア中部に位置するガリリャーノ川は、ラーツィオ州とカンパーニア州の州境を流れ、ティレニア海に注ぐ、イタリアでも有数の規模を誇る河川です。その全長は158km、流域面積は5,020km²に及び、イタリア国内では流域面積第10位、海に直接注ぐ川としては第6位にランクインする規模を誇ります。河口付近での平均流量は120立方メートル毎秒にも達し、テーヴェレ川以南ではイタリア最大の流量を誇ります。

地理と歴史

ガリリャーノ川は、リーリ川とラーピド川（ガーリ川）が合流して形成されます。その源流は遥か古代に遡り、約63万年前に形成されたロッカモンフィーナの火山の活動が、現在の川の流れに大きな影響を与えたと考えられています。火山活動によって川の流れがせき止められ、一時的に「リリーノ湖」と呼ばれる湖が形成されたことも、地質調査から推測されています。

古くから交通の要衝として栄えたガリリャーノ川流域には、古代ローマ都市ミントゥルナエの遺跡が残るなど、歴史的な遺産が数多く残されています。また、その戦略的な位置から、古くから多くの戦争の舞台ともなりました。915年のガリリャーノの戦い、1503年のスペインとフランスの戦い、1860年のピエモンテ軍とブルボン軍の戦い、そして第二次世界大戦においても、この川沿いは激戦地となりました。特に第二次世界大戦中は、連合軍とドイツ軍が激しく争い、グスタフ線が川筋に沿って築かれたことは有名です。

さらに、1503年にはメディチ家のピエロ・デ・メディチが、この川で溺死するという悲しい歴史も刻まれています。

流路と支流

ガリリャーノ川は、ラーツィオ州フロジノーネ県カッシーノ市の南、サンタポッリナーレでリーリ川とラーピド川が合流して形成されます。その後、南に向かって流れ、古代ローマ都市ミントゥルナエと観光地バイア・ドミツィアの間を通り、ガエータ湾に注ぎ込みます。

主な支流としては、右岸にペッチア川、コクルッツォ、リオ・タヴァーラ、左岸にアウセンテ川などがあります。国道430号「ガリリャーノ谷」線は、川沿いに延びており、交通の便も良好です。

名称と利用

ガリリャーノ川は、ラテン語では「Liris」と呼ばれ、中世には「緑の川」と呼ばれていました。現在の名称は、「Caris lirianus」（リーリのガーリ）を変形させたものです。イタリアの河川一覧では、水源から河口までを一つの流れとして「リーリ＝ガリリャーノ」と表記されることが多いです。

ガリリャーノ川の水は、古くから利用されてきました。スイオにある硫黄質の温泉水は、プリニウスによって記述された「ヴェシネエ水」として知られ、ローマ時代から利用されていました。現在でも、農業や工業用の灌漑用水として利用されているほか、かつてはセッサ・アウルンカ原子力発電所にも供給されていました（1964年建設、1978年閉鎖、1982年作動不能）。

河口付近にはアッピア街道（SS 7）とヴァリアンテ・アッピア（SS 7 var）が横切り、交通の要衝としての役割を現在も担っています。第二次世界大戦以前には、イタリアで最初に建設された吊り橋「レアル・フェルディナンド」橋があり、現在でも鋼鉄のアーチ橋や中央に支柱のある最新の橋が架けられています。

このように、ガリリャーノ川は地理的、歴史的、文化的にも重要な役割を果たしてきた川であり、これからもイタリアの人々の生活に欠かせない存在であり続けるでしょう。

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