キバウミニナ

キバウミニナ（牙海蜷）

概要

キバウミニナ（学名：Terebralia palustris）は、吸腔目キバウミニナ科に属する巻貝の一種です。主にインド太平洋の熱帯地域に分布し、特にマングローブでその姿を見せます。同属には近縁のマドモチウミニナ（T. sulcata）が存在していますが、キバウミニナはその中で最大のサイズを誇ります。彼らの特徴的な外見は、科学的な興味を引く存在として注目されています。

特徴

成貝のサイズは殻長が100mm、殻径が40mmを超えることもあり、キバウミニナ科では特に大型の部類に入ります。螺層は円錐形に近く、形状はあまり膨らむことがありません。また、縦に走る太い肋があり、縫合の下には深い螺溝が見られます。底部には同心円状の深い溝がたくさんあり、水管溝は底の中心部分に深くえぐれています。

キバウミニナはマドモチウミニナと比較した場合、より大型で細長いことが特徴です。水管溝が殻口と繋がっており、殻表には格子状の模様がないことで簡単に識別できます。

分布

この貝はインド太平洋の熱帯及び亜熱帯の海域に広く分布しています。日本国内では、主に沖縄本島北部と八重山諸島の石垣島、西表島、小浜島に生息が確認されており、特に西表島と小浜島のマングローブ林が主な生息場所と考えられています。

最近になって、八重山諸島以外でも石垣島の名蔵アンパルや川平湾河口、宮良川河口での生息が確認されていますが、これらの個体群は人為的に移入された可能性が高いとされ、自然分布は依然として八重山諸島に限られていると推測されています。

生態

キバウミニナは汽水域のマングローブ林に生息し、砂泥の上で群れを成しています。彼らは地表を這いながら樹木から落ちてくる葉を直接食べることが特徴です。若い時期はデトリタスを主に摂取していますが、成長すると落葉の表面を削るように食べることが増え、成貝になると落葉を端から噛み切る形で摂食します。歯舌は鋭く、硬い落葉を効率よく切断できるため、食事の効率が高まります。

特に、切り取られた葉から出るモノテルペン混合物によって引き寄せられ、大量に集中することがあります。この貝は高いβ-グルコシダーゼ活性を持ち、落葉のセルロースを効率よく分解するため、マングローブ林の炭素循環にも重要な役割を果たしていると考えられています。

保護状態

キバウミニナは、環境省のレッドリストで絶滅危惧II類（VU）に指定されています。日本では限られた範囲でしか生息せず、マングローブの開発が進むと、生息地が脅かされる可能性があります。また、海外では食用にされているものの、国内では見かけることが少ないため、漁獲対象とはされていない状況です。

食材としての安全性もまだ確認されていないため、その保護が求められています。

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