キプロスの行政区画

キプロスの行政区分：法令上の地区と事実上の地区

キプロス共和国は、地中海東部に位置する島嶼国家です。その行政区分は、歴史的経緯、特に1974年のトルコ軍侵攻とその後の状況から、法令上の区分と事実上の区分が大きく異なる複雑な様相を呈しています。

法令上の地区

キプロス政府は、キプロス島を6つの地区（ギリシャ語: επαρχίες, eparchies, トルコ語: kaza）に分割しています。各地区の中心都市は、地区名と同じ名前の都市です。これらの地区は、1974年の分断以前からの行政区分であり、現在も法令上は維持されています。イギリス領のアクロティリおよびデケリアは、キプロス島のファマグスタ地区とリマソール地区に隣接していますが、このイギリス領土は、キプロスの行政区分からは除外されています。さらに各地区の下には、基礎自治体が存在します。

しかし、1974年以降の状況を考慮すると、この法令上の地区区分は事実上の行政状況と大きく乖離しています。キレニア地区全域、ファマグスタ地区の大部分、ニコシア地区の北半分、そしてラルナカ地区の一部（合計約3,355平方キロメートル）は、キプロス政府の実効支配下にありません。

事実上の地区

1974年、トルコ系住民が多数を占めるキプロス島北部へのトルコ軍の侵攻と占領が発生しました。この占領地は、1983年に北キプロス・トルコ共和国として独立を宣言しました。ただし、この独立国家は国際的に広く承認されていません。

キプロスと北キプロス・トルコ共和国の間には、国際連合によって管理されるグリーンライン（緩衝地帯）が設定され、両者の間には明確な国境は存在しません。このグリーンラインは、軍事衝突を防止する緩衝地帯として機能していますが、同時に、キプロスの領土分割と事実上の二国家体制を象徴する存在となっています。

この状況により、キプロスの行政区分は法令上と事実上では大きく異なっています。特にキレニア地区は、事実上北キプロス・トルコ共和国に完全に編入されており、キプロス政府の行政は及んでいません。他の地区においても、北部の一部地域は北キプロス・トルコ共和国に事実上支配されているため、キプロス政府の統計などは、北キプロス実効支配下にある地域を除外して算出されています。

まとめ

キプロスの行政区分は、法令上の地区区分と事実上の地区区分が大きく異なる複雑な状況にあります。1974年の出来事が、キプロスの政治状況、そして行政区分にも大きな影響を与えていることは明らかです。この複雑な状況を理解するためには、法令上の区分と事実上の区分を区別し、両者の違いを認識することが不可欠です。キプロスの現状を理解するためには、この歴史的背景と国際的な状況を考慮することが重要です。

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