キャスパー装甲兵員輸送車

キャスパー：地雷対策に特化した南アフリカ生まれの装甲兵員輸送車

キャスパーは、南アフリカ共和国で開発・製造された四輪式の装甲兵員輸送車です。最大の特徴は、その卓越した地雷対策能力にあります。V字型の車底設計により、地雷の爆風を効果的に分散させ、乗員と車体への致命的な損傷を防ぎます。また、銃弾や砲弾の破片から兵員を保護するための装甲も施されています。

開発の背景

キャスパーが開発された背景には、1960年代後半から1980年代にかけての南アフリカを取り巻く政治・軍事情勢がありました。当時、南アフリカはアパルトヘイト政策を推進しており、国内の黒人組織やナミビアの独立運動を弾圧していました。また、アンゴラやモザンビークといった周辺国が社会主義化し、反政府勢力を支援したため、南アフリカは内戦への介入を余儀なくされました。

こうした紛争において、対戦車地雷を使用した待ち伏せ攻撃が多発し、南アフリカ防衛軍や警察の装甲車は大きな損害を受けました。そこで、地雷に対する高い抗堪性を持つ装甲車の開発が急務となり、1979年にキャスパーの生産が開始されました。

アパルトヘイト政策終了後は、アフリカ諸国やアメリカなどへも輸出されています。

設計の特徴

キャスパーの最大の特徴は、地雷対策を重視した設計です。具体的には、以下の点が挙げられます。

V字型の車底: 地雷の爆風を左右に逃がし、車体への直接的な衝撃を軽減します。
重装甲: 車体全体を覆う装甲は、銃弾や砲弾の破片から乗員を保護します。
迅速な車軸交換: 地雷によって車軸が破壊された場合でも、短時間で交換作業を行い、戦闘への復帰を早めることができます。

各種派生型

キャスパーは、その汎用性の高さから、様々な派生型が開発されています。

装甲兵員輸送車（基本型）
砲兵着弾観測車
戦場救急車
貨物自動車: 最大5トンまでの貨物を運搬可能。
タンクローリー: 5,000リットルのタンクを搭載。
火力支援用車両
Gemsbok 回収車両: 最大牽引重量15tまでのクレーンを搭載。
Mechem 地雷除去車両: 鉄製のタイヤを装着し、地雷を誘爆させる。
MEDDS 地雷探知センサ車両
Plofadder 地雷除去システム: ロケット推進式地雷除去システムを搭載。
警察用車両: 暴動鎮圧用。

この他、アメリカのフォース・プロテクション社がキャスパーをベースに開発した地雷防護車両「バッファロー」も存在します。

採用国

キャスパーは、以下の国々で採用されています。

アメリカ合衆国
ペルー
コンゴ民主共和国
マラウイ
アンゴラ
モザンビーク
インド
ウガンダ
ベナン
ブルンジ
インドネシア
ネパール
ジブチ
ナミビア
* 南アフリカ共和国

登場作品

ニール・ブロムカンプ監督の映画『第9地区』では、南アフリカの超国家機関（MNU）が、エイリアン居住区の移動に使用する車両として、キャスパーが登場します。劇中では、車体が白く塗装されています。

まとめ

キャスパーは、地雷が多用される紛争地域において、兵員の生存率を高めるために開発された装甲車です。その独特な設計思想と高い性能は、現代の装甲車両開発にも大きな影響を与えています。

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