キュロスの教育

『キュロスの教育』（古希: Κύρου Παιδεία、羅: Cyropaedia）は、古代ギリシアの軍人であり著述家であったクセノポンの代表作として知られています。この物語は、アケメネス朝ペルシアを建国したキュロス2世を主役とし、全8巻で構成されています。

本書の中心となるのは、ペルシア王キュロス2世の生涯です。ただし、クセノポンの別の代表作である『アナバシス』に登場するキュロスとは別人です。物語はキュロスの生涯を軸に展開しますが、「パンテイアとアブラダタスの物語」のような、他の登場人物に焦点を当てた挿話も多く含まれています。また、歴史的な記述においては、ヘロドトスなどの記録とは異なる点が見られます。例えば、ヘロドトスの『歴史』ではキュロスは戦死したとされていますが、『キュロスの教育』では病没したと記述されています。

本書におけるキュロスは、クセノポンによって理想化された人物として描かれています。物語全体を通して、クセノポン独自の政治哲学的な見解が述べられており、そのために著者の創作や歴史的事実の改変が行われています。この点が、『アナバシス』や『ギリシア史』といったクセノポンの他の歴史書とは大きく異なる点です。

日本語訳としては、以下のものがあります。

『キュロスの教育』、松本仁助訳、京都大学学術出版会〈西洋古典叢書〉、2004年
『ギリシア恋愛小曲集』、中務哲郎訳、岩波文庫、2004年（「パンテイアとアブラダタスの物語」が本書から抜粋収録）

『キュロスの教育』は、単なる歴史書としてではなく、クセノポンの思想や理想が込められた作品として読むことができます。理想のリーダー像や国家のあり方について、深く考えさせられる内容となっています。

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