キャベツ畑人形

キャベツ畑人形とは

キャベツ畑人形（英語: Cabbage Patch Kids）は、1982年にコレコ社によって発売された、プラスチック製の頭部を持つ布製人形です。この人形は、一体ごとに異なる表情、髪の色、名前、そして出生証明書が用意されており、世界中で人気を博しました。元々は、ザビエル・ロバーツが制作したソフト・スカルプチュア人形が原型で、コレクターズ・アイテムとして販売されていました。

歴史

誕生と発展

キャベツ畑人形のルーツは、21歳の美術大学生ロバーツが、工芸作家マーサ・ネルソン・トーマスの赤ちゃん人形に着想を得たことに始まります。トーマスは、出生証明書と養子縁組書類が付属した「リトル・ピープル」という手縫いの人形を制作していました。ロバーツは、この人形を元に著作権を得られるよう修正し、「リトル・ピープル」として販売を開始しました。初期には美術工芸品の展示会で販売され、その後、ジョージア州クリーブランドの古い診療所を改装したベビーランド総合病院で販売されるようになりました。

1981年、ロバーツはデザイナーでライセンスエージェントのロジャー・L・シュライファーからライセンスの話を持ちかけられます。フィッシャープライスが「リトル・ピープル」の名前を所有していたため、人形は「キャベツ畑人形」と改名されました。シュライファーは、大衆向けの子供ブランドを築くことを目標に、物語を創作し、キャベツ畑人形の魅力を広めました。

1982年、コレコ社のデザインチームが、ロバーツのオリジナルとは異なる、より可愛らしいデザインのプラスチック製ヘッドのキャベツ畑人形を開発しました。この人形は、手頃な価格で販売され、爆発的な人気を博し、玩具業界の記録を塗り替えました。1984年には、関連商品を含めた売上が20億ドルに達しました。

コレコ社時代

コレコ社は、1983年から1986年にかけて、クリスマス商戦で大きな成功を収めました。あまりの人気に、人形を求めて「キャベツ畑暴動」とまで呼ばれる騒動が発生したほどです。コレコ社は、様々なバリエーションの人形を発売し、その人気を維持しました。

国際的な展開

コレコ社は、北米市場向けに人形を生産する傍ら、パナマ、ヨーロッパ、オーストラリア、日本などの人形メーカーに、コレコ社の金型を使用した人形製造の技術支援を行いました。

ハズブロ社時代

1988年、コレコ社が破産した後、ハズブロ社がキャベツ畑人形の権利を引き継ぎました。ハズブロ社は、様々なギミックを搭載した人形を発売し、「バースデー・キッズ」、「スプラッシュン・タン・キッズ」、「プリティ・クリンプ・アンド・カール」などの人気シリーズを生み出しました。また、10周年記念として、シュライファーのオリジナルパッケージを復刻販売しました。

マテル社時代

1994年、マテル社が人形のライセンス権を取得し、1995年から販売を開始しました。マテル社のキャベツ畑人形は、布製ボディだけでなく、ポリ塩化ビニル製のものも登場しました。水遊びをしたり、食べ物を食べたりするギミックを備えた人形も発売され、コレクター人気を集めました。しかし、1997年には「スナックタイム・キッズ」人形が子供の髪や指を挟む事故が多発したため、自主回収される事態となりました。

トイザらス・キッズ

2001年、元コレコ社のマーケティング社員アル・カーンがライセンス権を取得し、トイザらス向けに20インチと18インチのキャベツ畑人形を製造しました。しかし、人形が高価で、幼児には扱いにくかったため、売り上げは伸び悩みました。

プレイアロング時代

次に、プレイアロング社がライセンス権を獲得し、25周年記念コレクションを発売しました。また、アイスクリームメーカーのカーベルと提携し、共同ブランドキャンペーンを展開しました。

ジャックス・パシフィック時代

2011年、ジャックス・パシフィック社がプレイアロング社を買収し、ライセンス権を取得しました。ジャックス・パシフィック社は、14インチのファッション性のあるキャベツ畑人形や関連商品を発売しました。

ウィックド・クール・トイ時代

現在、キャベツ畑人形のライセンスを持つのは、アリゲニー社傘下のウィックド・クール・トイ社です。「リトル・スプラウト」シリーズや「アダプティマルズ」など、新しい商品を発表しています。

キャベツ畑人形ブランド

キャベツ畑人形のライセンス契約は、ロジャー・L・シュライファーが率いるSN&C社によって交渉されました。SN&C社は、コレコを含む150以上のメーカーが製造するキャベツ畑人形ブランド製品の設計と品質管理を行い、子供用おむつ、シリアル、子供服、寝具、文房具など、多岐にわたる商品を展開しました。シュライファーの在任期間中、総売上高は45億ドルを超え、その後の30年間の総売上高の10倍以上となりました。

