マーヴィン・ルロイ

マーヴィン・ルロイ (1900-1987) は、ハリウッド黄金期を代表する映画監督、プロデューサーとして知られています。サンフランシスコ生まれの彼は、1906年の大地震を経験し、幼少期からヴォードヴィルなど舞台で活躍、その後ハリウッドを目指しました。

当初は端役俳優や撮影スタッフとして映画界に関わり、脚本家としても才能を発揮。1927年、監督デビューを果たすと、次々とヒット作を生み出していきます。初期には、ハワード・ホークスの『暗黒街の顔役』やウィリアム・A・ウェルマンの『民衆の敵』と並び称されるギャング映画『犯罪王リコ』(1931) で大きな成功を収め、その名を世に知らしめました。この作品はギャング映画ブームの火付け役となり、ルロイの才能を証明する作品となりました。

ルロイの才能は多岐に渡りました。社会問題に切り込んだ作品も手掛け、冤罪をテーマにした『仮面の米国』(1932) は、当時のアメリカ社会の闇を暴き、大きな反響を呼びました。ジョージア州の刑務所制度改革にも影響を与えたと言われています。

その後、MGMに移籍し、プロデューサーとしてマルクス兄弟作品や『オズの魔法使』といった大作に関わりました。プロデューサーとしての力量も高く評価され、週6000ドルという破格の年収を得ていました。監督業にも復帰し、ロバート・テイラーとヴィヴィアン・リーを主演に迎えた『哀愁』(1940) は、悲恋を描いたメロドラマとして日本でも大ヒットし、日本の映画界にも多大な影響を与えました。

戦時中は、グリア・ガースン主演の『塵に咲く花』(1941)、『心の旅路』(1942)、『キュリー夫人』(1943) といった女性を主人公にしたメロドラマや、東京空襲を描いた戦争映画『東京上空三十秒』(1944) など、様々なジャンルの作品を制作しました。これらの作品は、当時のアメリカ社会の心情を反映したものであり、ルロイの時代を読む力、観客の心を掴む演出力の高さを示しています。

さらに、MGM創立25周年記念作品である『若草物語』(1949) では、若手女優を起用し、高い評価を得ました。スペクタクル史劇『クオ・ヴァディス』(1951)、ミュージカル映画『ローズ・マリー』(1954) など、その活躍は多岐に渡ります。ワーナー・ブラザースに戻った後も、ジョン・フォード監督から引き継いだ『ミスタア・ロバーツ』(1955) を成功させました。

ショッキングなテーマで話題となった『悪い種子』(1956) や、パニック映画の先駆けともいえる『四時の悪魔』(1961) など、時代を先取りした作品も制作しました。1965年の『その日その時』を最後に監督業から引退しましたが、1968年にはジョン・ウェイン監督の『グリーンベレー』に監修として参加しています。

ルロイは、40年以上に渡り、年間4本のペースで作品を制作し続けました。作家性という点では他の巨匠に劣ると言われることもありますが、的確な画面処理や時代を捉えたテーマ選び、そしてスターを見抜く優れた才能は、彼の成功の大きな要因と言えるでしょう。クラーク・ゲーブル、ロバート・ミッチャム、ロレッタ・ヤング、ラナ・ターナーといったスター俳優を多く発掘したことでも知られています。1974年には自叙伝『Take One』を出版し、1975年にはアービング・G・タルバーグ賞を受賞。1987年、アルツハイマー病で死去しました。彼の功績は、ハリウッドの歴史に深く刻まれています。

主な監督作品
犯罪王リコ (Little Caesar, 1931)
仮面の米国 (I Am a Fugitive from a Chain Gang, 1932)
風雲児アドヴァース (Anthony Adverse, 1936)
哀愁 (Waterloo Bridge, 1940)
塵に咲く花 (Blossoms in the Dust, 1941)
心の旅路 (Random Harvest, 1942)
キュリー夫人 (Madame Curie, 1943)
東京上空三十秒 (Thirty Seconds Over Tokyo, 1944)
若草物語 (Little Women, 1949)
クオ・ヴァディス (Quo Vadis, 1951)
悪い種子 (The Bad Seed, 1956)
連邦警察 (The FBI Story, 1959)
四時の悪魔 (The Devil at 4 O'Clock, 1961)
ジプシー (Gypsy, 1962)
* その日その時 (Moment to Moment, 1966)

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