キュリー夫人 (映画)

キュリー夫人：波乱万丈の生涯を描いた名作伝記映画

1943年、アメリカ合衆国で製作・公開された映画『キュリー夫人』（原題：Madame Curie）は、科学史に輝く偉大な女性科学者、マリ・キュリーの生涯を描いた感動的な伝記映画です。エーヴ・キュリーによるマリ・キュリーの伝記を原作としており、数々の名匠たちが結集して制作されました。

監督を務めたのは、ハリウッド黄金期を代表する巨匠マーヴィン・ルロイ。主演は、当時既に人気を博していたグリア・ガースンとウォルター・ピジョンが務め、本作は『塵に咲く花』（1941年）、『ミニヴァー夫人』（1942年）に続く、二人の3度目の共演作品となりました。ガースンは、キュリー夫人の知性と情熱、そして母としての強さを繊細かつ力強く演じきり、高い評価を得ています。一方、ピジョンは、夫ピエール・キュリーを優しく、そして情熱的な研究者として見事に体現しました。

キャスト陣も豪華です。マリ・キュリー役を演じたグリア・ガースンは、彼女の知性と情熱、そして母としての強さを繊細かつ力強く表現しました。ピエール・キュリー役のウォルター・ピジョンは、夫として、そして研究者としてのピエールの複雑な心情を巧みに演じ分けています。さらに、ピエールの父ウジェーヌ役にはヘンリー・トラヴァース、ケルヴィン卿役にはC・オーブリー・スミスなど、ベテラン俳優たちが脇を固めています。

映画は、マリ・キュリーがワルシャワで過ごした少女時代から始まり、パリでの研究生活、ピエールとの出会い、そして放射能の発見、ノーベル賞受賞、そして悲劇的なピエールの死、さらにその後も研究を続け、二度目のノーベル賞受賞に至るまで、波乱に満ちた生涯を丁寧に、そして感動的に描いています。キュリー夫妻の献身的な研究生活、そして困難に立ち向かう姿は、多くの観客の心を揺さぶるでしょう。

本作は、アカデミー賞にもノミネートされ、高い評価を受けました。ノミネートされた部門は、作品賞、主演女優賞（グリア・ガースン）、主演男優賞（ウォルター・ピジョン）、美術・室内装置賞、撮影賞、作曲賞と、主要部門にわたります。これは、映画の完成度の高さを示すものでしょう。

日本では、1946年2月14日、アメリカ映画輸入再開第1号作品として『春の序曲』と共に公開されました。戦後の日本において、本作が人々の心に希望と感動を与えたことは想像に難くありません。

『キュリー夫人』は、単なる伝記映画にとどまらず、科学の進歩、そして女性の社会進出という重要なテーマを深く掘り下げた作品です。マリ・キュリーの生涯を通じて、困難に立ち向かい、自らの信念を貫き通すことの大切さを改めて考えさせられる、感動的な映画となっています。 美しく、そして力強いグリア・ガースンの演技、そして名匠たちの作り上げた見事な映像美も、本作の魅力の一つと言えるでしょう。 歴史に残る偉大な科学者の生涯を描いた、必見の作品です。

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