キャバレー (接待飲食店)

日本におけるキャバレーの歴史と現状

日本のキャバレーは、ホステスと呼ばれる女性従業員が客をもてなし、その場でダンスを楽しむ飲食店の一形態として発展しました。キャバレーの起源は、明治時代のカフェーにさかのぼり、1945年に進駐軍向けに設立された「オアシス・オヴ・ザ・ギンザ」がその初期の形として知られています。この店舗は、東京の松屋銀座店の地下に開業し、その後様々なキャバレーが誕生する土台となりました。

日本のキャバレーが特徴的なのは、大規模な店舗でありながら、本格的なダンスホールを併設している点です。「グランドキャバレー」と呼ばれる、100人以上のホステスを擁し、生バンドの演奏を楽しむ場所は、特に繁栄しました。著名な店舗には、「キャバレー香港」（新潟）、500人のホステスが在籍した「ミカド」（東京・赤坂）、1000坪を誇る「クラブハイツ」（東京・新宿）などがあり、華やかな雰囲気で多くの人々に支持されました。

1960年代には、福富太郎が東京都港区に「踊り子キャバレー 新橋ハリウッド」を開店し、その後44店舗を展開するなど、大成功を収めました。しかし、1970年代になると、経済的な変動や新たな娯楽の登場が影響し、キャバレーは次第に衰退していきました。特に、1971年のドルショック以降、顧客の減少やオイルショックの影響が大きく、キャバレーの経営は厳しさを増していきました。

1976年頃からはディスコの人気が高まり、キャバレーは不利な状況に立たされました。1980年代にはさらにキャバクラなどの新しい形態に押され、キャバレーの店舗数は減少しました。キャバレーから派生したピンクサロンも存在しますが、それらは風俗的な要素が強く、通常のキャバレーとは異なります。

2010年代に入ると、日本のキャバレーが減少するパターンが顕著になり、地域で最後のキャバレーの閉店が報じられるようになりました。例えば、2013年には北海道札幌市の「札幌クラブハイツ」が閉店し、日本全国に残った大型のキャバレーは東京都と大阪府に限られることとなりました。2020年代に入る頃には、特に有名な店舗が次々と閉店し、最後のキャバレーとして名を残した店も姿を消しています。

2023年現在、営業を続けているキャバレーは大阪や名古屋に限られ、その数も非常に少なくなっています。例えば、大阪の「ミス大阪」や「ミスパール」、名古屋の「キャバレー花園」などが残っているものの、全盛期の華やかさは失われつつあります。また、かつての大規模なグランドキャバレーは消え、少数の店舗だけが細々と営業を続けています。

キャバレーは法律的には「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」に基づいて分類され、接待飲食等営業1号営業として位置づけられています。この法律により、ダンスの提供や接待が行われることが定められています。

現在、キャバレーの名称は一部の店舗で使われていますが、その内容は多岐にわたり、本来の意味とは異なる場合もあります。例えば、「ピンクキャバレー」と呼ばれるような営業形態は、性風俗的な要素が強く、逆により伝統的なキャバレーとは一線を画しています。

フランス由来の「キャバレー」という言葉は、元々は歌や踊り、コメディを楽しむ場所として発展しました。しかし、日本におけるキャバレーは、特有の文化として独自に進化し、戦後の経済状況やライフスタイルの変化に影響されながら、その存在感を変えてきたと言えるでしょう。今後、キャバレーがどのように変遷していくのか、注意深く見守っていく必要があります。

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