キア・K7

K7 (ケイセブン)

K7は、韓国の自動車メーカーである起亜（キア、KIA）が製造・販売していた大型セダンです。北米および欧州市場では「CADENZA（カデンツァ）」の名称で展開されました。起亜のセダンラインナップにおいて、当時のフラッグシップモデルであったオピラスと、ミドルクラスのロッツェイノベーション（後のK5）の中間に位置するモデルとして開発され、2009年の登場から2021年に生産を終えるまで、2世代にわたり展開されました。

初代 K7 (2009年 - 2016年)

初代K7のルーツは、2009年4月のソウルモーターショーで発表されたコンセプトカー「KND-5コンセプト」に遡ります。エクステリアデザインは、KND-5コンセプトと同様に、著名なデザイナーであるペーター・シュライヤー氏が手掛けました。車両の基礎となるプラットフォームには、現代自動車・起亜グループが新たに開発した、準大型セダンやSUV向けの「Type-N」プラットフォームが初めて採用されました。このプラットフォームは、後にヒュンダイ・グレンジャー（HG型）にも使用されています。

発表当初、エンジンラインナップは、ヒュンダイ・グレンジャーのV6 3.3Lエンジンを拡大したV型6気筒3.5L（最高出力290PS）を筆頭に、V6 2.7L（ガソリン仕様200PS、LPI仕様165PS）、直列4気筒2.4L（180PS）の4種類が設定されました。2011年には、グレンジャーに搭載されたV6 3.0L直噴（GDi）エンジン（275PS）とそのLPI仕様（235PS）が追加されています。ディーゼルエンジンの設定はありませんでした。トランスミッションは、全てのモデルで6速オートマチックが組み合わされました。

足回りには、フロントにマクファーソンストラット式、リアにマルチリンク式サスペンションを採用することで、スポーティなハンドリングと同時に上質な乗り心地が追求されました。安全性においては、運転席・助手席エアバッグや車両安定制御システム（VDC）が全車に標準装備され、オプションで最大8個のエアバッグを装着することが可能でした。また、フロントカメラやリアカメラ、バックモニター内蔵のルームミラー、車線逸脱警報システム（LDWS）、タイヤ空気圧警報システムなども採用され、安全運転を支援しました。

内外装では、前後ランプやドアミラーにLEDを多用し、大型ガラスサンルーフ、17インチまたは18インチのアルミホイール、マフラーカッターと一体化したリアバンパーなどを採用することで、高級感とスポーティな印象を高めていました。インテリアには本革シートが採用され、ブラックとアイボリーの選択肢が用意されました。また、「感性技術」をテーマに、様々な先進装備が搭載されたことも特徴です。スマートキーを携帯して車両に近づくだけでドアミラーが自動で展開し、内外装の照明が点灯する「ウェルカムシステム」は世界初の機能として注目されました。アウディやBMWなどが採用していた面発光タイプの間接照明も取り入れられ、室内の質感を一層向上させています。このほか、ステアリングヒーターや自動デフォグシステム、運転席・助手席のベンチレーション機能なども採用され、快適性と利便性を両立させていました。

2012年11月13日にはマイナーチェンジが行われました。外観では、起亜のフラッグシップセダンK9に似た新デザインのタイガーノーズグリルとヘッドライト、K3に類似した配列の大型LEDリアコンビネーションランプが採用されるなど、デザインが一新されました。バンパーやアルミホイールのデザインも変更され、新たに19インチのアルミホイールも設定されました。安全装備面では、車両周囲を俯瞰的に表示する「アラウンドビュー・モニタリングシステム」や、死角エリアの車両を検知する「後側方レーダー警報システム」が新たに搭載され、安全性が向上しました。エンジンラインナップでは、2.7Lエンジンが全廃され、V6 3.5L GDiに代わってV6 3.3L GDi（294PS）が登場しました。2.4Lエンジンも型式は同じながら、出力が201PSに引き上げられています。

初代K7には、ハイブリッドモデルも設定されました。2013年12月16日に韓国で「K7 700h」として発表・発売されたモデルです。これは、直列4気筒2.4Lエンジン（159PS）をハイブリッド用に最適化し、35kWのモーターと組み合わせた1モーター2クラッチ方式のシステムを採用していました。このユニットは、前日に発表されたヒュンダイ・グレンジャーハイブリッドと同一です。バッテリーにはLG化学製のリチウムイオンポリマー二次電池が搭載されました。複合燃費は16.0km/Lを達成し、ガソリンモデル（2.4Lで11.3km/L）と比較して大幅に向上しました。外観上の違いは少なく、専用デザインのアルミホイールや「ECO hybrid」エンブレムが主な識別点でした。メーターパネル中央には燃費情報などを表示する4.6インチLCDカラーディスプレイが、インパネ中央には走行モードを示す大型ディスプレイが備わりました。

2代目 K7 (2016年 - 2021年)

2代目K7は、2016年1月26日に韓国で発表されました。車体構造においては、高張力鋼板の採用率を従来の24％から51％へと大幅に引き上げ、車体の軽量化と同時に衝突安全性および走行性能の向上が図られました。安全装備としては、先代のマイナーチェンジで採用されたアラウンドビューモニタリングシステムや後側方レーダー警報システムなどが引き続き搭載されました。

エンジンラインナップは、先代から引き継がれたV6 3.3L GDiと直4 2.4L GDiに加え、ミニバンのカーニバルに採用されていた2.2Lディーゼルエンジン（R 2.2e-VGT）が新たに設定されました。ハイブリッドモデルについては、当初は先代モデルが継続販売されていましたが、2016年11月29日には新型となる「K7 Premier ハイブリッド」が発売されました。このモデルは、2.4L直列4気筒ガソリンエンジン（159ps）に38kWのモーターと6速ATを組み合わせたもので、複合燃費は16.2km/Lを達成しています。また、タクシー向け専用モデルとして「K7 Premier TAXI」も存在し、こちらは3.0L LPIエンジン（235ps）を搭載していました。

K7は、2021年2月に登場した後継モデルであるK8にその役割を譲る形で、同年3月に生産を終了しました。

車名の由来

「K」は、起亜自動車（KIA）、大韓民国（KOREA）、ギリシャ語で“強さ”や“支配”を意味する「Kratos」、そしてダイナミックな躍動性を意味する英語の「Kinetic」という複数の言葉の頭文字に由来するとされています。「7」は、起亜のラインナップにおける車両の格付けを示しています。輸出仕様名である「CADENZA（カデンツァ）」は、イタリア語で楽曲の「終止の前に挿入される技巧的な独奏（あるいは独唱）部分」を意味します。

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