キティ台風

キティ台風：関東地方を襲った未曾有の災害

1949年、カスリーン台風やアイオン台風による被害からまだ復興途上にあった関東地方に、新たな脅威が襲来しました。昭和24年台風第10号、国際名「キティ」です。この台風は、その猛威によって関東地方に甚大な被害をもたらし、人々の記憶に深く刻まれることとなりました。

台風の発生と進路

8月28日、南鳥島近海で発生したキティ台風は、勢力を増しながら北西に進路を取りました。31日には中心気圧956hPaに達する大型で強い台風へと発達。八丈島を通過した後、進路を北に変え、神奈川県小田原市の西方へ上陸しました。その後、東京都西部、埼玉県熊谷市を通り抜け、新潟県柏崎市付近から日本海へ進み、温帯低気圧へと変化しました。

猛烈な風雨と高潮

キティ台風は、東海、関東、北日本の日本海側などに暴風雨をもたらしました。各地で20メートルを超える暴風が吹き荒れ、八丈島では最大風速33.2m/s（最大瞬間風速47.2m/s）、横浜では35.2m/s（同44.3m/s）、東京でも最大瞬間風速30.2m/sを記録しました。上陸時だけでなく、台風の通過が満潮時と重なったことで、東京湾などで高潮が発生。東京では、A.P.+3.15mという高潮を記録し、江東区や江戸川区など、荒川流域のゼロメートル地帯は広範囲にわたって浸水しました。横浜港でも、推算潮位を1メートル以上上回る高潮となり、多くの船舶が被害を受け、90隻中26隻が沈没するなど、開港以来の大災害となりました。行徳塩田も浸水被害を受け、製塩業は廃業に追い込まれました。

大規模な土砂崩れと人的被害

関東北部や新潟県の山岳部では大雨となり、群馬県勢多郡東村（現みどり市）沢入では、9月1日未明、大規模な土砂崩れが発生しました。32名が生き埋めとなり、救出活動により2名が救出されたものの、29名が犠牲となりました。信濃川や渡良瀬川の上流部では堤防が決壊、土浦城西櫓も被害を受け、解体されました。

被害の規模

キティ台風による被害は甚大でした。消防白書によると、死者135名、行方不明者25名、負傷者479名にのぼります。住家全壊3,733棟、住宅半壊13,470棟、床上浸水51,899棟、床下浸水92,161棟という被害が出ました。東京都建設局の資料では、床上浸水73,751戸、床下浸水64,127戸、死傷者122名となっています。農業被害も深刻で、耕地被害は48,598ha、船舶被害は2,907隻に達しました。

キティ台風の記憶

キティ台風は、人々の心に深い傷跡を残しました。この災害を題材とした文学作品もいくつか存在します。里見弴の『キティ台風』（小説新潮、1949年11月号）、福田恆存の『キティ颱風』（創元社、1950年）などが挙げられます。キティ台風の経験は、防災意識の高まりや、都市計画の見直しに繋がるなど、現代社会にも影響を与え続けています。また、キティ台風で被災した製紙工場の物資と交換で小麦を入手したことが、山崎製パン創業のきっかけとなったというエピソードも残されています。

結論

キティ台風は、関東地方に壊滅的な被害をもたらした未曾有の災害でした。この経験は、私たちに自然災害の脅威を改めて認識させ、防災対策の重要性を痛感させます。過去の教訓を活かし、将来起こりうる災害に備えることが、今を生きる私たちの責務と言えるでしょう。

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