キャサリン・ハワード

キャサリン・ハワード：ヘンリー8世の5番目の王妃とその波乱の生涯

キャサリン・ハワードは、1521年頃（生年は不明）にイングランドで生まれ、1542年2月13日に処刑されました。彼女は、イングランド王ヘンリー8世の5番目の王妃として知られていますが、その生涯は短く、悲劇的なものでした。

名門の影と不安定な生い立ち

キャサリンは、名門ハワード家に属するものの、恵まれた環境で育ったわけではありませんでした。彼女の父エドムンド・ハワードは、戦場で名を馳せたものの、財政状況は常に不安定でした。多くの兄弟姉妹の中で後から生まれたキャサリンは、持参金目当ての結婚と死別を繰り返す父のもと、経済的な苦労を経験します。多くの兄弟姉妹がいたため、血縁関係が曖昧な部分もあり、複雑な家庭環境で育ちました。

ある時期から、父の義理の母にあたるノーフォーク公爵未亡人アグネス・ティルニーに引き取られ、彼女の屋敷で教育を受けます。しかし、アグネスの監督が行き届かない環境の中、キャサリンを含む若い女性たちは、男性関係を持つようになります。キャサリンは、音楽教師や秘書官との関係を持ったと伝えられています。当時、10代前半での結婚は珍しくなかったため、キャサリンの性的早熟は特筆すべきものではなかったと考えられています。

王妃への道と破滅

1540年、ヘンリー8世はアン・オブ・クレーヴズと離婚し、アンの侍女であったキャサリンと結婚しました。ヘンリー8世は、若いキャサリンを寵愛し、「私の薔薇」「私の棘のない薔薇」と呼びました。しかし、この結婚は長くは続きませんでした。

キャサリンは、複数の男性との関係を持っていたという告発を受け、国王から姦通の疑いをかけられ、逮捕されました。告発された男性の中には、フランシス・デレハムやトマス・カルペパーらがいます。デレハムは以前からキャサリンの恋人でした。もしキャサリンとデレハムが婚約していたならば、国王との結婚は無効となり、キャサリンは無罪放免の可能性もありましたが、キャサリンは婚約を否定し、デレハムによる強姦を主張しました。一方、デレハムは、国王との結婚後、キャサリンとの関係はないと主張しつつも、カルペパーとの関係を証言しました。キャサリンからカルペパーへの情熱的な手紙が証拠として発見され、キャサリンの侍女で、アン・ブーリンの義妹でもあったジェーン・ブーリンの関与も明らかになりました。

キャサリン自身は姦通を否認しましたが、それは聞き入れられず、処刑されました。彼女の処刑は、当時の習慣に従い、公開で行われ、キャサリンは処刑される前に「トマス・カルペパーの妻として死にたかった」と述べたと言われています。

幽霊伝説と歴史的解釈

キャサリンは、ヘンリー8世に無実を訴えようとハンプトン・コート宮殿の廊下を走ったという伝説が残っています。この廊下は現在、「ホーンテッド・ギャラリー」（幽霊の廊下）として知られており、キャサリンの幽霊が出没する怪奇スポットとなっています。しかし、歴史家のデイヴィッド・スターキーは、この直訴自体がなかったことを指摘しています。

肖像画と作品への登場

キャサリン・ハワードの肖像画は、はっきりとしたものが残っていないとされています。しかし、デイヴィッド・スターキーによってキャサリン・ハワードのものと確認された肖像画も存在し、結婚式当日の様子を描いている可能性も示唆されています。

キャサリン・ハワードは、小説や漫画など、多くの作品に登場し、彼女の人生は現在も人々の関心を集めています。彼女の生涯は、名門の影と不安定な生い立ち、そして王位と破滅という劇的な展開をたどり、歴史に深く刻まれた存在です。彼女の人生は、権力、愛、そして運命の残酷さを改めて考えさせてくれるものです。

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