キャンディ (リー・モーガンのアルバム)

リー・モーガン『キャンディ』

『キャンディ』（Candy）は、アメリカ合衆国の卓越したジャズ・トランペット奏者、リー・モーガンが1958年に発表したスタジオ録音盤です。ブルーノート・レーベルからリリースされた本作は、モーガンのキャリアの中でも特徴的な位置を占めています。

作品の特徴

このアルバムの最大の特筆すべき点は、リー・モーガンのリーダー作としては唯一、トランペット一本のみをフロント楽器とする「ワン・ホーン・カルテット」という編成で録音されたことです。通常、ジャズのコンボ編成ではテナー・サックスや他の管楽器が加わることが多い中、本作ではモーガンのトランペットが全面にフィーチャーされています。

演奏を支えるのは、当時のジャズ界で活躍していた名手たちです。ピアノにはソニー・クラーク、ベースにはダグ・ワトキンス、そしてドラムスにはアート・テイラーという鉄壁のリズム・セクションが参加しており、モーガンのソロを力強く、かつ繊細に彩っています。

録音は、2回のセッションに分けて行われました。特に「フー・ドゥ・ユー・ラヴ・アイ・ホープ」という楽曲は、両方のセッションで録音されましたが、最終的にアルバムに収録されたのは2回目のテイクでした。また、最初のセッションからは、後年リマスターされたCD盤にボーナス・トラックとして追加された「オール・アット・ワンス・ユー・ラヴ・ハー」も生まれています。

評価

音楽評論家からの評価も高く、たとえば音楽データベースサイト「オールミュージック」のStacia Proefrockは、本作に5点満点中4点を与えています。彼女は、この作品がリー・モーガンが自身の個性的な音楽スタイルを確立し始めた、キャリアの初期における重要な一枚であると指摘しています。また、フロント楽器がトランペット一本である編成について触れ、「他の管楽器に頼ることなく、リー・モーガン自身の演奏がダイレクトに伝わる中で、彼は見事なパフォーマンスを披露している」と称賛しています。

リリース形態

本作はモノラル録音で発表されましたが、後にステレオ・ヴァージョンも存在が確認されています。ステレオ盤は、1969年にサンセット・レコードから『All the Way』という別タイトルで初めてリリースされました。時代を経て、様々なフォーマットで再発され、現在も多くのジャズファンに愛聴されています。

収録曲

オリジナル盤には以下の6曲が収録されています。リマスターされたCD盤などには、ボーナス・トラックが追加されている場合があります。

1. キャンディ - "Candy" (Mack David, Alex Kramer, Joan Whitney Kramer) - 7:04
2. シンス・アイ・フェル・フォー・ユー - "Since I Fell for You" (Buddy Johnson) - 5:37
3. C.T.A. - "C.T.A." (Jimmy Heath) - 5:07
4. オール・ザ・ウェイ - "All the Way" (Sammy Cahn, Jimmy Van Heusen) - 7:23
5. フー・ドゥ・ユー・ラヴ・アイ・ホープ - "Who Do You Love, I Hope" (Irving Berlin) - 4:59
6. パーソナリティ - "Personality" (Johnny Burke, J. Van Heusen) - 6:11

リマスターCDボーナス・トラック

7. オール・アット・ワンス・ユー・ラヴ・ハー - "All at Once You Love Her" (Oscar Hammerstein II, Richard Rodgers) - 5:26

参加ミュージシャン

リー・モーガン - トランペット
ソニー・クラーク - ピアノ
ダグ・ワトキンス - ベース
アート・テイラー - ドラムス

リー・モーガンの瑞々しい感性と円熟味を増しつつあった演奏が堪能できる本作は、彼の数ある名盤の中でも特に編成のユニークさから際立っており、ジャズの歴史においても重要な位置を占める作品と言えるでしょう。

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