トム・ワトソン
トム・ワトソン（Tom Watson）は、1949年9月4日生まれ、アメリカ合衆国ミズーリ州カンザスシティ出身のプロゴルファーです。本名はトーマス・スタージス・ワトソン（Thomas Sturges Watson）です。
ワトソンは、保険外交員の父レイモンドと母サラの間に生まれた3兄弟の次男です。父はハンディキャップ0のスクラッチプレーヤーであり、6歳からカンザスシティカントリークラブでゴルフを始めました。中学生時代には、ゴルフの師であるスタン・サースクと出会います。ペンブローク・カントリーディ校を経てスタンフォード大学に進学し、心理学で学士号を取得して卒業しました。大学在学中の1970年には全米アマチュア選手権で5位に入賞し、翌年の1971年5月に卒業。同年11月にプロ転向を決意し、12月のクオリファイテストに5位で合格しました。翌1972年にPGAツアーに参戦を開始し、プロ2年目の1973年にはキャディのブルース・エドワーズと出会い、急速に頭角を現し始めました。1974年にはPGAツアー初勝利を挙げ、賞金ランキング10位に躍進、1975年にはバイロン・ネルソンゴルフクラシックで優勝を果たしました。1976年からは、バイロン・ネルソンの指導も仰ぐようになります。
全盛期には、大きなフォロースルーから繰り出される高弾道のショットと、ツアー屈指のショートゲームの巧みさを武器に数々の勝利を重ねました。1977年から1980年まで4年連続、そして1984年にもPGAツアーの賞金王に輝き、通算5度獲得しています。PGAツアーでは39勝、世界では通算68勝を挙げています。
ワトソンは「リンクスコースは私の人生そのもの」と語っており、特に英国のリンクスコース、特に深いラフのあるコースでは無類の強さを誇ります。しかし、ゴルフの聖地であるセント・アンドルーズでは未勝利となっています。全英オープンでは5勝、シニア全英オープンでは3勝を挙げており、そのうち7勝はスコットランドで開催されています。
ワトソンが初めて全英オープンに挑戦したのは1975年のカーヌスティでした。この大会では、キャディに地元のアルフィー・ファイルズを起用し、初出場で初優勝という快挙を成し遂げました。ファイルズは以前にゲーリー・プレーヤーのキャディを務めていた経験があり、ワトソンの攻撃的なプレースタイルに惹かれて起用されました。最終日、ワトソンは18番ホールで15フィートのバーディパットを決め、ジャック・ニュートンとのプレーオフに持ち込みました。プレーオフでは1打差でニュートンを破り、優勝を飾りました。この時のワトソンの活躍は、メジャー4大会全てでトップ10入りするという快挙にもつながりました。
1977年のマスターズでは、最終日にジャック・ニクラスとの激闘を制し、メジャー2勝目を挙げました。同年7月には全英オープンでもニクラスとの歴史的な真昼の決闘を1打差で制し、年間メジャー2冠を達成しています。
1980年の全英オープンでは、青木功が3ラウンド目に全英オープン最小スコアタイの63を記録したものの、ワトソンも自己ベストスコアの64を記録し、2位に4打差をつけ単独首位に立ちました。最終日には安定したプレーで逃げ切り、3度目の全英オープン優勝を果たしています。また、1981年のマスターズでは、ニクラスやジョニー・ミラーを抑え、2度目の優勝を果たしました。
1982年の全米オープンはペブルビーチで開催され、ワトソンはキャディにブルース・エドワーズを伴い参戦。最終日には、17番ホールで難しいチップインバーディを決め、18番ホールでもバーディを奪って、ニクラスに2打差をつけ全米オープン初優勝を果たしました。同年の全英オープンでも優勝し、メジャー大会2連勝を達成しました。1983年の全英オープンでは、大会2連覇を果たし、メジャー通算8勝を挙げて、名実ともに新帝王ワトソンと呼ばれるようになりました。