磁器製のキャベツ畑人形

アプローズギフトやダンバリー・ミント社から、限定版の磁器製キャベツ畑人形が販売されました。

おしゃべりキャベツ畑人形

コレコ社が最後に発表したキャベツ畑人形のシリーズの一つに、音声チップ、タッチセンサー、マイク、短距離AMトランシーバーを搭載した「おしゃべりキャベツ畑人形」があります。この人形は、他の人形と会話したり、周囲の音に反応したりする機能を持っていました。

ベビーランド総合病院

ベビーランド総合病院は、キャベツ畑人形の「発祥の地」であり、ジョージア州クリーブランドにあります。ここは、人形の産院、保育所、養子縁組センターとして機能しており、従業員は医師や看護婦に扮し、人形を本物そっくりに世話をします。2010年には新しい施設に移転し、人気のおもちゃテーマパークとして知られています。

翻案

1984年には、ABCでアニメスペシャル『キャベツ畑人形のはじめてのクリスマス』が放送されました。また、1995年から1999年にかけて、Fox Kidsでストップモーションアニメシリーズが放送されました。

その他

1984年には、コナミからMSX用ゲームソフト『キャベッジパッチキッズ』が発売されました。

論争

訴訟

ザビエル・ロバーツは、マーサ・ネルソン・トーマスの人形のデザインを基に「リトル・ピープル」を制作したとして、著作権侵害で訴えられました。また、トップス社が発売したパロディトレーディングカード「ガーベッジペイルキッズ」に対しても訴訟を起こしました。

SN&C社との間では、「ファースキンズベアー」をめぐる契約違反で訴訟を起こされ、コレコ社とOAA社はSN&C社に対して和解金を支払いました。

製品の安全性

マテル社の「スナックタイム・キッズ」人形は、子供の指や髪を挟む事故が多発したため、自主回収されました。

年表

1977年: ザビエル・ロバーツがマーサ・ネルソン・トーマスの「ドール・ベイビーズ」のコンセプトを取り入れる。
1978年: オリジナル・アパラチアン・アートワークス（OAA）社によって最初の「リトル・ピープル・オリジナル」が販売される。
1981年: 人形人気がメディアで報道される。
1982年: OAA社が「リトル・ピープル」の複製品を「リトル・ピープル・パル」として安価に製造する。
1982年: ロジャー・シュライファーがOAA社に商品名を「キャベツ畑人形」に変更することを提案。
1982年5月1日: OAA社とSN&C社が全世界での独占契約を締結。
1982年8月9日: SN&C社とコレコ社がライセンス契約を締結。
1982年: コレコ社がキャベツ畑人形の最初の試作品を製作。
1983年: キャベツ畑人形がニューヨーク国際玩具見本市で大々的に紹介され、キャベツ畑暴動が発生。
1983年12月: 『ニューズウィーク』誌の表紙を飾る。
1984年: 玩具から子供服まで、キャベツ畑人形のブランド商品の売上が20億ドルを記録。
1985年: 低糖質の朝食用シリアル、キャラクター付き子供用おむつが発売。
1985年: ABCアニメスペシャル『キャベツ畑人形のはじめてのクリスマス』が放送。
1986年: おしゃべりキャベツ畑人形が発売。
1988年: コレコ社が破産申請、ハズブロ社がライセンス権を取得。
1992年: 1996年アトランタオリンピックの米国チームの公式マスコットに任命。
1996年: 「スナックタイム・キッズ」が発売。
1999年: 米国の1980年代を代表する記念切手に選ばれる。
2008年: アメリカ合衆国大統領選挙で、民主党と共和党がそれぞれキャベツ畑人形を広告塔として使用。
2023年: ストロング国立遊びの博物館で殿堂入り。

パロディ

1985年、トップス社からキャベツ畑人形のパロディ作品として『ガーベッジペイルキッズ』というトレーディングカードゲームが発売されました。このカードゲームは、グロテスクで下品なデザインが特徴で、映画化やテレビ番組化もされました。

出典

参考文献
Hoffman, William (1984). Fantasy: The Incredible Cabbage Patch Phenomenon. Dallas: Taylor Publishing.
『MSXマガジン』1985年2月号、アスキー、1985年2月1日。

外部リンク
公式ウェブサイト
Cabbage Patch Kid Restoration Official Site
Urban Legends Reference Page on Cabbage Patch Kids legends
Urban Legends Reference Page on Cabbage Patch death certificates
* The Secret History of Cabbage Patch Kids

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