キノミヤ信仰

キノミヤ信仰の概要

キノミヤ信仰は、日本の神奈川県西部から静岡県伊豆半島にかけて広がる特異な民間信仰の一つです。この信仰は主に「キノミヤ」と名付けられた神社を中心に展開されており、地域の文化や風習に深く根ざしています。

「キノミヤ」という名称は、複数の異なる漢字で記されることがあります。具体的には、木宮、貴宮、来宮、黄宮、木野宮、紀伊宮などの表記が見られるほか、これらの神社では祭神も統一されておらず、樹木や漂着物に関連づけられる神々が祀られることが多いです。特にこの信仰が根付いている地域は、鹿島踊りが盛んに行われている地域とほぼ重なります。

名称の由来

キノミヤ信仰の名称に関しては、いくつかの説が存在し、どれが正しいのかは定説がありません。ただし、特に有力な説として以下のものが挙げられます。

1. 「来の宮」説 - 現在の鎮座地が海岸近くに今なお位置しており、神社の創建が漂着物に由来していることから、漂着神を指すというものです。
2. 「木の宮」説 - 神木を信仰する樹木信仰、または木地師の影響が強いという考え方です。
3. 「忌の宮」説 - 祭りの際に行われていた物忌みが由来という説です。
4. 「紀の宮」説 - 紀伊国に由来する神々に関わると言われていますが、「紀伊」という名称自体が「木」に基づいていることから、上記の「木の宮」説と共通する部分もあります。

これらの説は一部が重複するため、神社ごとに異なる背景があると考えられています。

キノミヤ信仰の神社

キノミヤ信仰に関連する神社として、いくつかの著名な神社があります。以下はその一部です。

• - 紀伊神社（神奈川県小田原市早川）: 旧称は紀伊宮で、祭神は五十猛命および惟喬親王です。
• - 貴船神社（神奈川県足柄下郡真鶴町）: 旧郷社で、大国主神、事代主神、少彦名神を祭神としています。
• - 来宮神社（静岡県熱海市西山町）: 旧村社で、祭神は五十猛命です。
• - 来宮神社（静岡県伊豆市八幡）: 旧郷社、祭神は同じく五十猛命。
• - 八幡宮来宮神社（静岡県伊東市八幡野）: 旧郷社、来宮神社を合祀し、祭神は伊波久良和気命です。
• - 志理太乎宜神社（静岡県賀茂郡東伊豆町白田）: 古社であり、祭神は五十猛命。
• - 川津来宮神社（静岡県賀茂郡河津町田中）: 旧郷社、祭神は杉桙別命です。

なお、キノミヤを冠しない神社も含め、木や漂着神を祀りながら特異な祭りや忌みを課す神社が多数存在しています。

季宮精進

かつて、滋賀県湖南地方では11月23日になると火難を避けるために無用の火を燃やさないようにし、煮炊きしたものを食べないという「季宮精進」なる習俗が存在しました。この習俗はキノミヤ信仰と関連しているとされ、地域文化の中で重要な役割を担っていました。

以上のように、キノミヤ信仰は多様な要素を含む興味深い信仰形態であり、その地域性や文化的な背景が色濃く反映されています。

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