しかし、1983年の全英オープンを最後に、メジャーでの優勝から遠ざかります。1984年の全英オープンでは、セント・アンドルーズ初制覇とピーター・トムソン以来の3連覇に挑みましたが、セベ・バレステロスに敗れ2位に終わりました。その後、イップスと呼ばれる症状に苦しみ、ショートパットの不調に悩まされるようになります。1987年にナビスコ選手権で3シーズンぶりに優勝した後、1996年のメモリアル・トーナメントまで優勝から遠ざかります。1998年のマスターカード・コロニアルでの優勝が、PGAツアーでの最後の勝利となっています。PGAツアーでの通算39勝は、歴代10位タイの記録です。
全米プロゴルフ選手権では、アーノルド・パーマーと同様に優勝経験がなく、「キャリア・グランドスラム」達成はなりませんでした。1978年の全米プロゴルフ選手権では、最終日に失速し、ジョン・マハフィーとのプレーオフで敗れています。しかし、シニアツアーでは全米プロシニアゴルフ選手権で2勝を挙げています。
ワトソンは日本とも深い繋がりがあり、日本では通算4勝を挙げており、4つのゴルフコースを設計しています。宮崎のフェニックスカントリークラブには、彼の名を冠した「トム・ワトソンゴルフコース」があります。1988年には世界ゴルフ殿堂入りを果たし、1993年にはライダーカップのアメリカチームキャプテンを務め、勝利に導きました。現在は米国シニアツアーで活躍しており、数々のタイトルを獲得しています。
長年キャディを務めたブルース・エドワーズを2004年にALSで失い、ワトソンの価値観は「勝つことが全て」から「一日一日を全力で生きること」へと変化しました。チャリティー活動にも熱心に取り組み、2003年には「ペイン・スチュワート賞」を受賞しました。2009年の全英オープンでは59歳で優勝争いを演じ、多くの感動を呼びました。最終ホールでパーセーブできず、プレーオフで敗れましたが、その姿は多くのファンに勇気を与えました。2010年にはオーガスタで善戦しましたが、セント・アンドルーズでは予選通過ならず、セント・アンドルーズを鬼門としていました。
2011年の全英オープンではホールインワンを達成し、2015年の全英オープンを「最後のジ・オープン参戦」としています。
ワトソンのゴルフキャリアにおいて、全英オープン開催コースであるターンベリー・エイルサコースは特別な存在です。1977年の全英オープンでは、ジャック・ニクラスとの真昼の決闘を制し、優勝を果たしました。最終日の激闘は、ゴルフ史に残る名勝負として語り継がれています。2009年にも同コースで開催された全英オープンで優勝争いを演じ、世界中のゴルフファンに感動を与えました。
マスターズ：2勝（1977年、1981年）
全米オープン：1勝（1982年）
全英オープン：5勝（1975年、1977年、1980年、1982年、1983年）
メジャー通算8勝は歴代6位の記録です。全米プロゴルフ選手権のみ優勝経験がなく、キャリア・グランドスラムを達成することはできませんでした。
ジョン・フェインスタイン（2006）『天国のキャディ 世界で一番美しいゴルフの物語』、日本経済新聞社。
ジャック・ニクラウス（2006）『帝王ジャック・ニクラウス 私の履歴書』、日本経済新聞社。
本項記載の試合経過等は、該当日の読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、日本経済新聞、報知新聞、スポーツニッポン、日刊スポーツ、サンケイスポーツ、デイリースポーツ各紙の記事、Wikipedia（英語版）及び映像資料（YouTube）に基づき要約した。
コカ・コーラ（1980年代前半にテレビCMに出演）
大和証券（2010年11月より2012年12月までテレビCMに出演）
日本経済新聞・私の履歴書（2014年5月1日より1か月連載）
公式ウェブサイト
Tom Watson - PGA Tour.com
ヨーロピアンツアー公式サイト'>Tom Watson - ヨーロピアンツアー公式サイト
日本ゴルフツアー機構のプロフィール'>Tom Watson - 日本ゴルフツアー機構のプロフィール
Tom Watson - ワールドゴルフランキング
