キプロスの歴史

キプロスの歴史：古代から現代までの島国の歩み

キプロス島は、地中海東部に位置する島国であり、その歴史は紀元前数千年まで遡ります。豊かな歴史は、様々な文明や勢力の支配を受け入れ、独自の文化を育んできたことを物語っています。本稿では、先史時代から現代までのキプロスの歴史を概観します。

先史時代

キプロスにおける最古の痕跡は、新石器時代（紀元前約10500～9000年）にまで遡ります。西部キプロスで発見された井戸は、世界最古の井戸の一つと推定されており、この時代の住民の高度な技術力を示唆しています。青銅器時代には、ミケーネ文明の影響を受けつつ、独自の青銅器文化が発展しました。後期青銅器時代にはヒッタイト帝国の影響下に入りますが、直接的な支配ではなく、間接的な影響下にありました。また、フェニキア人の植民活動も盛んに行われました。

古代

キプロスは、アッシリア、エジプト、ペルシアなど、古代地中海世界を代表する強大な帝国の支配下に入りました。アッシリアによる支配の証拠となる粘土板や、サルゴン2世の勝利を記念する石碑などが発掘されています。紀元前7世紀には一時的に独立を回復しますが、その後再びエジプト、そしてペルシアの支配下に置かれました。アレクサンドロス大王の死後、プトレマイオス朝エジプトの支配下に入り、紀元前58年にはローマ帝国に併合されました。ローマ帝国時代には、キュプルス属州として、地中海貿易の中継地として繁栄を謳歌しました。しかし、ユダヤ人の反乱や地震、干ばつ、飢饉などの災厄にも見舞われています。

東ローマ帝国時代

ローマ帝国が東西に分裂すると、キプロスは東ローマ帝国（ビザンツ帝国）の支配下に置かれました。7世紀にはイスラム勢力の侵攻を受けますが、東ローマ帝国との間で一時的な共同統治体制が成立します。しかし、東ローマ帝国はキプロスを何度も奪還しようと試み、その過程で激しい争いが繰り広げられました。幾度かの奪還と喪失の後、東ローマ帝国の支配が安定するのは10世紀に入ってからです。この時代、キプロス独自の文化が形成されていきます。その後も、東ローマ帝国の支配下ではありましたが、反乱や内紛なども発生しています。

十字軍とキプロス王国

12世紀、十字軍の進出により、キプロスは新たな時代の転換期を迎えます。1191年、リチャード1世率いるイングランド軍がキプロスを征服し、その後キプロス王国が成立しました。キプロス王国は、ラテン語、後にフランス語を公用語とし、カトリック教会が優勢となりました。ギリシャ正教会は迫害を受けますが、民衆の間で信仰は根強く残りました。キプロス王国は、1489年にヴェネツィア共和国に売却され滅亡します。

オスマン帝国支配

1571年、キプロスはオスマン帝国に征服され、約300年間にわたるオスマン帝国支配が始まりました。この時代、アナトリア半島などからのトルコ人の移住が進み、今日のキプロス問題の根源の一つとなります。ギリシャ正教会は弾圧を受けながらも、信仰を維持し続けます。

イギリスの植民地支配

1878年、イギリスはオスマン帝国からキプロスの行政権を譲り受け、事実上の支配を始めます。第一次世界大戦後、イギリスはキプロスを正式に植民地化しました。この時代、キプロスでは独立運動が盛んになります。

キプロスの独立とその後

1960年、キプロスはイギリスから独立を果たし、キプロス共和国が成立しました。しかし、ギリシャ系住民とトルコ系住民の間の対立は深刻であり、1974年にはトルコ系住民が居住する北部がトルコ軍の介入により事実上分離独立しました。1983年には北キプロス・トルコ共和国が一方的に独立を宣言しましたが、国際的には承認されていません。2004年にはキプロス再統一のための国民投票が行われましたが、否決されました。同年、キプロス共和国（ギリシャ系住民）は欧州連合に加盟しました。現在もキプロス問題、つまり北キプロス問題、は未解決のまま残されています。キプロスの歴史は、複雑な民族対立、列強の干渉、そして文化の融合といった要素が複雑に絡み合った、ドラマチックな物語です。

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