キャリー・ネイション

キャリー・A・ネイションとは

キャリー・A・ネイション（Carrie A. Nation、1846年11月25日 - 1911年6月9日）は、禁酒法時代のアメリカで活躍した禁酒運動家です。彼女は、アルコール飲料を販売する施設に侵入し、まさかりで破壊するという過激な行動で知られています。その特異な活動は、多くの書物や新聞、雑誌に取り上げられ、1966年にはオペラにもなりました。彼女は自らを「キリストの足元を走り、彼が好まないものに対して吠え掛かるブルドッグ」と称し、バーの破壊を神聖な儀式だと主張しました。

若年期と結婚

キャリーは、キャリー・ムーアとしてケンタッキー州で生まれました。幼少期は病弱で、家族は経済的な苦境を経験し、何度も引越しを繰り返しました。家族の中には精神的な問題を抱える者が多く、母親は時折ヴィクトリア女王であると妄想することがありました。1867年、キャリーはチャールズ・グロイド博士と結婚しましたが、彼は重度のアルコール中毒者であり、娘が生まれる直前に離婚しました。この最初の結婚の失敗が、彼女が禁酒運動に情熱を傾けるきっかけとなりました。

二度目の結婚と活動開始

教師の資格を取得したものの、十分な収入を得られなかったキャリーは、弁護士、牧師、新聞編集者であったデイヴィッド・A・ネイション博士と再婚しました。夫婦で綿農園を経営しましたが、農業の知識不足から失敗に終わりました。その後、カンザス州に戻ったキャリーは、ホテル経営で成功を収め、キリスト教禁酒婦人連盟の地方支部を設立しました。当初は抗議活動を行っていましたが、次第にエスカレートし、酒場の常連客に賛美歌を演奏したり、バーテンダーに嫌味を言うようになりました。

神の啓示と破壊活動

キャリーは、1900年6月5日に神からの啓示を受けたと感じ、石塊を「粉砕用具」と呼び、酒場を破壊する行動に出ました。彼女は「飲んだくれの末路から皆さんを救うために参りました」と宣言し、酒場の在庫を破壊しました。その後も同様の破壊活動を続け、竜巻がカンザス州東部を襲った際には、これを神の是認の印だと考えました。

まさかりによる破壊行為

キャリーは、カンザス州で破壊活動を続け、その名は広く知られるようになりました。夫の冗談からヒントを得て、まさかりを使うようになり、それを「ハチェテーション（hatchetation）」と呼びました。彼女は、賛美歌を歌う女性たちとともに、バーに押し入り、まさかりで備品や在庫を破壊しました。1900年から1910年の間に、約30回逮捕されています。巡業講演や土産用まさかりの売り上げで罰金を支払っていました。1901年にはミズーリ州カンザスシティでも酒場を破壊し、逮捕・罰金刑を受け、同市からの追放を命じられました。

晩年と死

キャリーの反アルコール活動は、「All Nations Welcome But Carrie」というスローガンと共に有名になりました。彼女は機関紙「The Smasher's Mail」や新聞「The Hatchet」を刊行し、晩年にはヴォードヴィルにも出演しました。キャリーはマッキンリー大統領の暗殺を賞賛し、飲酒者が当然の報いを受けたと述べました。晩年はアーカンソー州ユリーカ・スプリングズに移住し、「Hatchet Hall」という家を建てました。1911年、キャリーは講演中に倒れ、カンザス州の病院で亡くなりました。彼女はミズーリ州ベルトンに埋葬され、後にキリスト教禁酒婦人連盟によって石碑が建てられました。彼女の家は、1976年にアメリカ合衆国国定歴史建造物に指定されました。

結論

キャリー・A・ネイションは、その過激な行動で賛否両論を巻き起こしましたが、禁酒運動の象徴として、歴史に名を刻んでいます。彼女の生涯は、禁酒運動の歴史を語る上で欠かせない重要な出来事であり、現代においてもその影響は語り継がれています。

参考文献

The Use and Need of the Life of Carrie A. Nation (1905) by Carrie A. Nation
Carry Nation (1929) by Herbert Asbury
Cyclone Carry: The Story of Carry Nation (1962) by Carleton Beals
Vessel of Wrath: The Life and Times of Carry Nation (1966) by Robert Lewis Taylor
Carry A. Nation: Retelling The Life (2001) by Fran Grace

外部リンク

Carry A. Nation: The Famous and Original Bar Room Smasher - Kansas State Historical Society
Photos of Carry Nation - Fort Bend Museum, hosted by the Portal to Texas History
キャリー・ネイションの作品 （インターフェイスは英語）- プロジェクト・グーテンベルク
Carry Nation's hammer, Kansas Museum of History
Carry Nation's purse, Kansas Museum of History
* キャリー・ネイション - Find a Grave

もう一度検索