キエフの戦い (1240年)

キエフの戦い：1240年の悲劇とその後

1240年、モンゴル帝国の侵攻は、かつて栄華を誇ったルーシの首都キエフに、想像を絶する悲劇をもたらしました。この戦いは、キエフの支配権を巡る、ルーシとモンゴル帝国の激しい衝突として歴史に刻まれています。

バトゥ率いるモンゴル軍は、同年9月5日、キエフを包囲。圧倒的な軍事力を背景に、キエフの明け渡しを要求しました。しかし、ドミトロー大将率いるキエフ軍と市民は、抵抗を決意。必死の防衛戦が開始されました。

モンゴル軍は、キエフの防衛線の弱点であるポーランド門を集中攻撃。32基もの投石機を駆使し、城壁を破壊、市街地へと侵入を試みました。キエフ市民は勇猛果敢に抵抗しましたが、数において圧倒的に劣る状況下、遂に什一聖堂へと退却。教会を最後の砦として、防戦を続けました。

激しい攻防の後、12月6日、モンゴル軍はさらなる投石機を投入。ついに什一聖堂をも破壊し、キエフは陥落しました。ドミトロー大将は捕虜となりましたが、その勇敢な戦いぶりがバトゥを感服させ、解放されたと言われています。

キエフ陥落は、都市に壊滅的な打撃を与えました。モンゴル軍は聖ソフィア聖堂をはじめとする多くの教会や貴族の屋敷を略奪、破壊しました。戦前5万人いたとされるキエフの人口は、わずか2000人にまで激減。かつての繁栄は失われ、都市は廃墟と化しました。

キエフの陥落は、ルーシの終焉を意味しました。その後もキエフ公国は存続しましたが、14世紀半ばまでモンゴル帝国の支配下に置かれ、属国としての地位を余儀なくされました。

キエフの都市構造にも大きな変化が生じました。かつての中心地であった山の手の古キエフは荒廃し、人々は下町のポジールへと移住。都市の中心部は大きく移動することとなりました。

この戦いは、キエフという都市だけでなく、ルーシという国家の運命をも変えた歴史的出来事でした。数多くの文化遺産が破壊され、人々は故郷を追われ、繁栄した都市は廃墟と化しました。キエフの戦いは、歴史が刻んだ悲劇として、後世に語り継がれるべき出来事です。

破壊された文化遺産

キエフ大公の宮殿
什一聖堂
クローウ修道院
黄金の門

参考文献

（ウクライナ語）Івакін Г. Ю. Історичний розвиток Києва XIII — середини XVI ст. (історико-топографічні нариси). — К., 1996.
（ロシア語）Климовский С.И. Клад из руин Десятинной церкви // Восточноевропейский археологический журнал. — № 5(6), 2000.
（ウクライナ語）Сагайдак М.А., Черняков І.Т. Лядські ворота Києва — оберт колеса світової історії // Восточноевропейский археологический журнал. — № 5(12), 2001.
（ロシア語）Храпачевский Р. Великий западный поход чингизидов на Булгар, Русь и Центральную Европу // Военная держава Чингисхана. — М. 2004.

もう一度検索