プロフィール
ワトソンは、保険外交員の父レイモンドと母サラの間に生まれた3兄弟の次男です。父はハンディキャップ0のスクラッチプレーヤーであり、6歳からカンザスシティカントリークラブでゴルフを始めました。中学生時代には、ゴルフの師であるスタン・サースクと出会います。ペンブローク・カントリーディ校を経てスタンフォード大学に進学し、心理学で学士号を取得して卒業しました。大学在学中の1970年には全米アマチュア選手権で5位に入賞し、翌年の1971年5月に卒業。同年11月にプロ転向を決意し、12月のクオリファイテストに5位で合格しました。翌1972年にPGAツアーに参戦を開始し、プロ2年目の1973年にはキャディのブルース・エドワーズと出会い、急速に頭角を現し始めました。1974年にはPGAツアー初勝利を挙げ、賞金ランキング10位に躍進、1975年にはバイロン・ネルソンゴルフクラシックで優勝を果たしました。1976年からは、バイロン・ネルソンの指導も仰ぐようになります。
全盛期には、大きなフォロースルーから繰り出される高弾道のショットと、ツアー屈指のショートゲームの巧みさを武器に数々の勝利を重ねました。1977年から1980年まで4年連続、そして1984年にもPGAツアーの賞金王に輝き、通算5度獲得しています。PGAツアーでは39勝、世界では通算68勝を挙げています。
ワトソンは「リンクスコースは私の人生そのもの」と語っており、特に英国のリンクスコース、特に深いラフのあるコースでは無類の強さを誇ります。しかし、ゴルフの聖地であるセント・アンドルーズでは未勝利となっています。全英オープンでは5勝、シニア全英オープンでは3勝を挙げており、そのうち7勝はスコットランドで開催されています。
戦績提要
ワトソンが初めて全英オープンに挑戦したのは1975年のカーヌスティでした。この大会では、キャディに地元のアルフィー・ファイルズを起用し、初出場で初優勝という快挙を成し遂げました。ファイルズは以前にゲーリー・プレーヤーのキャディを務めていた経験があり、ワトソンの攻撃的なプレースタイルに惹かれて起用されました。最終日、ワトソンは18番ホールで15フィートのバーディパットを決め、ジャック・ニュートンとのプレーオフに持ち込みました。プレーオフでは1打差でニュートンを破り、優勝を飾りました。この時のワトソンの活躍は、メジャー4大会全てでトップ10入りするという快挙にもつながりました。
1977年のマスターズでは、最終日にジャック・ニクラスとの激闘を制し、メジャー2勝目を挙げました。同年7月には全英オープンでもニクラスとの歴史的な真昼の決闘を1打差で制し、年間メジャー2冠を達成しています。
1980年の全英オープンでは、青木功が3ラウンド目に全英オープン最小スコアタイの63を記録したものの、ワトソンも自己ベストスコアの64を記録し、2位に4打差をつけ単独首位に立ちました。最終日には安定したプレーで逃げ切り、3度目の全英オープン優勝を果たしています。また、1981年のマスターズでは、ニクラスやジョニー・ミラーを抑え、2度目の優勝を果たしました。
1982年の全米オープンはペブルビーチで開催され、ワトソンはキャディにブルース・エドワーズを伴い参戦。最終日には、17番ホールで難しいチップインバーディを決め、18番ホールでもバーディを奪って、ニクラスに2打差をつけ全米オープン初優勝を果たしました。同年の全英オープンでも優勝し、メジャー大会2連勝を達成しました。1983年の全英オープンでは、大会2連覇を果たし、メジャー通算8勝を挙げて、名実ともに新帝王ワトソンと呼ばれるようになりました。
しかし、1983年の全英オープンを最後に、メジャーでの優勝から遠ざかります。1984年の全英オープンでは、セント・アンドルーズ初制覇とピーター・トムソン以来の3連覇に挑みましたが、セベ・バレステロスに敗れ2位に終わりました。その後、イップスと呼ばれる症状に苦しみ、ショートパットの不調に悩まされるようになります。1987年にナビスコ選手権で3シーズンぶりに優勝した後、1996年のメモリアル・トーナメントまで優勝から遠ざかります。1998年のマスターカード・コロニアルでの優勝が、PGAツアーでの最後の勝利となっています。PGAツアーでの通算39勝は、歴代10位タイの記録です。
