キャディ (ゴルフ)

キャディ（ゴルフ）

キャディ、またはキャディー（caddy, caddie）とは、ゴルフ競技において、プレーヤー（競技者）のゴルフバッグを運び、クラブの選択に関する助言や、コースの攻略法に関する戦略的な情報を提供する人物を指します。また、プレーヤーの士気を高め、精神的なサポートを行う重要な役割も担います。

ゴルフ規則においては、「規則に従ってプレーヤーを助ける人」と定義されています。優秀なキャディは、プレイするコースの特性、隠れた難所、風向きやグリーンの状態といった細部に至るまで熟知しており、これらの知識をもとにプレーヤーにとって最も効果的な戦略を立てる能力が求められます。これには、ホールの正確な距離の把握、ピンの位置に応じた攻め方、そして最適なクラブの選択などが含まれます。

形態

キャディの多くは、特定のゴルフ場に専属的に雇用されているわけではなく、独立した個人事業主として活動しています。したがって、ゴルフ場やゴルフクラブから直接の給与を受け取ることは稀です。一部のゴルフ場では、プレーヤー向けにキャディを手配するサービスを提供していますが、その場合も、ゴルフ場がキャディに直接報酬を支払うケースは少ないとされています。ヨーロッパにおいては、プロフェッショナルな競技を除き、アマチュアゴルファーがキャディを伴わずに自らバッグを運ぶのが一般的です。

日本国内においては、主に競技プロに帯同し、独立した立場で活動するプロキャディと、ゴルフ場が一般のゴルファー向けに手配するサービスキャディに大別されます。サービスキャディは、ゴルフ場が直接雇用する場合もありますが、多くはキャディ業務を請け負う業者から派遣される形態をとっており、パートタイムやアルバイトといった非正規雇用で働く人が中心となっています。

ツアー帯同キャディの報酬

日本で開催される多くのプロゴルフツアーにおいて、プロゴルファーが必ずしも専属の帯同キャディを雇うわけではありません。大会が開催される各ゴルフ場が用意するハウスキャディを一時的に雇用して競技に臨むプロも存在します。

プロキャディの報酬は、契約内容によって大きく異なりますが、通常、基本給に加え、選手の獲得賞金に応じた歩合制（例えば、獲得賞金の数パーセントから10パーセント程度）が一般的です。選手の求めるサポート内容（例えば、コーチング的な役割を期待するかどうかなど）によっても報酬形態や水準は多様化します。一方、ゴルフ場が提供するハウスキャディの報酬体系は、プレーヤーにとって必ずしも明確に開示されていない場合があります。

語源

「キャディ（caddy, caddie）」という言葉は、その起源を古フランス語、さらに遡るとオック語の一方言であるガスコーニュ語に持つとされています。ガスコーニュ語の「capdèth」または「capdet」は、元来「chief（長）」を意味していましたが、後に「younger boy（年下の息子、特に長子でない息子）」を指すようになりました。この言葉がフランス語で「cadet」となり、特に15世紀のフランス王国において、ガスコーニュ地方の貴族の末子を中心に編成されたルイ13世直属の連隊「キャデット・ド・ガスコーニュ（Cadets de Gascogne）」を指す固有名詞としても用いられました。

「caddie」または「cadie」という綴りでこの言葉が初めて英語文献に現れたのは1634年と記録されています。18世紀のスコットランド、特にエディンバラにおいては、荷物運びを請け負う者を広く「キャディ」と呼ぶ慣習が確立されていたことが知られています。

日本における歴史

日本で最初に設立されたゴルフ場である神戸ゴルフ倶楽部では、開設当初、近隣の村から少年たちを募集してキャディの任にあたらせました。倶楽部の会員たちはこれらの少年たちにゴルフを教え、彼らを対象とした競技会も開催されるようになりました。多くの少年キャディは成長してゴルフ倶楽部の運営に不可欠なキャディマスターへと昇進しました。日本のゴルフ黎明期を代表するプロゴルファーたち、例えば日本初のプロゴルファーとされる福井覚治をはじめ、越道政吉、宮本留吉、中上数一といった面々は、皆この少年キャディ出身者であり、キャディとしての経験を通じてゴルフの技術とコース運営の知識を磨きました。近年では「日本初の100歳プロゴルファー」として知られた内田棟氏（1916年 - 2019年）も、戦前に少年キャディとしてゴルフと出会い、戦後のキャディマスターを経て55歳でプロテストに合格するという異色の経歴を持っています。

女性がキャディを務めるようになるのは、戦時体制下で男性の人手不足が深刻化した昭和10年代に入ってからです。これにより、少女たちがキャディとして働くようになりました。第二次世界大戦後も人手不足が続いたため、キャディの担い手は女性が中心となっていきました。

著名なキャディ

ゴルフ界には歴史に名を残す著名なキャディが複数存在します。その一例として、トム・ワトソンやグレッグ・ノーマンといった伝説的なプレーヤーのキャディを務めたブルース・エドワーズ氏などが挙げられます。

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