キアニーナ牛

キアニーナ牛とは

キアニーナ牛（イタリア語: chianina）は、イタリアの伝統的な牛の品種であり、同国を代表する高級銘柄牛として知られています。この牛種は、特にトスカーナ州やウンブリア州に広がるキアーナ渓谷に由来しており、その名もここから付けられました。キアニーナ牛は、見た目にも美しい白い毛を持ち、古代からその存在は伝説的なものとして語られてきました。実際、ラスコー洞窟の壁画にも描かれている牛の姿に例えられることもあります。

特徴と生育の歴史

キアニーナ牛は、世界中に存在する牛の祖先とも言われるほど古い歴史を持つ品種で、古代エトルリア時代から飼育されていました。特に古代ローマ時代には、その大きな体と白い毛が神聖視され、生贄として重用されることもあったことから、宗教的な意味を持つ存在でもありました。

この牛種は、その体重が約1200キログラムにも達することから、世界最大級の牛として知られています。一般的な肉用牛が出荷される際の体重が700キログラム前後であるのに対し、キアニーナ牛はその大きさと肉質で特別な地位を確立しています。

飼育状況の変化

しかしながら、1990年代末には約25万頭が飼育されていたキアニーナ牛も、2000年代に入るとその数が半減しました。これは、EUの農業政策に伴う厳しい食肉処理規格の影響によるもので、屠殺場の統廃合が進み、家族経営の肥育農家が廃業に追い込まれたことが原因です。また、2000年代初頭に発生したBSE問題も影響し、キアニーナ牛は絶滅の危機に瀕しました。

2018年には約1万頭が残存し、2021年の時点で毎月約500頭の生産が行われています。その中で、半数以上が保護指定地域として認定されています。

飼育方法と肉の特徴

キアニーナ牛の飼育方法は、まず放牧され、育った後に牛舎に移されて大麦やトウモロコシといった穀物を与えられるというものです。この方法は、日本の銘柄牛の飼育スタイルと比較すると、粗飼料である牧草や麦わらの使用量が圧倒的に多いのが特徴です。

肉質に関しても優れた特性を持ち、脂肪が少なく、柔らかで、タンパク質が豊富です。特にコレステロール値が非常に低く、一般的な牛肉が25%であるのに対し、キアニーナ牛は5%以下とされています。このため、健康志向の消費者にも喜ばれる肉といえるでしょう。

利用と料理

キアニーナ牛といえば、「ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ」がその代表的な料理であり、キアニーナ牛を使用するのが基本です。しかし、2000年代のBSE問題により、日本への輸出は一時的に禁止されましたが、2016年には再度輸出が開始されました。

世界最大の牛

2010年にローマで開催された品評会では、「ベリーノ」という名のキアニーナ牛が登場し、その体高は2メートルを超えるという驚異的なサイズで注目を浴びました。

キアニーナ牛はその歴史と特性から、イタリアの食文化に欠かせない存在であり、これからの時代でもその価値が再認識されることが期待されています。

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