全米プロゴルフ選手権では、アーノルド・パーマーと同様に優勝経験がなく、「キャリア・グランドスラム」達成はなりませんでした。1978年の全米プロゴルフ選手権では、最終日に失速し、ジョン・マハフィーとのプレーオフで敗れています。しかし、シニアツアーでは全米プロシニアゴルフ選手権で2勝を挙げています。
ワトソンは日本とも深い繋がりがあり、日本では通算4勝を挙げており、4つのゴルフコースを設計しています。宮崎のフェニックスカントリークラブには、彼の名を冠した「トム・ワトソンゴルフコース」があります。1988年には世界ゴルフ殿堂入りを果たし、1993年にはライダーカップのアメリカチームキャプテンを務め、勝利に導きました。現在は米国シニアツアーで活躍しており、数々のタイトルを獲得しています。
長年キャディを務めたブルース・エドワーズを2004年にALSで失い、ワトソンの価値観は「勝つことが全て」から「一日一日を全力で生きること」へと変化しました。チャリティー活動にも熱心に取り組み、2003年には「ペイン・スチュワート賞」を受賞しました。2009年の全英オープンでは59歳で優勝争いを演じ、多くの感動を呼びました。最終ホールでパーセーブできず、プレーオフで敗れましたが、その姿は多くのファンに勇気を与えました。2010年にはオーガスタで善戦しましたが、セント・アンドルーズでは予選通過ならず、セント・アンドルーズを鬼門としていました。
2011年の全英オープンではホールインワンを達成し、2015年の全英オープンを「最後のジ・オープン参戦」としています。
トムとターンベリー・エイルサコース
ワトソンのゴルフキャリアにおいて、全英オープン開催コースであるターンベリー・エイルサコースは特別な存在です。1977年の全英オープンでは、ジャック・ニクラスとの真昼の決闘を制し、優勝を果たしました。最終日の激闘は、ゴルフ史に残る名勝負として語り継がれています。2009年にも同コースで開催された全英オープンで優勝争いを演じ、世界中のゴルフファンに感動を与えました。
メジャー大会優勝
マスターズ：2勝（1977年、1981年）
全米オープン：1勝（1982年）
全英オープン：5勝（1975年、1977年、1980年、1982年、1983年）
メジャー通算8勝は歴代6位の記録です。全米プロゴルフ選手権のみ優勝経験がなく、キャリア・グランドスラムを達成することはできませんでした。
脚注
注釈
出典
参考文献
ジョン・フェインスタイン（2006）『天国のキャディ 世界で一番美しいゴルフの物語』、日本経済新聞社。
ジャック・ニクラウス（2006）『帝王ジャック・ニクラウス 私の履歴書』、日本経済新聞社。
本項記載の試合経過等は、該当日の読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、日本経済新聞、報知新聞、スポーツニッポン、日刊スポーツ、サンケイスポーツ、デイリースポーツ各紙の記事、Wikipedia（英語版）及び映像資料（YouTube）に基づき要約した。
関連項目
コカ・コーラ（1980年代前半にテレビCMに出演）
大和証券（2010年11月より2012年12月までテレビCMに出演）
日本経済新聞・私の履歴書（2014年5月1日より1か月連載）
外部リンク
公式ウェブサイト
Tom Watson - PGA Tour.com
ヨーロピアンツアー公式サイト'>Tom Watson - ヨーロピアンツアー公式サイト
日本ゴルフツアー機構のプロフィール'>Tom Watson - 日本ゴルフツアー機構のプロフィール
Tom Watson - ワールドゴルフランキング
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