キバナノコマノツメ

キバナノコマノツメ（黄花の駒の爪）

キバナノコマノツメ（学名：Viola biflora）は、スミレ科スミレ属に分類される多年草です。その名前は、鮮やかな黄色の花を咲かせ、葉の形が馬の蹄（駒の爪）に似ていることに由来します。スミレの仲間でありながら、「スミレ」の名を冠さない珍しい種でもあります。

分布と生育環境

キバナノコマノツメは、北極圏を中心に環状に分布しており、北半球の冷温帯地域に広く生育しています。日本国内では、北海道、本州の中部以北、四国山地、そして屋久島といった亜高山帯から高山帯にかけて見られます。特に、湿った草地や沢沿いの林縁などを好んで生息しています。

形態

草丈は5cmから20cm程度で、高山帯に生育するものは10cmほどのものが多く見られます。花期は6月から8月で、直径1.5cmから2cmほどの黄色い花を一つ咲かせます。花弁は特徴的な形状をしており、特に唇弁は大きく、褐紫色の筋が入ります。また、上弁と側弁は反り返るのが特徴です。花柱はY字形をしており、無毛です。

葉は2cmから4cmほどの腎円形、または腎心形をしています。葉の表面は柔らかく、短毛が生えており、光沢はありません。葉の縁は波状の鋸葉となっています。基準標本はヨーロッパの高山に生育するものとされています。

近縁種と変種

キバナノコマノツメには、いくつかの変種や近縁種が存在します。

変種

ジョウエツキバナノコマノツメ (Viola biflora var. subpubescens)：至仏山や谷川岳などで見られる変種です。
アカイシキバナノコマノツメ (V. b. var. akaishiensis)：南アルプスや長野県に分布する変種で、長野県ではレッドリストの絶滅危惧ⅠB類(EN)に指定されています。

近縁種

タカネスミレ (Viola crassa)：東北地方の高山に生育し、砂礫地にも進出します。キバナノコマノツメと間違えやすい場合があります。
クモマスミレ (V. c. ssp. alpicola)：北アルプスや中央アルプスに分布しています。
オオバキスミレ (V. brevistipulata)：本州の近畿以北、山地帯から亜高山帯にかけて生育します。

参考文献

いがりまさし『日本のスミレ』（増補改訂第2版）山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑6〉、2005年1月、38-39頁。ISBN 4-635-07006-9。
豊国秀夫『日本の高山植物』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、1988年9月、315頁。ISBN 4-635-09019-1。

関連項目

スミレ属
日本産スミレ属の一覧
高山植物

外部リンク

* キバナノコマノツメ標本（長野県の八ヶ岳で1947年7月12日に採集）　（千葉大学附属図書館）

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