キアサージ (戦艦)

キアサージ（USS Kearsarge, BB-5/IX-16/AB-1）

キアサージはアメリカ海軍において特異な存在を放つ戦艦であり、キアサージ級戦艦の最初の艦である。この艦はアメリカ戦艦の中で唯一、州名に由来していない艦名を持っている。艦名は南北戦争の名艦「キアサージ」に由来し、特別に議会の承認を受けて命名された。元々はニューハンプシャー州のキアサージ山にちなんでいる。

建造と就役

キアサージは1896年6月30日にバージニア州ニューポートニューズの造船所で起工され、1898年3月24日に進水した。艦長はウィリアム・M・フォルジャー大佐が就任し、1900年2月20日に正式に就役した。艦の就役当初から、キアサージは北大西洋艦隊の旗艦として活動を行い、大西洋を横断してカリブ海に赴いた。

ヨーロッパ艦隊およびカリブ海での任務

1903年、キアサージは短期間ではあるがヨーロッパ艦隊の旗艦を務めた。この艦はドイツでの訪問の際、ヴィルヘルム2世皇帝や、後のジョージ5世であるプリンス・オブ・ウェールズから訪問を受けるなど、重要な外交舞台に立った。さらに、キアサージはキューバのグアンタナモ湾に向かう際に、米国の法的権利を獲得する任務にも従事した。

世界巡航とその影響

キアサージは1907年には「グレート・ホワイト・フリート」として世界巡航に参加した。この艦は南アメリカからハワイ、日本、そしてセイロンを訪れ、セオドア・ルーズベルト大統領の前でアメリカの威信を示す重要な役割を果たした。

近代化改装と役割

1909年には近代化改装を受け、再就役後は大西洋岸を中心に活動した。メキシコのベラクルスに海兵隊部隊を運ぶなど多忖宸にわたる活動を行った。第一次世界大戦の開戦前には、マサチューセッツ州とメイン州の海軍州兵の訓練に奉仕し続けた。

起重機船への転換

1919年、キアサージは退役し、起重機船へと改装された。250トンの巨大な旋回式クレーンが装備され、新たな任務に就くことになった。この新しい役割では、軍艦や潜水艦の引き揚げ作業を行い、1939年には沈没した潜水艦を引き揚げるなどの重要な業績を上げた。

第二次世界大戦とその後

1941年、キアサージは「起重機船1号」と改名され、戦争中はアメリカ海軍の艦船建造や修理に広く貢献した。1945年には多くの戦艦や巡洋艦の修理を行い、戦後の復興にも寄与した。1955年には正式に除籍され、船体は売却されることとなった。

結論

キアサージはその艦歴の中で数々の役割を果たし、一時代のアメリカ海軍の象徴的存在であった。近代化を遂げ、多彩な任務を担当したこの艦は、海軍の歴史において特別な地位を占めている。

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